産婦人科への上手なかかり方
インタビュー
女性の健康
産婦人科への上手なかかり方
産婦人科にかかる機会は、女性なら誰にでもあって当然。石川てる代先生に産婦人科への上手なかかり方を教えてもらいました。
2018.10.18
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産婦人科ってそもそもどんなところ? どんな検査をされるの? 受診したいけれど、ちょっと怖い……といった具合に、産婦人科に対して不安を抱いている人が多いようです。なにより、妊娠したら行くところで、未婚女性や子どものいない女性、閉経した女性には関係ない場所と思い込んでいる人も少なくありません。しかし、実は産婦人科にかかる機会は、年齢を問わず、女性なら誰にでもあってしかるべきもの。石川てる代ウィメンズクリニックの石川てる代院長に、産婦人科への上手なかかり方を教えていただきました。
そもそも産婦人科とは?
産婦人科は女性のからだの健康維持のために診療を行っているところです。産科と婦人科にわかれていて、産科は妊娠、出産、産後のことなどを扱い、婦人科は子宮筋腫や子宮頸がんなどの女性生殖器の疾患や、性感染症、更年期障害、不妊、生理不順などの内分泌疾患などを扱います。
出産設備や入院施設がなく婦人科がメインの病院の場合、お産は扱っていませんが、妊婦健診などは行っています。ですから、里帰り出産をしたい、総合病院で出産するという方が、産前までは近所の産婦人科に検診目的で通院するケースも多いです。
4歳ぐらいから90歳以上まで、女性なら誰でも受診できます
妊婦でなくでも、女性なら誰でも受診できるのが産婦人科です。私どもの病院では下は4歳のお子さんから、94歳の方まで通院されています。
4歳のお子さんは自分で外陰部のかゆみを訴え、母親に連れてこられました。94歳の女性はホルモン不足からの腟炎です。ちなみにご高齢の女性で多い症状が子宮脱。子宮が下がってしまう病気です。
患者さんの年代で多いのは20代~40代です。月経困難症や生理不順、性感染症で来られる方が多いです。「赤ちゃんが欲しい」と不妊治療のために通院される方もいらっしゃいます。50代では更年期障害の方が多いですね。
口で言えない症状や相談ごとは問診票に書き込めばOK
産婦人科で受診するには、確かにとても勇気がいります。特に症状について、どう説明すれば良いのか、どう質問して良いのかがわからない方、また「腟」や「セックス」といった言葉を口に出して言うことに抵抗感がある方もいらっしゃいます。しかし、心配しなくても大丈夫。私どもの病院もそうですが、初診の方には必ず「問診票」を渡します。聞きづらいことはすべて「問診票」に書いてしまえばいいのです。
ちなみに、私の病院の問診票は下記のような内容になっています。他の病院でもだいたいこのような内容になっていると思います。
<問診票の内容>
●年齢
●現在、妊娠の可能性があるか?
●受診の理由は何ですか?下記から選んでください(複数回答OK)
子宮がん検診、不正出血、おりもの、外陰部のかゆみや痛み、月経が遅れている、月経の周期が不規則、月経痛、月経の量が多い、下腹部の痛み、腰の痛み、下腹部にしこりがある、外陰部にしこりがある、乳房にしこりがある、乳房が痛い、不妊症検査および治療希望(結婚後2年未満、結婚後2年以上)、その他(___)
●結婚していますか?
はい(結婚した年齢__歳 / 夫の現在の年齢__歳)
いいえ
●月経について
初潮年齢__歳 / 閉経時の年齢__歳
月経周期 約__日
月経持続日数 約__日
最近の月経 __月__日から__日間
●妊娠出産の経験はありますか?
はい(妊娠__回、出産__回、人工流産__回、自然流産__回)
初回出産時年齢__歳 / 最終出産年齢__歳
いいえ
●今までにかかった病気を教えてください(かかった時の年齢も)
●現在治療中の病気はありますか?
はい(病名 )
いいえ
●今までに婦人科で診察を受けたことはありますか? はい / いいえ
●アレルギーはありますか?
はい(薬品、食品、その他 )
いいえ
あらかじめ問診票を書いていただくことによって、医師もその人がどのような症状でつらい思いをされているのかが把握できるので、診療もよりスムーズになります。「受診の理由は何か」の問いの項目に「その他」の欄がありますが、口に出して言えない方はここにご自身の症状や悩みを書いてくださればOKです。「性交渉がうまくいかない」と書く人も1人や2人ではありません。正直に書くことが早く治すことにつながります。
医師が強くすすめた場合 内診は受けるべし。大きな病気の可能性あり
内診では、医師は左手の指を入れ、お腹の上に右手を置いて触診で子宮が腫れているか、卵巣が腫れているか、しこりがないかなどをチェックします。しこりを感じたら、腟式エコー検査を行います。基本的には、性体験がない人には行いません。ただし、腟に腫瘍ができている恐れがある場合などは、小さな腟鏡を使って、極力処女膜を傷つけないよう診察を行います。
この内診が痛そうで恐いといって嫌がる方がいます。どうしても嫌だという人に無理強いはしないようにしています。ですから、はっきり「内診は嫌です」と言ってもらってかまいません。それでも必要な場合は、医師からそのように伝えます。私の患者さんにも「内診は絶対嫌だ」という人がいましたが、どうしても腟の奥の細胞をとって検査した方が良さそうだと判断したので、「あなたは内診をした方がいいから」と説得して、内診を行い子宮の奥の細胞検査をしました。それによって子宮体がんが見つかりました。
石川先生より まとめ
最近は、自分の症状をインターネットで検索して病名を探し出し、「自分は性感染症だ」などと思い込んでしまう人がいます。検索も大切ですが、自分で病名を勝手に決めつけて納得しないようにしてほしいと思います。また、生理痛がひどい、出血が止まらないといった症状がとても心配な時に、はずかしいからといって放っておかないでください。特に悪性腫瘍による出血が続いているのに放っておくと、病状が進行し命にかかわる場合があります。お腹が痛くてふくらんできた場合も、卵巣がんが進んでいたりする恐れがあるので、恥ずかしがらずに診察に行ってください。
石川 てる代 先生(石川てる代ウィメンズクリニック院長)
1978年、千葉大学医学部卒業。千葉市立病院、千葉大学病院、九段坂病院での勤務を経て、1993年より国分寺市に石川てる代ウィメンズクリニックを開院。医学博士。日本産婦人科学会産婦人科専門医。日本臨床細胞学会細胞診専門医。クリニックには10~90代まで幅広い年齢層の女性が受診。その年代の病気や不調に日々向き合う。プライベートは読書でリフレッシュする。小説が大好きで芥川賞、直木賞の受賞作品はほとんど読んでいる。
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