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「着床の窓」って何？【ドクターが解説！生殖医療用語】

コラム不妊治療

「着床の窓」って何？【ドクターが解説！生殖医療用語】

ドクターが解説！生殖医療用語
「着床の窓」についてウィメンズクリニック本町の
藤野祐司先生に解説していただきました。

2018.12.20

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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。

お話を伺った先生のご紹介

藤野祐司先生（ウィメンズクリニック本町）

昭和60年4月：新千里病院（現：済生会千里病院）産婦人科
昭和63年4月：大阪市立大学医学部産婦人科助手
平成1年8月：カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学
平成3年4月：大阪市立大学医学部産婦人科講師
平成9年11月：藤野婦人科クリニック院長
平成27年4月：なかむらクリニック顧問
平成28年11月：ウィメンズクリニック本町開院
平成29年度：大阪産婦人科医会理事就任

「着床の窓」って何？

不妊治療としてARTを受けている患者様のなかに、複数回にわたり良好胚を移植しているにもかかわらず着床しないケースが見られます。4個以上の良好胚を、少なくとも3回以上の周期で移植しても着床しない場合、反復性着床障害と定義されます。要因として、子宮内膜増殖症、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープなどの子宮因子、卵管水腫や胚の染色体異常などが挙げられます。

一方で、これらに問題がないにもかかわらず着床しない原因として、胚の移植時期が子宮内膜の胚受け入れ時期に一致していない「タイミングのズレ」が考えられます。移植した胚が子宮内膜に着床し、妊娠が成立するためには、胚と胚を受け入れる子宮内膜がシンクロ（同期）している必要があります。どんなに胚の状態が整っていても、子宮内膜が胚の受け入れ可能な状態になっていなければ着床は成立しないからです。子宮内膜に胚受容能がある期間を「着床の窓」といい、その時期には個人差があることが分かってきました。

「着床の窓」は、通常、自然排卵周期であれば排卵後7日目あたり、ホルモン補充（HRT）周期であればプロゲステロン投与開始後5日目あたりになります。そして、その窓が開いている期間は数日あるといわれていますが、短い場合は１日もない方がいることもわかってきています。子宮内膜細胞は月経周期を通して形態的な変化をし、それとともにエストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモン、サイトカインや成長因子、接着因子、免疫因子、酵素など実にさまざまな因子が周囲に分泌・存在することになります。これらのバランスがとれて初めて胚を受け入れる「着床の窓」が子宮内膜に整うわけです。

では、この「着床の窓」の時期はどうやったらわかるのでしょうか。これまでは子宮内膜日付診で調べる方法が一般的でした。高温期に子宮内膜組織を採取し、着床にふさわしい組織学的な変化が生じているかを顕微鏡で調べますが、採取部位や観察者によって結果に差が出るため、その時期を的確に判断できる方法ではありませんでした。

しかし近年、分子・遺伝子レベルでの研究の発展に伴い、「着床の窓」に関連して、RNAの発現量が特異的に上昇したり減少したりする遺伝子群が発見され、解析が進められました。そして、特に子宮内膜の胚受容能に関連する236個の遺伝子が特定され、これらの遺伝子群の発現量を分析することで個々の患者様の「着床の窓の時期」を特定できる検査が誕生しました。

この検査は子宮内膜着床能（ERA®）検査といいます。この検査では、50 mg程度の子宮内膜組織からRNAを抽出し、次世代シーケンサー※によって短時間の内に「着床の窓」に関連する遺伝子群の発現量を分析することで、患者様固有の「着床の窓」の時期を正確に調べられます。

ARTにおいて、ERA検査は、胚や子宮に特に問題が認められないのにもかかわらず、胚移植しても着床に至らない患者様が対象となりますが、受精卵（胚）が極めて貴重である高年齢な患者様も対象となるものと考えます。現在、ERA検査は世界各地で行われており、ERA検査の結果に基づいて胚を適切な時期に移植することで、妊娠率が約25％向上したという臨床研究の成果を報告（2016年米国生殖医学会）しています。

※ 次世代シーケンサー：遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置で、
遺伝情報を短時間で解析することが可能になります。

出典：女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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