卵管水腫の手術後、治療はいつから始められますか?
コラム 不妊治療
卵管水腫の手術後、治療はいつから始められますか?
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします
※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
- まりかさん(27歳)からの相談
▶手術後の治療スケジュールが知りたい - 2年半、不妊治療をしています。今月、ステップアップのため転院しました。体外受精の前にひと通りの検査をすることになり、子宮卵管造影検査の結果、右の卵管に閉塞、左の卵管に水腫があったため、来月手術をします。初めての体外受精の前に原因がわかったのはよかったのですが、手術後、何カ月くらいから採卵などの治療を始められるでしょうか? 焦ってもよくないことはわかっていますが、おおよその目安を教えてください。
- まとめ
- ●経過がよければ、術後の生理が終わった頃から採卵できるでしょう。
●卵管水腫の手術と体外受精へのステップアップは正しい判断です。
子宮卵管造影検査はどんな検査ですか。
この検査は子宮に造影剤を注入して子宮と卵管の状態を調べるレントゲン検査です。検査の目的は大きく二つあり、一つは卵管に詰まりがないか、もう一つは子宮奇形など、子宮の形に異常がないかを調べます。検査はレントゲン室の台の上で行い、子宮口より造影剤を注入するのと同時にレントゲン写真を撮ります。そして施設によって異なりますが、1時間後か翌日の時間が経った後にもう一度レントゲン写真を撮ります。卵管に詰まりがあると造影剤が留まってしまうので、二つの写真を見比べればその位置が特定できます。
まりかさんは両方の卵管に閉塞と水腫がありました。これらはどんな病気ですか。
卵管は10㎝くらいの管状の器官で、このどこかに詰まりがある病態を総称して卵管閉塞といいます。卵管水腫はそのなかに含まれます。
卵管閉塞の病態や原因はいろいろで卵管水腫の場合は、血液や膿などの卵管液が溜まって卵管を詰まらせます。原因は性感染症のクラミジアや子宮の炎症がベースだといわれています。
卵管閉塞や卵管水腫は体外受精にどんな悪い影響を与えますか。
卵管は精子と卵子の受精の場なので、そこに詰まりがあると妊娠しづらくなります。そこで卵管を使わずに妊娠させるのが体外受精という治療法です。卵管を使わないのだから、詰まりがあっても影響がないように思われるでしょう。しかし卵管水腫があると、胚移植の後に貯留液が子宮に流入して、胚の着床を妨げるという説があります。そのため体外受精の前に積極的に治療する先生もいらっしゃいます。
手術後、いつから採卵できますか。
回復状態がよければ、術後最初の生理が終わった頃から採卵の治療を始められるでしょう。術後1カ月くらいが目安で、そう長く待つことはありません。
手術には卵管を摘出したり卵管液だけ吸引する方法があります。腹腔鏡手術が主流で、開腹手術に比べて入院期間が短くすみます。とはいえ全身麻酔で行うので合併症などのリスクはあります。まりかさんは体外受精にステップアップされるので、手術をするからには再発しない卵管の摘出が望ましいでしょう。
焦るまりかさんに助言をお願いします。
卵管水腫の手術による焦りや不安があると思いますが、治療は正しい方向に進んでいるので安心しましょう。そして術後からが治療の本番です。希望をもって採卵、胚移植に臨んでください。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
≫ 掲載記事一覧はこちら