2016年10月23日に行われたジネコ 妊活セミナーより
妊娠へ近づくために
2016年10月23日(日)、静岡市内で「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、小島薬局漢方堂の小島晃先生「体にやさしい妊活漢方」について、第2部では「妊娠へ近づくために」として、俵IVFクリニック院長俵史子先生にお話いただきました。今回は第2部の内容の一部をお届けします。
ホルモン剤を使った治療と目的
不妊治療においては、さまざまな形でホルモン剤を使うことがあります。
まず、タイミング法や体外受精で排卵誘発剤を使う場合。排卵が遅い、排卵しない、黄体機能不全等の場合で改善の可能性があります。自然妊娠を期待するなら、基本的には育てる卵は1個でありたいので、1個排卵させるのを目標にします。
対して、体外受精や顕微授精のような生殖補助医療の場合には、複数の卵を育てる目的で薬を使います。自然の排卵を目指すときは、卵巣にある一次卵胞、二次卵胞の中の1個だけを育て、他は閉鎖卵胞となりますが、数をたくさん育てたいときは、閉鎖する卵胞を有効に使います。
ホルモン剤の種類は、飲み薬や注射などがあり、体外受精の場合は、卵を育てる目的以外に、排卵をコントロールする薬も併用します。ある程度いい時期まで卵を育てたいので、早く排卵してしまうのを調整するんですね。
薬を駆使して卵を育てる方法は、体外受精、顕微授精に限られます。例えばHMG法は、注射の排卵誘発剤を毎日1種類打ちます。調節卵巣刺激法は、排卵を予防したり、逆にさらに刺激するような薬なども併用します。他にアンタゴニスト法、ショート法、ロング法といったものがありますが、これらはいずれも数を育てる方法です。
一方、自然周期、低刺激周期という方法がありますが、完全自然周期はまったく薬を使わず、自然に排卵した卵を、時期を狙って取ります。低刺激周期は、飲み薬の排卵誘発剤に注射を加えたり加えなかったりします。
個人に合わせて適切な選択を
最近日本では自然周期が流行っています。日本産婦人科学会が、体外受精を行う全国の施設のデータを公表していて、これによると、卵を取る治療をスタートし、最終的に出産まで行けた人は2000年の前半ぐらいまでは約15%でしたが、ここ数年下がってきています。新しい技術や精密な治療も進んでいるはずなのに、実際の生産率が落ちているのは、自然周期による治療が増えたのが要因と言われています。1個2個の少ない数で勝負する場合、その卵がよければ少ない負担で結果が出ますが、実際は、ある程度数を取って、その中からいい卵を選んで移植する方が成績が出やすくなります。移植までできたら、妊娠率に差はありません。もちろん、自然周期が合っている人はそれを選ぶべきですが、みなさんがすべてその方法がいいかは分かりません。
目指すのは、必要最低限の刺激で最大の効果を得ること。回数を多くチャレンジするということは、それだけ年を取ることですから、それだけで妊娠の確率は下がりますし、薬を使い続けるデメリットもあります。
では、実際どれがいいか、私の考えとしては、正直答えはないと思うのです。自然な方法にも刺激が強い方法にも、メリットもデメリットもある。また、選択肢をどれだけたくさん持っているかが、医療側としても重要になってきます。ただ言えるのは、その方にあった方法を選択するのが大切だということです。もともとの月経周期や治療歴、今まで使った薬の反応性、年齢や卵の数、そういったことを総合的に評価し、どの方法が合うかをその都度選択し、不妊治療に当たっていただければと思います。
俵IVFクリニック 俵 史子先生
浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、出身地の静岡に俵IVFクリニックを開業。
≫ 俵IVFクリニック