チョコレート嚢胞、子宮筋腫がある場合の不妊治療と手術の必要性について
専門医Q&A 不妊治療
チョコレート嚢胞、子宮筋腫がある場合の不妊治療と手術の必要性について
2017/12/11 院長 神山 洋先生(芝公園かみやまクリニック)
たろぺそさん(34才)
チョコレート嚢胞、子宮筋腫がある場合の不妊治療と手術の必要性について
1年前に結婚し、妊娠希望の者です。
子宮筋腫の核出術を腹腔鏡で5年前に行いました。筋腫は取りきれましたが、その後1年で再発してしまい、医師 からは妊娠には大きな影響はない場所と言われていますが今は2センチ程度のものが2個あります。
筋腫の経過観察をしていたところ1年前にチョコレート嚢胞を指摘され、MRIをとったところ5センチ。
不妊治療を勧められて、タイミング法、人工授精をしましたが妊娠に至らず。通っていた婦人科では体外受精は できないとのことで、体外受精専門の不妊治療クリニックに転院したところ、嚢胞が6センチに大きくなっており手 術を勧められ戸惑っています。それまでの婦人科では妊娠が1番の薬と言われ、手術とは言われていませんでした。
年齢のこともあり、できればこのまま早く体外受精をしたかったのですが、嚢胞が6センチでは手術が1番良いの でしょうか。
腹腔鏡手術は2回目のため癒着で妊娠がしにくくなるのではという不安もあります。
神山 洋先生からの回答(芝公園かみやまクリニック)
まず、子宮筋腫からお話しますと、たろぺそさんの場合、医師から妊娠に大きな影響がないと言われているのであれば、子宮筋腫のなかでも筋層内筋腫、あるいは漿膜下筋腫の可能性が高く、妊娠には影響のない位置に筋腫があると推測します。また、現在2㎝程度であれば、妊娠した後に産科的に異常をきたすような大きさではないので、経過観察で良いと思います。当院であれば、可能な限り体外受精前に子宮鏡検査を行い、子宮内腔の状態、内膜の状態や変形などもチェックします。
次にチョコレート嚢胞の腹腔鏡下手術についてですが、ART(生殖補助医療)の前に腹腔鏡下による摘出手術を行っても受精率、着床率、妊娠率において手術しない場合と差がないという報告があります。また手術を行うと、その後の不妊治療における卵巣刺激日数が延長、排卵誘発剤の使用量も増加し、成熟卵子の獲得数が減少することも報告されています。
たろぺそさんはAMH(アンチミュラー管ホルモン)検査をされているでしょうか? AMHは卵巣予備能(卵巣に残る卵子の数)を推定することができる検査です。チョコレート嚢胞があると卵巣予備能の減少につながると言われ、手術により正常卵巣組織が減少したり、電気メスやレーザーなどで熱が組織に加えられることで、さらに卵巣予備能が減少する可能性もあります。検査がまだであればぜひ受けてみてください。もし、卵巣予備能の低下が進んでいれば、採卵を優先的に行うのも良いと思います。
一方、チョコレート嚢胞の場所が採卵時に支障をきたす場所だと感染のリスクが高まります。また、排便時に痛みを感じたり、月経痛が酷いなど自覚症状がある場合は手術を優先した方が良い場合もあるので、主治医の先生には手術を勧める理由をよく聞いて納得されてから手術を決断されたほうがよいと思います。
当院でも大きな子宮筋腫、チョコレート嚢胞がありながらもチョコレート嚢胞の位置が比較的採卵しやすい場所にあり、手術をせず妊娠された方もいます。たろぺそさんの場合、年齢的にもまだ若く余力もあり、意識も高いので、できる検査や治療を急いで妊娠を目指してください。