不妊と冷えには相関関係あり?
まとめ 不妊治療
※11月25日発刊ジネコフリーマガジンのテーマは「不妊と冷え」です。
妊娠を望む女性にとって冷えは大敵といわれます。それはなぜなのでしょうか?
また、冷えはどんな対策で改善できるのでしょうか? 今回は秋冬のお悩み、冷えについての情報をご紹介します。
肌寒くなってきた今の時期から早めに対策をとって、元気に寒さを乗り切りましょう!
どうして体が冷える? 冷えの原因とは
冷え性で困っているという女性は珍しくありませんが、なぜ冷えは起こるのでしょうか。
“冷え性を医学的に説明するなら、下肢(あし)の末梢血管が収縮した状態、つまり下肢の血流が滞った状態といえるでしょう。体全体の体温が下がるのではなく、下肢の末梢体温だけが冷たくなった状態です。
なぜこのような状態になるのかというと、主に原因は4つ挙げられます。
1.過労や睡眠不足、ストレスや喫煙による末梢血管の収縮
2.運動不足やデスクワークによる筋肉の機能低下
3.貧血や低栄養、低タンパクによる血管内血流量の減少
4.クーラーなどによる低温環境
これらの生活習慣が、冷え性をつくりだしているのです。”
冷え性は健康にさまざまな影響を及ぼし、その中には不妊も挙げられるようです。
“心臓から送り出された血液が下肢で滞り、冷えると、全身の臓器への血流障害をまねき臓器の働きに影響を及ぼします。それが引き金となり、体のさまざまな不調や病気を誘発するのです。
もちろん、子宮や卵管への血流に関しても無関係ではありませんので、妊婦さんや妊娠を望んでいる女性は特に、冷え性対策を万全におこなってください。産婦人科医としての長年の経験と研究結果から、冷え性は、妊娠中の病気だけでなく、不妊の一因ともなり、また産後の母乳育児にも影響すると考えています。
近年の不妊に悩む女性の増加は、冷え性が大きく関係していると思います。冷え性はすべての臓器の血流を減少させるため、卵管から出た卵子を子宮腔内に運ぶ蠕動運動の働きも鈍らせるからです。”
"冷え性の方は、湯船につかる、ふくらはぎをマッサージするなどで下肢のむくみを改善することが大切です。なかでも特に冷え性対策に効果的だと考えているのが、プールでの水中散歩です。水圧と浮力によって、全身の血流を効果的に改善することができます。"
基礎体温が低い=冷えではない
ジネコユーザーのなかでも、冷えに対する不安はあるようです。基礎体温が低いことについてのお悩みと回答をピックアップしました。
“私は妊娠希望で基礎体温を毎日つけているのですが、低温期はだいたい36.0〜36.3で、高温期は36.3〜36.7ぐらいなんです。しかも排卵日から4〜5日目で体温がやっと高温って感じです。周期も長く35〜39日だったりして、排卵日も定まらず、排卵検査薬を使ったり、病院にも通ったりもしています。
自分でも知識を得ようと調べたりしてみたのですが、とにかく基礎体温が低めだし妊娠しにくいのかなって・・・。(T_T) 基礎体温低めで妊娠されている方がいらっしゃると気持ちが少し楽になれそうで・・・。色々教えて下さい。お願いします。”
“基礎体温は体のリズムを知るためのもので、妊娠を希望される女性はもちろん気になると思います。基礎体温は単に数字でみていくのではなく、グラフにしてみることをおすすめします。最近は基礎体温を入れるだけでグラフにしてくれるアプリもあります。グラフで客観的にみると、排卵の時期や高温期が長いかどうかなど大まかなトレンドが見えてきます。ネットや本で紹介されている見本と同じ形にならなくても心配いりません。形は人それぞれです。この方の場合、体温は低めですが正常範囲です。高温期も平均で0.3℃上がっていれば問題ありません。”
“「基礎体温が低い=妊娠しにくい」というわけではないと思います。もともと体温が低い方もいます。排卵後に体温が上昇するのは排卵後に分泌されるプロゲステロンホルモンの作用です。このホルモンが脳にある体温を調節する部位に働きかけ、基礎体温を上昇させます。プロゲステロンホルモンに対する感受性の違いにより体温の上昇が早い人、遅い人がでてきます。感受性は個性なので妊娠のしやすさには関係しません。それでも気になるようであれば、冷えを改善する治療をされてはいかがでしょうか。たとえば、体を温める作用がある「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などの漢方薬を服用することで体調がよくなることもあります。”
"基礎体温が低い=妊娠しにくいわけではありません。基礎体温は人それぞれですので細かいことは気にせず、大まかなトレンドをみるためのものと考えましょう。タイミングを合わせるには、超音波と血液検査で排卵日を予測するのがもっとも確実です。"
短期的な冷えはどの程度妊娠に影響する?
