HOME > 不妊治療 > 不育症 > 着床障害と不育症について
HOME > 不妊治療 > 不育症 > 着床障害と不育症について

着床障害と不育症について

コラム 不妊治療

着床障害と不育症について

2017春号p30-31

2017.4.9

あとで読む





着床障害と不育症について


石川 弘伸 先生(醍醐渡辺クリニック)




 


せっかく良好な受精卵ができても、着床障害や原因不明の流産を繰り返す不育症で出産まで至らない場合、どのように治療を進めるべきなのでしょうか。醍醐渡辺クリニックの石川先生にお話を伺いました。


不育症の定義とは?着床障害と不育症の違い


妊娠は成立するものの、流産や死産を繰り返してしまい、最終的に赤ちゃんが得られない状態を不育症といいます。受精卵が子宮内膜に着床し、妊娠はスタートするけれども、赤ちゃんが生まれてくることができない状態です。日本では連続3回以上の流産が繰り返される場合、習慣流産という用語も使われていますが、妊娠22週以降の死産や、生後1週間以内の新生児の死亡は含まれません。実際のところ、学会でも「何回の流産で不育症か?」というはっきりとした定義がないのですが、当院では2回流産を繰り返されると、検査をご提案することが多いですし、またご自身から検査を希望される方も増えています。

一方、受精卵が子宮内膜に着床することができず、妊娠そのものがスタートしないのが着床障害です。排卵誘発を行い、体外受精や顕微授精によって培養した良好な胚を移植したにもかかわらず、妊娠しない、化学流産などに終わってしまう状態が着床障害と考えられます。化学流産とは、妊娠反応が陽性となった後、超音波で診察しても子宮内に胎嚢が確認できない状態で、これは流産の回数には含めないことになっています。

では、不育症や着床障害の検査や治療に至るまでの流産の回数が、なぜ2回、3回と決められているのでしょうか。それらは単純に確率の問題であり、統計的な考え方によります。日本では自然流産の起こる頻度はだいたい全体の15%くらいとされています。妊娠しても1割以上の人が流産する確率があるということです。それが2回までなら偶発的に起こりうることと考えてもよいですが、3回以上となると、何かほかに原因があると考えたほうがよいという考え方です。

女性にとって流産はつらいものですが、その半数以上はリスク因子が不明のものです。あまりご自身を責めずに、思わぬ原因が隠れていることもありますので、まず検査を受けてみることをおすすめします。


原因を探るためのさまざまな検査


不育症や着床障害の原因を調べる検査の項目は多岐にわたり、施設によって多少異なるのが現状です。血液検査では、抗リン脂質抗体の測定、糖尿病や甲状腺など内分泌疾患の有無、あとは夫婦それぞれの染色体を調べる検査などがあります。そのほか、子宮の異常を調べるために子宮卵管造影検査や超音波検査を行うこともあります。

ご夫婦の染色体異常については、具体的な治療を受けるかどうかは十分なカウンセリングが必要です。染色体異常があっても普通に生活されている方なら大きな異常が見つかることはあまりありません。軽微な異常であれば最終的には赤ちゃんが生まれることも多いのです。統計的には5人中、4人までは正常、つまり流産は繰り返すけれども最終的には出産できるというデータとなっています。

話は少しそれますが、現在、注目されている検査の一つに着床前診断というものがあります。これはまだ日本では重い遺伝性疾患をもつ方にのみ認められている治療で、一般的には行われていません。ご夫婦に染色体異常があった場合、そのご夫婦の受精卵にも染色体異常が起こる確率が高くなりますので、それを調べて正常な受精卵だけを戻すことで流産を防ぐというものです。

流産を2度、3度と繰り返すと、女性は体だけでなく、精神的にも大きなストレスを抱えることになり、現在その解決策として議論が進んでいます。近い将来には日本でも有効な検査法となりうるでしょう。


詳しく調べても原因が特定できないケースも


検査で見つかった不育症のリスク因子に対して治療を行うことはできますが、根本的に“不育症を治療する”ということにはならないこともあります。

たとえば、子宮に着床を妨げる筋腫などの異常があれば、外科的な手術によってそれを取り除くことは可能です。免疫異常の抗リン脂質抗体症候群であれば、アスピリンの内服やヘパリン注射など、抗凝固療法がある程度は有効であることがわかっています。ですから、それらがリスク因子となっている場合には、有効な治療法となるでしょう。しかし、実際の症例では何が流産や不育症のリスク因子となっているのか、詳しく調べてもわからないケースが多く、原因を明らかにして治療することが困難なのが不育症においては実状なのです。

体外受精や顕微授精の技術が確立し、受精まではかなりサポートできるようになりましたが、移植に関してはほとんど進歩がないというのが今の生殖医療の現状です。着床そのものをサポートする有効な治療法は今のところ、まだ出現していないのです。当たり前のことではありますが、まず検査によってできるだけ着床不全や不育症の原因となりうるリスク因子を取り除いたうえで、適切な排卵誘発を行い、体外受精や顕微授精で得られた受精卵を、できるだけダメージを与えることなく移植する、そのことがよい結果につながると考えています。




石川先生より まとめ


・早めに検査を受けること
・検査で着床を妨げる可能性のある要因を少しでも明らかに
・適切な排卵誘発を行い、体外受精で良質な受精卵を移植



 



[無料]気軽にご相談ください

 



お話を伺った先生のご紹介





石川 弘伸 先生(醍醐渡辺クリニック)


1991 年滋賀医科大学卒業。同大学院修了。泉大津市立病院副医長、水口市民病院産婦人科医長、野洲病院産婦人科部長を経て、2003年より醍醐渡辺クリニック副院長。電子カルテの導入が軌道に乗り、受付や先生自身の仕事がスムーズになったことを喜んでいる石川先生。「最近は手書きで文字を書く機会が減って、簡単な漢字がなかなか思い出せなかったりするのが困りものですね」と苦笑い。


≫ 醍醐渡辺クリニック



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
≫ 掲載記事一覧はこちら




 


あとで読む

この記事に関連する記事

この記事に関連する投稿

女性のためのジネコ推薦商品

最新記事一覧

Page
top