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【特集】なぜ妊娠できないの?

コラム 妊活

【特集】なぜ妊娠できないの?

焦りや不安などネガティブな気持ちのもとになる「なぜ?」。その理由を知ることで解決することも。不妊治療中のカップルが抱いている「なぜ妊娠できないの?」という根本的な疑問と、夫婦2人で前向きに治療に取り組むためのコツを教えていただきました。

2019.6.6

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※2019年5月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer」の記事です。


凜さん(35歳)からの相談
● 夫婦ともに“良好”なのに、なぜ妊娠できないの?
結婚して約4年。特に避妊もしていないのにまだ妊娠できないのです。春から通院しています。生理も毎月何日かは差があっても、毎月ほぼ規則正しくありますし、排卵も毎月します。卵管通気も異常はなく良好、主人も検査しましたが、とても良好とのことでした。原因が分からないし、なぜ妊娠できないのでしょうか?

まとめ
人間が妊娠しづらいのは、お産のリスクから
女性の体を守るためでもあります。

お話を伺った先生のご紹介

田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院)


順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。

≫ セントマザー産婦人科医院

人は、進化の過程で妊娠しづらくなった


「不妊症」とは、夫婦がお互いに子どもを望み、健康的な夫婦生活もできているのに1年経っても妊娠できないことをいいます。不妊症の夫婦は10組に1組から最近では6〜7組に1組と増えていますが、その背景には、晩婚化で女性の結婚年齢が30歳を超えていることが深く関わっています。
数年前からメディアなどでも頻繁に取り上げられているので、ご存知の方は増えているとは思いますが、女性の卵子は年齢が上がるにつれて老化します。しかし、キャリアを優先して結婚しない、または結婚してもすぐには子どもを作らない女性は多く、「そろそろ」と思った頃には妊娠しづらい年齢になっているというのも現実なのです。
そのような社会背景もありますが、不妊治療をしている患者さんの根本的な疑問は「なぜ、妊娠できないのか?」ということでしょう。その理由はとてもシンプル。人間はそもそも「妊娠しづらい」という“特徴”を持っているからです。
まずは身体的な特徴を説明しましょう。人間には「月経」という現象がありますが、そもそも哺乳類で毎月排卵する月経があるのは人間以外では一部のサルやコウモリ、ネズミなどで、大多数の哺乳類には月経はありません。年に1、2回しか交尾期がないため、種を保存するためにも1回の妊娠率が高くなっていると言えるのです。反対に、人間は現象的には毎月妊娠できる月経があるため、1回の妊娠率は低くなってしまう。理由としては、回数が多い分、年1、2回よりも障害が起きやすく、完全な排卵状態になるのが難しいと考えられます。
また、ネズミなどほとんどの哺乳類は卵管と卵巣が一つの袋に入っていて、卵巣で排卵した卵子は必ず卵管に入るようになっています。しかし人間の卵巣と卵管は離れていて、卵巣から飛び出た卵子を卵管采がタイミングよくキャッチできなければ卵管に運ばれません。卵管の周囲に癒着がある場合も同様です。そして、ほかの哺乳類の子宮は2つありますが、人間は一つ。一度の妊娠で多胎になることを防ぐために進化の過程で子宮が1つになったと考えられています。毎月排卵して妊娠できるようになったが故に1回の妊娠率が下がり、妊娠しづらいという進化を遂げたのは、お産のリスクから女性の体を守るためなのです。


正しい情報収集と信頼関係が大切


体外受精を何度も試してみたり、治療年数が長くなるほど、焦りや不安が募り、精神的な落ち込みから日常生活にも支障が出る場合もあるでしょう。しかし、もし不妊症であるならば、その原因が何なのかを明らかにし、正しい情報を得るための努力をしましょう。不安は、理解できないことから生まれる感情です。子宮内膜症だから、卵管が癒着しているから、など、原因がわかればそれを治してから不妊治療に取り組み、治療に関する様々な情報を理解できるように学習して質問があれば積極的に聞くことを心がける。不妊治療に一番大切なのは医師との信頼関係ですから、真摯に対応してくれないと感じた時はすぐに転院する、というくらいの切り替えも、時には必要です。


1.不妊治療を始める前に
必ず受けておくべき検査は、女性は造影剤を用いた卵管通過検査、男性は精液検査。初期段階の治療方針を決めるためには、この2つの検査を受けることが大前提です。検査結果に異常がないのに2年経っても妊娠できなければ、腹腔鏡検査でさらに深く原因を探り、次のステップへ。治療方針と検査は常にセットで考えましょう。

2.晩婚化と未受精卵凍結
昔は結婚と子どもはイコールだと考えられていましたが、女性の社会進出や高学歴化などにより価値観も多様化した現在は、まだ結婚したくない、結婚しても子どもを産まない、という女性が増加。妊娠よりもキャリアを優先できるように、企業側が未受精卵凍結を支援するケースが増えてきたことも、現代的な新しいトピックです。

3.セックスレスも原因に
妊娠を妨げる要因は、排卵障害や子宮内膜の状態、年齢、男性因子など、昔からほとんど変わっていません。しかし、最近はセックスレスの夫婦が増えている傾向にあるのも事実。お互いに愛情はあっても、性欲が湧かない、夫婦生活に重きを置いていないなど理由は様々ありますが、治療以前にカウンセリングが必要なカップルは年々増加しています。

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer
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