【Q&A】高刺激or低刺激 良質なのは?-浅田先生
専門医Q&A 不妊治療
【Q&A】高刺激or低刺激 良質なのは?-浅田先生
ロング法で10個移植しても陰性。質が良いのは低刺激?高刺激? 浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお答えいただきました。
相談者:まりも子さん(39歳)
不妊治療歴2年の39歳です。
今まで
アンタゴニスト→12個(9受精)
アンタゴニスト→6個(3受精) 計12個のうち、4個を初期胚、2個を胚盤胞移植→陰性
転院後、
ロング→10個(10受精)
2個を初期胚、2個を胚盤胞、二段階移植→陰性
今回またロング法で採卵をしました。6個とれ、受精は未確認です。
10個移植しても結果が出ていないので、相当質が悪いのかなと感じています。
(着床不全、ERAなど検査は一通りしています)
まだ結果は出ていないのにもう次の採卵の事を考えてしまっています。
低刺激の方が数が少ない分、質がいい・・・というのを何度かネットで見かけて気になっています。
これは都市伝説みたいなものでしょうか?
10個移植しても陰性なのは、質が良くないから?
まりも子さんは今まで3回体外受精され、全部で28個の卵子を採られています。これまで10個移植しても結果が出ないため、相当悪い状態だとご自身では思っていらっしゃるようですが、39歳の方であれば、1人の赤ちゃんが生まれるのに30個くらいの卵子を必要とします。もちろんカップルによって遺伝子の組合せは大きく異なりますので、まりも子さんの場合100個の卵子が必要となるのか、逆に10個で十分なのかは分かりません。ただ、平均でも30個の卵子が必要ですので、ご本人が思っているほど成績が悪いとは言い切れません。
また、卵子は女性が母親の胎内にいるときに一度だけ作られ保存されます。まりも子さんの場合ですと、すでに39年間も保存された細胞です。この卵子の老化が他の哺乳類と異なる点で、ヒトでは妊娠しにくくなる一番の理由となります。
低刺激だと良質というのは本当?
妊娠率は、採卵で採れた卵子の数に比例して高くなります。ですから、一度にたくさんの卵を採り、それを凍結融解胚移植することが妊娠への早道だと考えます。数が少ない方が良質である、という情報をネットで目にされたとのことですが、医学的・科学的根拠は一切ありません。残念ながら、このような根拠のない治療法が、ビジネスと結びついて流布されていることもあります。(ただ、卵がたくさん採れると黄体ホルモンが早期に上昇するため、刺激後すぐに胚移植する新鮮胚移植の場合、卵をたくさん採るメリットは打ち消されてしまうこともあります)。
着床不全やERA(子宮内膜着床能検査)等の検査もされているようですが、これらの検査のエビデンスレベルは十分ではありません。二段階移植もされていますが、これも世界的にはエビデンスの乏しい治療法とされています。
刺激を弱くして質の良い卵子が採れるというエビデンスはありません。先ほども述べましたが、今治療に使用している卵子は、生まれる前に作られ保存されていたものです。その卵子は、排卵の半年前から成長をはじめますが、後半の3ヶ月はホルモンに依存して成長します。ですから、しっかりとした刺激を行い、ホルモンを管理して成熟卵を採るということが、何よりも大切な治療法であり採卵の基本となります。