過去の嚢腫手術で卵管閉塞。癒着は早く剥がすべき?
コラム 不妊治療
過去の嚢腫手術で卵管閉塞。癒着は早く剥がすべき?
「癒着はできるだけ早く剥がしたほうがいいですか。理想は自然妊娠ですが、早く妊娠できるなら体外受精も、と悩んでいます。」
過去の嚢腫手術で卵管閉塞。癒着は早く剥がすべき?
柏崎 祐士 先生(かしわざき産婦人科)
相談者:こちさん(29歳)
体外受精か、腹腔鏡手術か悩みます
卵管造影検査をしましたが、造影剤が卵管に広がらず、すぐに体外に出てきてしまい、過去2回の手術で癒着しているのだろうとのことでした。23歳で両方、29歳(半年前)に左の卵巣にチョコレート嚢腫が見つかり、腹腔鏡手術を受けています。現在は医師から、「体外受精か、腹腔鏡手術で癒着を剥がすか、どちらにしますか」と言われています。左右両側とも卵管閉塞とは信じられず、別の病院でもう一度検査することも考えていますが、今回は体外受精し、第2子以降は腹腔鏡手術で癒着を剥がして自然妊娠という選択は可能ですか。それとも、癒着はできるだけ早く剥がしたほうがいいですか。理想は自然妊娠ですが、早く妊娠できるなら体外受精も、と悩んでいます。
過去の手術で卵管が癒着して閉塞している可能性があり、担当医から、体外受精か、または腹腔鏡手術か、選択を求められています。
結論から言えば、できるだけ早くママになりたいというのであれば体外受精。より自然に近いかたちで妊娠したいというのであれば、腹腔鏡手術を選択されると良いかと思います。どちらを選ぶかは悩まれるところでしょうが、やはりご本人次第です。
ただ、ご相談者のこちさんは、過去にチョコレート嚢腫で2度も手術されているのとのこと。実は、患部(卵巣の一部)を剥ぎ取る際には、一緒に正常な卵子もだいぶ取られてしまうのです。まだ29歳ですが、通常よりは卵子の数が少なくなっていると考えられるので、その点もぜひ判断材料にしてください。
今回は体外受精、第2子は腹腔鏡手術を受けた後に自然妊娠を目指す、ということも考えられますか。癒着は放置せずに、できるだけ早く剥がしたほうがいいですか。
卵管の癒着は、体外受精であれば妨げにはなりません。また、癒着の悪化によって腹痛を起こすといったことも極めて稀なので、自然妊娠さえ希望しなければ、そのままにしておいてかまいません。しかし、年月を経ることによって癒着が強固になり、剥がしにくくなるのは確かです。まずは体外受精で第1子を授かり、精神的に余裕をもって治療し、第2子以降は自然妊娠にトライする、というのも一つの考え方だと思いますが、自然妊娠に思い入れがあるのなら、癒着はできるだけ早めに剥がしたほうが賢明と言えるでしょう。これも、「早くママになりたい」「できるだけ自然妊娠したい」という気持ちのせめぎ合いになるかとは思いますが、こちさんはまだ29歳ですし、それほど自然妊娠に思い入れが深いのでしたら、第2子、第3子のためにも、できるだけ早めに腹腔鏡手術を受けたほうが良いかもしれませんね。
「別の病院でもう一度卵管造影検査を受けてみようと思う」の一文も気になります。技術の差は大きいのですか。
それほど難しい検査ではないので、医師や病院によって大きな差が出ることはほとんどないでしょう。卵管造影検査は感染症のリスクもあるので、短期間に何度も受けるのはおすすめできません。「卵管閉塞だから、体外受精しかない」と言い切る医師も少なくないなか、腹腔鏡手術も提案してくれたクリニックは、むしろ良心的に感じられます。担当医とよく相談して、納得のいく治療法を選んでいただきたいですね。
柏崎先生 まとめ
●自然妊娠を希望するならできるだけ早く腹腔鏡手術を受けて癒着を剥がして。
●嚢腫手術で卵子が減っている可能性も高いので、体外受精に踏み切る判断材料に。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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