【Q&A】受精障害について-藤本先生
専門医Q&A 不妊治療
相談者:タムタムさん(37歳)
こんにちは。体外受精にチャレンジしています。
高刺激の採卵で15個採卵でき、全て成熟卵、うち10個が受精障害ありでレスキュー顕微となりました。結果、体外受精で胚盤胞4個、レスキュー顕微で胚盤胞3個が得られました。半分以上が受精障害ということに関して得られた胚の染色体異常は受精障害なしの方に比べて多くなるのか気になっています。よろしくお願いいたします。
藤本先生からの回答
精液検査ではあくまで精子の数や運動率などがわかるだけで、精子の機能が問題あるのかないのかを判断することはできません。それゆえ、精液検査で全く問題ない場合でも体外受精を行った際に一般的な受精方法(体外受精)では受精がうまくいかない場合があります。
よって、初回の体外受精の際には一部を保険として顕微授精しておくことで、万が一の受精障害があった場合でも、受精卵を獲得できる可能性を高めることができるようになります。
レスキュー顕微授精は本来の顕微授精をする時間から遅れて(施設にもよりますが約1日遅い場合が多い)受精をさせることになるため、結果受精して、基準を満たす胚を確保できた場合でも妊娠率は低下する可能性があります。そのため、施設によってレスキュー顕微授精は行っていない場合もあります。
受精障害の多くは、卵子の透明帯を破って侵入するために必要な酵素が、精子頭部内に欠損していて侵入できない場合に起こると言われています。精子の100%が酵素欠損だった場合には何個卵が取れても受精は0%になりますが、この率は人によって異なります。一般的な受精方法である体外受精の授精率は60%台くらいですが、採卵できた卵子の授精率が平均的な受精率よりも著しく低い場合(0%は勿論ですが、10%~20%くらいの人もいます)は受精障害と判断されます。
しかし、受精率は低くても受精できた場合というのは、きちんと酵素を持っていた精子だったわけですから、それから得られた受精卵が培養を進めてきちんと基準を満たしているのなら、受精障害のない方が得た基準を満たした胚と比較しても、胚の染色体異常の率は増加しないものと考えます。
ひとつ言えることは、受精障害がなければ、10個採卵し、7個受精して、基準を満たす胚が3個、のところ、受精障害があると、10個採卵し、2個受精して、基準を満たす胚が1個、と早い段階で数が減ります。このように、最終的に基準を満たす胚の個数が少なくなる可能性が高くなり、ひいては妊娠に足るための採卵の回数が増えてしまうかもしれません。
ご質問者の方の場合、15個採卵し10個が受精障害ということは、5個受精したと仮定して、そのうちの4個が基準を満たした胚盤胞まで到達しているということであれば、受精した胚はかなり順調な確率で胚盤胞まで達していると思われます。受精障害ながらも体外受精で受精した胚から得られた胚盤胞が4個あるなら、グレードによらず、レスキュー顕微授精から得られた胚は後回しにして、体外受精で得られた胚盤胞から移植するのがベターと思います。