着床しないのは受精卵の質、それとも子宮内膜の状態?
岡 親弘 先生(東京HARTクリニック)
相談者:サンタさん(32歳)
受精卵のグレードと着床率に関して
先日、2回目の融解胚盤胞移植を実施。1回目の胚盤胞のグレードは4BB、今回は4CBでした。子宮内膜の厚さは8.5㎜。いろいろなサイトを見ると「グレードは目安で、着床率は受精卵の生命力で変わる」と書かれていました。着床しないのは以前クラミジアに罹患したせいかもしれないと思っているのですが、医師からは「今回の移植が失敗なら、子宮内膜の詳しい検査を受けてもらう」といわれました。でも、この検査はとても高額……。本当にグレードと着床率は目安でしかないのでしょうか。残りの胚盤胞は3BBとグレートのついていないものなので、不安で仕方ないです。
着床しないのは、やはり受精卵のグレードが影響しているのでしょうか。
BB以上のグレードは良好、BCやCBでも特に若い方では妊娠・出産するケースはあるので、それほど悪い状況ではないと思います。着床しないのは受精卵のせいだけとはいいがたく、子宮内膜のコンディションも関係しているのかもしれません。内膜の厚さは8.5㎜というとで、これは問題ないと思います。あとは、内膜の日付の進み方が受精卵を戻すタイミングに合っているかどうか。これが大幅にズレていると、なかなか着床しないことがあるんですね。
良好な胚盤胞を複数回戻しても着床しない場合、当院では凍結胚盤胞移植の模擬的な周期をつくって黄体期5日目の内膜組織を採り、病理的に調べることがあります。ちゃんと5日目になっているようなら、排卵周期でもホルモン補充周期でも5日目に戻せばだいたいの場合、着床します。妊娠した経験がない人や高齢の人は3日目など、2日程度ズレていることがあるのですが、そのような場合は7日目に戻せば受精卵が着床することも。
子宮内膜の進み方のズレがないかどうかを調べて、その方にとって最適な周期で受精卵を戻すことも一つの方法かと思います。この方も子宮内膜の状況を詳しく調べたほうがいいですか?
サンタさんは流産してしまいましたが一度着床していますし、年齢も32歳とまだお若い。このような方は子宮内膜の進み方が比較的一定しており、調べても大きなズレはないと思われます。担当の先生がおすすめしているのは「子宮内膜着床能(ERA)検査」だと思いますが、この検査は移植当日の内膜を採って、着床が可能な状態かどうか遺伝子レベルで調べるもの。それをしたとしてもおそらく問題はなく、前述したような内膜の病理的な検査も必要な
いかもしれません。
これまで胚盤胞をどのような形で戻していたのか不明ですが、もしホルモン補充周期で戻していたようなら、次は排卵周期で戻す検討を。着床経験がある方は排卵周期の子宮内膜の質がもっとも適していると思います。それなら、今残っている3BBの胚盤胞でも着床する可能性は十分あるのではないでしょうか。
この方はまだ32歳という年齢で、胚盤胞も確保できているので、卵子側に大きな問題があることは少ないと思いますが、もしこのままうまくいかなくて、再度採卵するのであれば、卵巣刺激法を変えてみることも一つの方法だと思いますね。
妊娠したことがあっても出産まで到達していないので、同じ方法でトライしてもまた似たような結果にしかならない可能性もあります。もっと質の良い胚盤胞が3個程度できるようなやり方はまだあると思います。体外受精を行ってうまくいかなかったら、卵子の質か子宮内膜の状態、どちらかの問題しかないと思うので、そこを工夫していかれるといいでしょう。
岡先生より まとめ
●内膜のズレがないかどうか、組織を採って調べてみる方法も
●妊娠経験があるなら、ホルモン補充周期より排卵周期で戻す選択を
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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