3PN由来の胚盤胞移植で妊娠の可能性はありますか?
コラム 不妊治療
3PN由来の胚盤胞移植で妊娠の可能性はありますか?
初期胚、拡張胚盤胞、3PN由来の胚盤胞を凍結。移植がうまくいかなかった時3PN由来のもので移植は?蔵本先生に伺いました。
初期胚、拡張胚盤胞、および3PN由来の胚盤胞を凍結しているkokuroさん。移植がうまくいかなかった場合、3PN由来のものでも胚盤胞まで育ったならば移植できるのか、蔵本ウイメンズクリニックの蔵本先生に伺いました。
※2018年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.38 2018 summer」の記事です。
相談者:kokuroさん(41歳)からの相談
▶ 3PN由来の胚盤胞移植について
近々、顕微授精をする予定です。現在凍結されているものは、初期胚、拡張胚盤胞、および3PN由来の胚盤胞になります。今回は、まず拡張胚盤胞を移植する予定ですが、もし成功しなかった場合、3PN由来の胚盤胞を移植することはどうなのかで悩んでいます。培養士の方は、3PN由来のものでも胚盤胞にまで育ったのであれば、赤ちゃんになりうる可能性もあるとおっしゃるのですが、はっきりよいともだめとも言えないそうです。最終的に私自身の決断になりますが、せっかく胚盤胞まで育ち移植できるのなら、移植したいです。ただ、妊娠の確率が低く、流産するのが目に見えているなら考えてしまいます。アドバイスをお願いいたします。
Doctor’s advice
●拡張胚盤胞が成功しなかった場合、初期胚の移植か再度採卵の検討を。
3PN由来の胚盤胞とはどういうものですか。また、その原因について教えてください。
PNとは前核のことですが、受精するとその中に2つの前核(2PN)が見えてきます。1つは精子から、もう1つは卵子からできた前核です。正常受精卵の中には、前核が2個ありますが、これが3個になってしまったのが3PN胚です。
3PN胚が起こる原因として考えられるのは、まず第2極体の放出不全です。精子が卵子の中に入ると、正常に受精した卵子は減数分裂を再開し、第2極体というものを放出します。第2極体が正常に放出されず核膜が形成されてしまうと、染色体数が3倍体で、1つ多い状態になります。まれに胚盤胞になることもありますが、染色体異常ですから赤ちゃんにはなりません。
また、加齢などに伴って染色体分配異常の場合も3PNになることがあります。正常な場合はきれいに分裂を繰り返していきますが、異常を起こし不規則な分裂になると、そこから核膜をつくってしまいます。胚盤胞になることもありますが、着床しない場合がほとんどです。もう一つ、抗セントロメア抗体(抗核抗体)が高い方も3PNになりやすいというデータがあります。抗セントロメア抗体が、細胞分裂時に染色体が均等に分かれるのを阻害するためと考えられています。
何かできる対策はあるのでしょうか?
最も多い原因である第2極体の放出不全についてですが、通院されている施設は、タイムラプスシステムをお持ちでしょうか。培養器の中に顕微鏡が内蔵されており、胚の様子を連続して観察することができるものです。非常に精密に見ることができるので、第2極体が正常に放出されたかどうかもわかります。これで顕微授精後の動態、特に第2極体の放出を熟視していただき、放出不全かどうかを確認されることをおすすめします。放出不全であれば、それは染色体異常ですから使わないようにすることです。
3PN由来の胚移植でも出産できる可能性はあるのでしょうか?
3PNでも生育する過程の中で異常なものが淘汰され、正常な細胞だけで胚盤胞になる可能性がないわけではありません。ただし、着床したとしても流産する可能性が高いでしょう。胚の染色体異常の検査を行い正常であれば戻すこともありえますが、現在の日本ではそれを行うことができないため、リスクのあることは避けたほうがよいと思います。
次回の移植プランを迷われています。先生のアドバイスをお願いします。
kokuroさんの場合、41歳という年齢からも染色体異常の確率が高いわけですから、私は、3PNの移植はおすすめしません。まず拡張胚盤胞の移植を行い、成功しなかった場合は、初期胚を選択されるのがよいでしょう。または、再度採卵を行い新たな正常受精卵を得ることをおすすめいたします。