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卵管癒着で5回の体外受精。 次回の採卵までにできることは?

コラム 不妊治療

卵管癒着で5回の体外受精。 次回の採卵までにできることは?

「体外受精の目安は3回と聞きましたが、諦めきれない気持ちが強く、何かできることはないか考える日々です。」

2017.5.21

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卵管癒着で5回の体外受精。次回の採卵までにできることは?


蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)







相談者:のっこさん(32歳)


体外受精移植4回陰性1回化学流産


 
体外受精を繰り返していますが、なかなか着床しません。10代の頃、腹痛で病院を受診したところ、卵巣が腫れていると言われ、腹腔鏡手術を行いました。15年後、不妊専門病院で検査を受けたところ、卵管癒着がわかり、体外受精に臨みました。1回の採卵で6個の受精卵ができ、5回の移植を行いました(1ー3回目 胚盤胞 陰性、4回目 初期胚 陰性、5回目 胚盤胞2つ 化学流産)。体外受精の目安は3回と聞きましたが、諦めきれない気持ちが強く、何かできることはないか考える日々です。化学流産しているので、数カ月はお休みしてまた採卵からになると思います。子宮鏡検査など医院によってさまざまな考え方があるようですが、それも含め、その間できることがあればアドバイスをお願いします。



 



5回の胚移植で妊娠できませんでしたが、どのような治療が考えられますか?


採卵1回目で6個の胚盤胞が凍結できたのはよかったと思います。32歳で比較的若いので、妊娠のチャンスは十分あると思います。また月経不順(最長2.5カ月)で、卵管癒着があるということなら、やはり体外受精がよいと思います。胚盤胞は胚の中で最も着床率が高いものです。ただヒトの胚には一定の割合で染色体異常が生じます。32歳の方では、4個の胚盤胞に1個程度の染色体異常があり、これは着床しないか、着床しても流産に終わってしまいます。染色体異常があるかないかは見てもわかりませんが、今回のケースでは胚盤胞が6個もあればすべてが異常とは考えにくく、少なくとも半数は正常染色体であってもおかしくないと思います。凍結胚を戻す時の子宮内膜の調整法としては、ホルモンを補充して子宮内膜をつくる方法と、自然排卵周期で戻す方法がありますが、もしこれまでの方法が前者であれば後者に、後者であれば前者に変えて試してみるのもよいかもしれません。ただ月経不順があるということですので、自然排卵周期は少し難しいかもしれません。ほか、これに加え、次回の対策として次の方法を視野に入れられたらいいと思います。


①卵巣刺激法を変えてみる。②全胚凍結(可能なら胚盤胞凍結も含む)。③胚移植周期の黄体補充法を変えてみる。④胚盤胞移植日を従来より2日程度遅らせる。(着床に関する遺伝子を調べている研究者の報告では、良好胚盤胞を何度戻しても着床しない場合、着床する時期が25%以上ズレており、その多くは後ろにズレていると述べられています)。


治療をお休みしている間にできることはありますか?


数カ月のお休みの間に心がけていただきたいのは、リラックスして過ごすことです。また移植の際は、子宮内膜の厚さも大切です。当院では7㎜を基準に考えていますが、着床しない、流産を繰り返すという方は内膜が薄い方が多く、内膜の慢性炎症が見られることもあるので、それを調べるためにも子宮鏡検査は有効です。また、凍結胚移植の前周期に内膜をスクラッチ(こする)すると着床率がよくなるともいわれていますが、内膜ポリープがあればポリープをとることで、スクラッチ作用が得られますし、内膜ポリープがあると着床しづらいので、その意味でも移植の前の周期に子宮鏡検査をするのはよいと思います。内膜の炎症所見があれば、抗菌薬剤を投与することも有効です。




蔵本先生より まとめ


●胚盤胞を何度戻しても着床しない場合、移植日を2日程遅らせてみる。
●内膜に慢性炎症や内膜ポリープがあると着床しづらいので、子宮鏡検査は有効。



 



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お話を伺った先生のご紹介





蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)


山口県柳井市出身。1979年久留米大学医学部卒業。1985年山口大学大学院修了。医学博士。1995年6月蔵本ウイメンズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。山口大学非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授。電子カルテを導入して5年。電子媒体を用いて、患者さんへのサービスや、よりスムーズな診療を目指します。今年3月、生殖医療のための医療支援システムの活用をテーマとした「第5回日本生殖医療支援システム研究会」の大会会長を務められたそうです。


≫ 蔵本ウイメンズクリニック


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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