産後のトラブル、肛門括約筋機能不全って何?
肛門括約筋機能不全は、肛門括約筋が弱くなり、便やガスが漏れてしまう病気です。原因は、加齢により、肛門括約筋がゆるくなるものが多く見られますが、そのほかに脊髄などの神経の病気が原因の場合、そして、経腟分娩による会陰裂傷が原因で、肛門括約筋が切れてしまうケースもあります。
経腟分娩による会陰裂傷が原因の場合、直腸膣瘻同様、会陰体再建手術を行うことにより、会陰体に付着する肛門括約筋の機能を回復させることができます。手術方法は直腸膣瘻とほぼ同じです。
一般的に、肛門括約筋機能不全の治療法として、切れた筋肉を探して、重ねて縫う「オーバーラッピング」と呼ばれる手術が行われるケースが多く見られますが、再発率も高く、人工肛門が必要となることもあり、機能回復が十分達成できるとはいえません。また、人工肛門以外にも、絶食やIVH(点滴による栄養補給)、長期入院など、患者さんにとって、経済的にも時間的にも負担の多い治療を行う医療施設もあります。しかし、明らかに会陰裂傷が原因の場合は、CTやMRIなど、患者さんの負担になるような検査も必要ありませんし、会陰体再建手術を行うことにより、経済的、時間的に負担が少なく、治癒率の高い治療を受けることができます。当院の場合、1回の手術での治癒率は約97%で、残りの3%は再発していますが、再手術により治癒しています。
直腸膣瘻の項でも述べたように、経腟分娩による会陰体裂傷が原因の肛門括約筋機能不全についても、会陰体再建手術の対応可能な医療施設の増加が望まれます。
長岡京病院 水黒 知行先生
医療法人総心会/理事長
京都府立医科大学医学部昭和49年卒業医学博士
総心会長岡京病院/院長滋賀医科大学外科学客員講師
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