人工授精とどう違う?自宅でできるシリンジ法
コラム 不妊治療
人工授精とどう違う?自宅でできるシリンジ法
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※2019年5月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer」の記事です。
- かなさん(34歳)からの相談
シリンジ法について - 2人目不妊でタイミング法を行っています。夫がEDぎみのため、人工授精へのステップアップを考えていたところ、人工授精と似たシリンジ法の存在を知りました。人工授精はお金がかかることから、夫は躊躇しており、自宅で簡単にできるシリンジ法に興味をもっています。ですが、周囲にシリンジ法を行った人がいないので不安もあります。具体的に、どのように行えばいいのでしょうか。夫に別部屋で採精してもらい、それをシリンジで挿入すればいいだけでしょうか。タイミング法のように夫婦生活の雰囲気もつくる必要があるのでしょうか。
- まとめ
- ●人工授精は治療、シリンジ法は夫婦生活の延長線にあるもの。
●性交のプレッシャーがなくED傾向の方にはいいかもしれません。
自宅でできるシリンジ法とは、どのようなものでしょうか。
男性がマスターベーションで採取した精液を専用のアプリケーターで女性の腟内に注入する方法です。シリンジとは、針のない注射器のようなもの。スポイト法とも言います。生理時にタンポンを使ったことがある方は、イメージしやすいかもしれません。
福井先生のクリニックではシリンジ法を提案するケースはありますか。
当院で提案することはありません。もし提案するとしたら、シリンジ法のキットが清潔で医療器具として使える品質かどうかを調べて納得できた場合でなければ患者さんにおすすめできないので。
ただ、ご主人がED(勃起障害)の傾向があるようですので、タイミング法ではプレッシャーを感じてしまい腟内で射精できないという方には、リラックスして自分のペースで射精できるのでいいかもしれませんね。
自分でできる人工授精と勘違いする人もいるようです。シリンジ法と人工授精の違いを教えてください。
シリンジ法は医療機関で行う治療ではなく、専用キットを用いて精液を女性の子宮内ではなく腟の中に注入するものです。自宅で行うことができるので、あくまで夫婦生活の延長線上にあるものとお考えください。
人工授精は、医療機関で超音波検査をして卵胞の大きさ、子宮内膜を計測し、血液検査で排卵前に上昇するLH(黄体化ホルモン)というホルモン値を測定して排卵日を予測します。その日に採取した精液を選別・洗浄し、濃縮して子宮内に注入します。事前に超音波検査や排卵誘発剤などを使用して妊娠に最適なタイミングで行うことができます。
インターネットでシリンジ法のキットが販売されていますが、購入する際の注意点があれば教えてください。
まず専用キットは清潔に保つことで炎症を起こさないようにしましょう。使用する際は、手をきれいに洗うなど気をつけてください。
シリンジ法を行う際は、タイミング法と同様に基礎体温などから排卵日を特定し、タイミングを合わせることが必要です。ご主人が無精子症の場合はシリンジ法では妊娠できませんし、精子が少ない場合や、生理の周期が乱れているなど排卵障害がある方は妊娠しづらいかもしれません。大前提として排卵周期やAMH(抗ミュラー管ホルモン)、精液検査などの基礎的なことを医療機関できちんと検査したほうがいいですね。どこにも問題ない場合に行えば意味があるかもしれませんが、決して人工授精の代わりになるものではありませんし、まったくの別物と考えたほうがよいかもしれません。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer
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