2016年から男性不妊治療の助成制度がいよいよスタート。この制度実現の立役者が三重県知事の鈴木英敬氏と、リプロダクションクリニック大阪の石川智基先生。予備校時代からの親友であり同志であるお二人に、男性不妊治療助成の実現にいたる想いなどお話しいただきました。
不妊症の半数は男性が原因男性不妊治療の助成をきっかけに意識の改革を
こうした経緯もあり、三重県では2014年に男性不妊治療の助成を全国で初めて導入されました。その想いをお聞かせください。
また、今でこそ子ども2人に恵まれましたが、結婚当初は子どもができなくて夫婦で悩んだ時期もあります。家族の形成は個人の価値観に委ねられるのが前提ですが、子どもを希望しているのにかなわないのはつらいことです。その希望がかなうようにと男性不妊治療の助成を始めました。
男性も利用しやすい総合クリニックの開設で女性をサポート
当院は大型商業施設内にクリニックを設け、男性と女性双方を対象にした先端不妊治療の総合クリニックとして、土日・夜間の診療などを行っています。何よりも男性が利用しやすい環境をつくることで、女性をサポートしたいと考えています。
男性不妊治療の助成だけではなく、男性の意識も変える時期にきているのでしょうか。
また、「みえの育児男子プロジェクト」を発足させ、育児男子ハンドブックの作成、「ファザー・オブ・ザ・イヤー・inみえ」の実施、子育て世代の父親を集めた親子キャンプなど、独自の取り組みを行っています。子育て中の男性同士が気軽に子育てについて相談や情報交換できる、そんな環境づくりも大事だと思います。
男性も家族形成の当事者これからも家族のあり方にしっかり向き合っていく
知事は初の著書『「パパ」はどうしてパパなの?』(エムオン・エンタテインメント)を出されました。とても感動的な内容でしたが、なぜこの本を出そうと思われたのですか。
最近、三重県では里親委託や養子縁組の推進にも力を入れています。日本の里親委託は15%程度なのに対し、イギリスは70%と当たり前の環境です。国連ガイドラインにも「子どもは家庭的環境で養育されるべき」とあるのに、日本にはまだそういう環境がありません。これからもさまざまな取り組みを通じて、家族のあり方について真剣に向き合っていくつもりです。
「男性不妊治療助成」制度の流れ
2004 年 少子化対策の観点から、不妊治療の助成制度がスタート。
2014 年 三重県で男性不妊治療に特化した助成制度を都道府県で初めて導入。
2016 年 国の特定不妊治療費助成制度の改正により、男性不妊治療助成が決定。
三重県知事 鈴木 英敬 氏(右)
1974 年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2006 年内閣官房参事官補佐として第一次安倍政権で教育再生や環境問題などに取り組む。衆議院選三重2区で自民党からの出馬・落選・離党などを経て、11 年4月に三重県知事に当選。全国最年少知事に。15 年4月に再選し、現在2期目。家庭では一男一女のパパ。
リプロダクションクリニック大阪 石川 智基 先生(左)
医学博士。2000 年神戸大学医学部卒業後、生殖内分泌学を研究。米国の大学で男性不妊を研究、男性不妊手術を学ぶ。08 年に神戸大学大学院助教。その後、オーストラリアの大学で男性不妊診療・研究の経験を積んだ後、2013 年大阪市北区に日本初の男性・女性双方の先端不妊治療を総合的に行う「リプロダクションクリニック大阪」を開院。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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