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卵管手術と体外受精、ベストな選択は?

コラム 不妊治療

卵管手術と体外受精、ベストな選択は?

ユーザーの悩みのなかに「医師とのコミュニケーションがうまくいかない」と困っているケースをよく見受けます。質問するためには、どんなことを知るべきか、また、どんな質問を投げかけるとよいか、セントマザー産婦人科医院の田中温先生にお聞きしました。

2018.12.20

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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。


相談者:ミーランダさん(32歳)
● 卵管or体外?
先週から新たな病院で2人目の治療を再開しました。私は32歳、①PCOS②右の卵管の詰まりがあります。タイミング数回、人工授精2回試しましたが、どちらもダメでした。
今の病院で先生に「治療法を決めよう」と言われていて、私が最初に希望していた体外受精のほかに卵管を通す手術も提案されました。
以前の病院でなかなか妊娠に至らなかったということもあり、③少しでも早く子どもが欲しく、次はなるべく妊娠の確率が高いほうを選択したいと悩んでいます。
④卵管を通す手術(卵管鏡下卵管形成術)をされた方、その後妊娠された方はいらっしゃいますか? 体外受精もお金がかかるし、どうしようかと悩み中です。

ドクターにはこう聞いてみよう!
希望している治療法と
違う治療をすすめられた場合は?
治療を受けるのはあなた自身。「私は●●をお願いしたい」「なぜその治療なんですか?」と遠慮せず自分の意見や希望を主治医に伝えましょう。その対話のなかで、この先生に治療を任せていいのか自分で決めることが大切です。

お話を伺った先生のご紹介

田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院


順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。

≫ セントマザー産婦人科医院

PCOとPCOS。名前は似ていても大きな違いが


①PCOS

PCO(多嚢胞性卵巣)とPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、ともに卵巣内に10個前後の小さな卵胞=ネックレスサインが認められる症状です。しかし、PCOSは月経異常・排卵障害があり、肥満や多毛、糖尿病などホルモン異常に伴う諸症状が見られる病気で、これがPCOとの大きな相違点です。
PCOSの治療は内服薬のクロミッド®を用いますが、まれにクロミッド®が効かない患者さんがいます。その方に注射を用いると、卵胞が急に大きくなり卵巣が腫れ、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を引き起こす可能性があります。さらに血栓症などのリスクが高まるため、当院では、腹腔鏡下で硬い卵巣の表面を焼灼して小さな穴をあける卵巣ドリリング法を推奨。1泊入院のみで保険適用の手術です。患者さんの負担が軽減されるだけでなく、6割は自然排卵し、妊娠率も高くなるというメリットがあります。


卵管が詰まれば不妊症の原因に


②右の卵管の詰まり

子宮の左右には子宮と卵巣をつなぐ「卵管」があり、この管で精子と卵子が出会い、受精し、分割しながら子宮へと移動します。ミーランダさんのように片方だけが詰まっている場合は自然妊娠の可能性は残されていますが、左右とも閉塞していれば精子と卵子が出会うことがかないません。治療を受けなければ自然妊娠が不可能とされているため、両側卵管閉塞は「絶対不妊」となります。
卵管閉塞の原因は、クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症、虫垂炎、卵管水腫の罹患があります。また原因を特定できないこともあります。感染症や子宮内膜症が原因の場合は卵管の周囲が癒着している可能性がとても高いといえます。癒着があれば、排卵した卵子を卵管へ取り込む卵管采が機能しないピックアップ障害となります。子宮卵管造影検査で卵管の閉塞を診断できますが、卵管の癒着を見つけることはできないため、発見されにくい不妊症原因の一つといわれています。


ベストな治療を選択するために、状態を正しく診断してもらいましょう


③少しでも早く子どもが欲しく

治療の選択で悩む前に、32歳でお子さんが1人いるというご自身の条件をきちんと把握していただきたい。まずは本当にPCOSなのか、それともPCOなのかを月経の状態とホルモン検査で確実に診断してもらうことが大切。もしPCOなら自然排卵、自然妊娠の可能性が高いので、すぐに体外受精というのはおすすめできません。ミーランダさんの主治医も自然妊娠を試みてから次のステップを、という方針のようなので、体外受精よりも自然妊娠が見込める卵管手術の選択がベストでしょう。
また、ご主人は精液検査をきちんと受けていますか? 1人目が生まれているのだから自分は問題ないと安心している男性は多いですが、時間が経って急激に変化している場合もありますので、もしまだならより詳しい検査を受けていただくことをおすすめします。


ベストな治療を選択するために、状態を正しく診断してもらいましょう


④卵管を通す手術(卵管鏡下卵管形成術)

卵管鏡下卵管形成術とは、カテーテルという細いチューブを卵管に挿入し、詰まった部分を開通させる治療です。超音波画像からの情報と手の感触による判断で、通過している確証を得ることは難しく、開通しても再閉塞率が高いなど限界があります。
そこで、当院では「腹腔鏡補助下卵管鏡下カテーテル法」という新しいカテーテル法を開発。子宮鏡で卵管口を確認してカテーテルを挿入して確実に卵管内を通過させ、卵管周囲に癒着を認めれば、腹腔鏡でそのまま癒着を剥がすことができます。約30分の手術と二泊三日の入院で卵管閉塞も癒着も一度で解決し、しかも保険適用です。腹腔鏡検査は不妊治療に決して外せないものですが、設備などの関係上、どこでも受けられるものではありません。腹腔鏡という選択肢を提示されたことがない患者さんもいるでしょう。しかし、知っていれば、主治医に「腹腔鏡検査をしたい」「可能な病院を紹介して」とお願いすることができます。正しい知識と情報を身につけて、ベストな治療をぜひ自らの意思で選択しましょう。


信頼関係が築ければ大抵のことは解決する
「なぜその治療をするのか疑問だ」「医師の説明が腑に落ちない」「次に進みたいのに同じ治療の繰り返しだ」と感じても、何も言えず、聞けず、モヤモヤしたまま治療を受け、結果が出ないまま時間ばかり経っていく……。不妊治療の現場では、そんな声をよく耳にします。
「解決の近道は、主治医と心が通えるようになるということ。患者さんは医師を信じ、医師は目の前の患者さんが自分の大事な人だと思って何とか妊娠させてあげたいと精一杯努力をする。一方通行ではなく、お互いが同じ方向、思いで進む関係が築ければ、どんな結果でも納得できるはずですから」と語る田中温先生。
そのためには、患者さん自身も自分の体の状態やどんな治療の選択があるのかを正しく知り、理解することが大切だとも。
「セカンドオピニオン、サードオピニオンを受けることをためらう患者さんも多いようですが、ネットに氾濫する情報に惑わされるのではなく、他の専門医の意見を聞いて本当に納得する方法を得ようとすることは今や常識です。それが原因で主治医との関係が悪くなるようなら、そもそも信頼関係が築けていないんだと、割り切ることも時には必要ですよ」

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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