性感染症は自分で治せる?
インタビュー 女性の健康
若い世代から妊婦さんにいたるまで、性感染症に悩む人は少なくありません。女性に多い性感染症と正しい治療方法などの基礎知識についてプライベートケアクリニック東京院長の尾上 泰彦先生にご紹介いただきました。
性感染症(STI)で最も多いのはクラミジア感染症
性感染症にはいくつか種類がありますが、日本人の女性で最も多いのが、「クラミジア感染症」。次に多いのが「性器ヘルペス」です。そのほかは「淋病」、「尖圭コンジローマ」、「梅毒」、「腟トリコモナス症」などが代表的なものです。それぞれの病気について簡単に説明します。
【クラミジア感染症】
性交渉によってクラミジアトラコマティスという細菌に子宮頸管や尿道にクラミジアに感染して発症します。多くの女性の患者さんに自覚症状がないのも特徴です。症状が進行してから排尿時の違和感やおりものの臭いがいつもと違うことに気づき、発覚するケースも少なくありません。
卵管が細くなったり、卵管が炎症を起こして卵管閉塞を引き起こしたりする可能性があり、不妊の原因となる場合もあります。
【性器ヘルペス】
クラミジア感染症に次いで多いのがヘルペスです。
単純ヘルペスウイルスというウイルスに感染することで発症し、性器周辺に数mmほどの水ぶくれのようなものができます。最初は発熱、痛みなどの症状が現れ、ウイルスが神経にまでおよぶため、痛みで歩くのが困難になってしまうこともあります。再発しやすく、将来の結婚や出産への不安が募るなど、QOLの低下につながる可能性もあります。
【淋病】
淋菌に感染することで発症します。男性に多くみられる病気ですが、女性もかかるので注意が必要です。おりものの色がいつもと違うことで病気に気づく人もいますが、女性の場合、症状が現れるのは2~3割程度です。そのため、知らない間に病気が進行するケースも多く見受けられます。放っておくと卵管炎や腹膜炎などを引き起こすため、不妊の原因になることもあります。
【尖圭コンジローマ】
HPVという子宮頸がんの主な原因とされるウイルスの仲間による感染で引き起こされる病気です。性器に特有のいぼができますが、痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。再発しやすいのも特徴の1つです。
【梅毒】
最近、若い女性に急増している病気です。トレポネーマ・パリダムという細菌が原因で発症します。病気の進行度合いによってかなり症状が変化するのが特徴で、初期は感染部位にしこりや潰瘍(ただれ)ができ、いったんしこりや潰瘍(ただれ)が消えた後、全身に小さなあざや発疹があらわれます。末期には手足や臓器の麻痺が起こり、最悪の場合死亡します。梅毒患者さんを診察した場合には医師はその旨を国に報告する義務が定められている病気の1つです。
【腟トリコモナス】
腟トリコモナス原虫という微生物が原因で引き起こされます。性交渉だけでなく、タオルや便器などから感染することもまれにあります。おりものの量が増える、おりものの臭いがいつもと違う、かゆみが出るなどの異変で気づく人もいますが、無症状の人もいます。病気が進行すると腟内に雑菌が繁殖しやすくなるため、不妊の原因になることもあります。
自覚症状がないものが多いので要注意
セルフケアはNG。必ず専門医の受診が必要です
問診で緊張をほぐし、心のケアをふまえた治療方針を提案
「変だな? 」と感じたら診察を受けることが再発防止に
感染症に再びかからないためには、自分で自分を守ることが大切です。
例えば「性交渉の際にコンドームをつける」、「不特定多数との性交渉を避ける」ことも再発のリスクを下げることにつながります。
また、「この人だけは大丈夫」と相手を過信しすぎないことも重要です。不安な行為があった、いつもと体の調子が違うなど、「あれ? おかしいな」とご自身が感じたら、その時点で受診をして、感染があった場合には適切な治療を行うことが、再発防止につながります。
自己解決はできません。専門医と二人三脚で解決を
性感染症の治療は、健康な性交渉ができるようになるのがゴールです。1人で悩まず、ぜひ専門医に相談してみてください。きっと患者さんの希望や将来を見すえた解決策が見つかります。