また、ジネコには、産婦人科の先生に質問できる「専門家Q&A」というコーナーがありますが、そちらに寄せられた冷えと不妊治療についての質問をご紹介します。
“凍結胚移植後にストレス発散の意味もあって冷たい缶コーヒーを一本飲んでるのですが、別のサイトの先生からは寒いこの時期に腸を冷やしてしまうし免疫力も下がってしまうって言われたのですが(中略)やっぱり妊娠したいならやめないといけないでしょうか?朝、冷たい缶コーヒーを飲んだら夜、寝る30分前に葉酸入りのルイボスティーを飲んでるのですがこれならどうでしょうか?”
先生からはこんな回答がありました。
“冷たい缶コーヒーを1本飲んだからといって、身体を冷やすことにあまりダイレクトな意味はないですね。「腸を冷やすし免疫機能も下がってしまう」と言われようたようですが、腸を冷やしたからといってそんなに急激に免疫機能は下がりません。冷たいコーヒーでも、食道を通って胃袋を通って小腸に入っていく頃にはだいぶ温まっていますから、子宮の温度が下がるほどの影響はないと思います。腸が強烈に冷えるもの(大量の氷など)を飲めば別ですけど、人間の体温はそんなにむやみには変わりませんから何も心配することはないんじゃないでしょうか。
ルイボスティーはカフェインが入っていませんから良いと思いますが、これを飲んだからどうこうということもありません。それよりも、冷たいコーヒーを飲まないとイライラするのであれば、その方がよっぽど害があると思います。”
"ストレスを感じると交感神経が緊張して細かい血管が収縮します。それによって子宮内膜の血液の流れが悪くなりますから、子宮内膜に受精卵がくっつきにくくなります。要するに、リラックスしているかどうかの方が大きいと思いますよ。"
手軽にできる冷え性対策は?
自宅でできる冷え性改善の対策は、日常生活での習慣改善ですね。
血行をよくして温めることを生活に取り入れていきましょう。
“血行を良くするにはどうしたらいいかということですが、手軽にできて効果的なのは下半身のマッサージや運動、 温めです。心臓から出た血液が動脈を通って体中に行き渡った後に、静脈を通って心臓に戻ることを「静脈環流」というのですが、ふくらはぎの血行が悪いとこのポンプ作用がうまく機能しなくなって、全身の血流が滞ってしまいます。
足の細い人、反対に太りぎみの人、普段、立ったままや座ったままの姿勢を長く続けている人は静脈環流に障害を起こし やすいので、ふくらはぎをもんだり、ウォーキングをして下肢を動かしたり、刺激するようにしましょう。また、38度前後のお湯で半身浴をするのも効果的。40度以上の熱いお湯だとかえって血流のスピードを落とすので、ぬるめにするのがポイントです。
排卵に問題がある人はこれらを毎日の習慣に。治療ではなく、自分で行うので前向きな気持ちになるし、排卵障害の改善も期待できます。”
"全身の血行促進には、血液循環のポンプ作用を担っている下肢をほぐすことがポイント。ふくらはぎをもんだり、ウォーキングで下半身の筋肉を動かす。ぬるめのお湯での半身浴もおすすめ。"
いかがでしたか? 冷たい飲み物をその場で飲むなどの短期的な冷えはあまり心配する必要はないけれど、生活習慣による長期的な不調としての冷えには、改善が必要かもしれませんね。