心身ともに健やかに、出産・産後を迎えられるよう、出産前の夫婦のコミュニケーションについて医療法人サンタクルスの吉田昌弘先生に聞きました。
ママの妊娠中、パパは身体的には変化が起きない。妊娠中、夫婦間で意識の違いが生まれるのはなぜでしょうか?
女性は妊娠すると新たな生命をお腹に抱え、日々自分の身体が否応なしに変化していきます。そういったさまざまなシグナルを身体的に日々感じながら、自分や赤ちゃんに関する理解を深めていきます。そういった経験が自然と母性を育んでいくのだと思います。
一方、男性は赤ちゃんが生まれるまで「パパ」になる実感が正直もてません。妊娠、出産から待ったなしで育児が始まるママと、そんなママを見守りながらも仕事に精をだすパパでは環境の変化は想像以上に大きく、実は当事者はそれにあまり気づきにくいものです。その差を自覚しないまま育児を続けていくと、夫婦間のズレを助長することになってしまいます。
胎教をきっかけにコミュニケーションを!出産に向け、妊娠中に夫婦でどんなコミュニケーションを取ることが望ましいでしょうか?
夫婦間のズレを大きくしないためには、妊娠中から夫婦間のコミュニケーションが大切になってくると思います。例えば、お腹の赤ちゃんに話しかけたり、音楽を聴いたりする胎教をきっかけに、夫婦でコミュニケーションを取るのもいいかと思います。妊婦健診では赤ちゃんの状態を知るために、超音波検査などで胎児の心拍をチェックします。赤ちゃんが元気に育っているか、夫婦で一緒に聴くことで夫婦間に自然とコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。
ただ、近年はコロナ禍で妊婦健診にパパが立ち会えないこともあります。当院では心音データをUSBでお渡しすることが可能で、自宅でいつでも心音を聴くことができるので、来院できないパパにも好評のようです。また、最近では自宅で心音を聴ける家庭用心音計なども出ているので、そういったものを活用してみるのもいいかもしれません。
「父親」になる意識の形成がカギ!ママや赤ちゃんの影響 !!父性が養われることは、ママと赤ちゃんにとってどんな影響がありますか?
お腹にいる赤ちゃんに話しかけたり、エコーや心音を見聴きしたりと日々の小さな変化を積極的に見つけることで、夫婦で赤ちゃんの誕生を待ちわびる気持ちが高まってくるでしょう。ママの些細な体調の変化を気づいてくれて、気遣ってくれるようになるかもしれません。
育児におけるママの重要性は言うまでもありませんが、母性と父性の両方をバランスよく与えられることが赤ちゃんにとってとても大切です。どちらか一方だけでは、子どもの脳や心の発達のバランスが悪くなることも否定できず、子どもの健全な心の成長には父性も重要です。
自宅でも心音が聴ける家庭用心音計。家庭用心音計で心音を聴くポイントを教えてください。
胎児の心音を聴くことは、実は新人の助産師さんでも容易ではありません。お腹の中で赤ちゃんは活発に動きます。健診だと超音波で赤ちゃんの位置を確認し、背中側に心音計を当てるようにします。一般的におへその上辺りに当てる方が多いのですが、恥骨のすぐ上辺りがベストです。大切なのは、ママがあまり神経質にならず、お腹の中の赤ちゃんに笑顔で話しかけてあげることです。また、赤ちゃんの心音を聴いてママがリラックスすることもお腹の赤ちゃんにとって大事なことです。
胎教は愛情を育み、ママのストレス軽減!胎教でおすすめするものはありますか?
クラシックにこだわらず、好きな音楽を聴いたり、絵本の読みきかせをしたり、好きな香りをアロマで楽しむのもいいでしょう。パパがママをサポートしてくれるといったこともうれしいですよね。
胎教は赤ちゃんの情緒の発達に影響するといったことが言われていますが、効果にはさまざまな説があります。何よりも胎教の効果は親子でコミュニケーションを取ることで、愛情を育み、穏やかな時間を過ごすことでママのストレスを軽減することだと思います。
妊娠中はホルモンのバランス変化によって、ママはイライラしたり情緒不安定になりやすいと言われています。さらに、妊娠に伴う体調不良や出産に対する不安そのものも、情緒不安定になる原因の一つです。身体面・精神面共に妊婦本人が思っている以上につらいことが多いので、妊娠中はパパが頼りです。胎教をきっかけに、夫婦でしっかりとコミュニケーションを取り、ゆったりとした気持ちでマタニティライフを送りましょう。