クロミッドⓇとセキソビットⓇ、どちらの薬を選ぶべき?
コラム 不妊治療
クロミッドⓇとセキソビットⓇ、どちらの薬を選ぶべき?
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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。
- あやかさん(30歳)からの相談
遺残卵胞でしょうか? - タイミング療法3回目。多囊胞性卵巣症候群で不妊治療を始めてからはクロミッド®にゴナールエフ®75を追加して、その後、排卵を促す注射をして排卵させています。2回目はクロミッド®の副作用で子宮内膜が薄くなり、でも注射がしっかり効いて卵胞が育ちましたが結果は惨敗! 3回目の今回は内膜が薄くならないようにセキソビット®を飲みました。D3で13mmの卵胞があり、ゴナールエフ®75を注射しても大きさは変わらないどころか、1mm縮んでいました。注射の量を倍に増やしても、大きくても11mmのものしかなく、今回は強制リセットに。D3に見た13mmの卵胞は遺残卵胞だったのでしょうか。4回目にクロミッド®かセキソビット®、どちらを飲むか迷っています。
- まとめ
- ●セキソビット®ではなくフェマーラ®というお薬を使うのもおすすめです。
●肥満でPCOSの人は減量するだけで排卵障害が改善されることも。
排卵誘発にクロミッドⓇを使ったら子宮内膜が薄くなってしまい、セキソビットⓇに変えたら今度は卵胞がうまく育たなかったということですが。
クロミッド®は長く使うと子宮内膜が薄くなったり、頸管粘液が減るなど、副作用のほうが強く出て、かえって妊娠にマイナスに働いてしまうことがあるんですね。あやかさんのように、なかには2回程度の使用でも内膜が薄くなってしまう人もいます。
薄くなるようでは使いづらいので、3回目はクロミッド®より弱いセキソビット®という排卵誘発剤に変えたようですが、うまく反応しなかったとのこと。
最近は「クロミッド®が使えなかったらフェマーラ®を使う」という流れで治療をしている施設が多いようです。このお薬は排卵誘発作用はクロミッド®に近いけれど、内膜は薄くなりません。海外の報告ではクロミッド®より妊娠成績もよいといわれています。
非常にいいお薬ですが、一つ難点なのは国内では保険適用がないということ。ただ、保険が利かないからといってそれほど高額になるわけではありません。
ほかに治療していくうえでポイントはありますか。
PCOS(多囊胞性卵巣症候群)ということですが、クロミッド®で反応しているので排卵障害の程度は重いほうではないでしょう。気になるのは肥満ぎみ(身長160cm/体重70 kgでいらっしゃる体型)であること。PCOSの場合は体重のコントロールが非常に重要です。このような方は減量するだけで排卵が改善されることも。改善されなかったとしてもお薬への感受性が高まるので、状況は好転すると思います。
また、肥満ぎみでPCOSの方はインスリン抵抗性が原因であることも考えられるので糖尿病治療薬であるメトホルミンの併用がおすすめです。男性ホルモンの値が高いPCOSの方は、芍薬甘草湯など漢方の併用が有効でしょう。
遺残卵胞とはどんな卵胞ですか。なってしまう原因は?
その周期に排卵しきれずに残ってしまう卵胞で、PCOSではない方でも排卵誘発剤を使えばよく見られる現象です。30 mmとか40 mmくらいになってくると、かなりホルモンを出してしまっている可能性があるので反応性が落ちたり、ほかの卵胞が圧迫されて育ちにくいということがあります。13 mm程度の大きさだったら残っていても特に心配する必要はなく、自然になくなっていくでしょう。うまくいかないといろいろ気になってしまうと思いますが、PCOSは妊娠を諦めるような病気ではないので、前向きに治療を続けていただきたいですね。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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