通水治療で卵管の詰まりを改善することはできますか?
2017/7/19 石川 聖子先生(銀座レディースクリニック院長)
相談者:みーたさん(25歳)
卵管詰まりと通水治療
3年前に子宮外妊娠をしたため、右卵管がありません。その後、不妊治療を始め、初めての子宮卵管造影検査では左卵管は問題なし。3回目の人工授精で妊娠しましたが、残念ながら子宮外妊娠でした。体外受精に進み、今度は無事に妊娠。出産して1年になります。出産後、1回だけ自然妊娠したのですが、結果は流産。「自然妊娠も不可能ではない」と思い、産婦人科を受診して子宮卵管造影検査を受けたところ、今までにないほどの激痛で「残りの卵管は詰まっている」といわれました。通水治療を1回したのですが、やはり「通っていない」とのこと。通ると肩が痛くなるらしいのですが、肋骨あたりの鈍痛が続いたくらいで、肩は痛くなりませんでした。検査自体はまったく痛くなかったです。先生から「高温期は通る時もある」といわれたので、来週また受けてみたいと思います。このまま通水治療を続けて、改善する見込みはありますか? 肋骨付近が痛くなったのはなぜ? 2年前は通っていたのに、2年後に詰まってしまうこともあるのでしょうか。
以前は通っていたのに、2年後に卵管が詰まってしまうことはあるのですか?
通常なら詰まることはありませんが、何らかの原因があった場合、短い期間で閉塞してしまうこともあります。卵管が閉塞したり狭窄する原因として、クラミジアなどの感染症、卵管炎や腹膜炎、虫垂炎など、子宮やお腹の中の炎症、子宮内膜症などが考えられます。ほかに、帝王切開などの開腹手術で卵管に癒着が起こってしまうことも。ただし、手術の際はそのようなことが起こらないように細心の注意を払いますから、頻度は少ないと思います。
また、通水や通気検査、子宮卵管造影検査では、れん縮といって、緊張や痛みなどで卵管が収縮して、通りが悪くなることがあります。油性の造影剤の場合は空気が詰まってしまうことも。このような検査のエラーで、一時的に詰まった状態になるという場合もあるんですね。
通水治療を受けたら、肩ではなく、肋骨付近が痛くなったというのは?
みーたさんは「通水で卵管が通ると肩が痛くなる」とおっしゃっていますが、これは通気検査と勘違いされているのではないでしょうか。通気検査では卵管が通ると横隔膜や肩に痛みが出るのですが、通水検査では通っても痛みは感じません。肋骨付近の鈍痛がなぜ起きたのかは不明ですが、おそらく検査によって引き起こされたものではないでしょう。
「高温期は通る時もある」という考えについてはどう思われますか。
医学的に私が知る限り、高温期に通りやすいという話は聞いたことがありません。むしろ、妊娠の可能性がある排卵後は、子宮にカテーテルを挿入する通水検査や子宮卵管造影検査は避けるべきだと思います。避妊をしていないと通水することはできないでしょう。一般的には、わざわざ避妊をして高温期に通水をするというのは考えにくいことですね。
このまま通水を続けていけば、卵管の詰まりを解消することができるのでしょうか。
通水治療とおっしゃっていますが、通常の通水はあくまでも卵管の通過性を判断する検査であり、卵管の詰まりを解消するための治療という認識はあまりないと思います。「詰まり解消に効果があった」という報告も一部ありますが、治療としてのきちんとしたエビデンスはありません。
自然妊娠にこだわりたいということであれば、通水検査よりも確定的に診断できる卵管鏡検査を受けてみてはどうでしょうか。この検査なら他の内視鏡検査と同様に、直視下で卵管の状態を詳しく観察したり、場所を選択して通水することができます。
卵管鏡検査は外来で受けることが可能で、体外受精を行っている施設や、一般的な産婦人科でも検査を実施している施設を紹介していただくことができると思います。
このまま通水を繰り返すより、もっと確立された検査・治療を受けたほうが、気持ち的にすっきりするし、問題点が解決される可能性が高いと思います。
石川先生より まとめ
●通常の通水はあくまでも検査で、治療という認識はされていない
●より詳しく診断・治療するなら卵管鏡検査という選択も