P4の値が低く、排卵日の設定に不安がある
コラム 不妊治療
P4の値が低く、排卵日の設定に不安がある
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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。
- みもーさん(31歳)からの相談
ベストな移植日は - 無精子症で顕微授精し、現在2人目を治療中。自然周期で5日目胚盤胞の移植待ちです。排卵日を特定するため、排卵期である10日目の15時ころ、卵胞チェックで受診したところ(生理周期は24日)エコーでは排卵済みでした。子宮内膜は10mmありましたが、P4値は0.4ng/mLでした。翌日は休診日でしたので、12日目に再度、血液検査とエコーをしたところ内膜は12mm、P4は1.87ng/mLでした。エコーで排卵済みは間違いないので排卵日を10日目に設定してよいとのことでしたが、インターネットでP4の0.4 ng/mLは排卵前の数値という情報を得ました。エコーでは排卵済みでもP4の値が低ければ、数値の上がっている翌日を起算日としたほうがよいのではないでしょうか。
- まとめ
- ●P4値は個人差があるので、生理10日目だけでなく前々日から3日連続で検査を。
●着床の不成功が反復するようであれば、ERA検査も選択肢の一つです。
P4とはどのようなホルモンでしょうか。また基準値についても教えてください。
1P4というのは排卵後の卵胞からできた黄体より分泌されるプロゲステロンというホルモンで、子宮内膜に作用し、着床の準備や妊娠の維持に不可欠な存在です。月経周期で基準値は異なり排卵前は0.5ng/mlぐらいしかありませんが、一般的に1.0ng/mlを超えると排卵していると考えられます。
みもーさんはエコーの診断とP4の数値の違いに不安になられていますが。
この方はエコーで排卵済みだといわれて、その値が0.4ng/mlや0.6ng/mlだったようですが、もしかしたらそれは排卵直後でP4の数値の上昇にずれがあったのではないでしょうか。排卵すると1~2日でP4の数値は上がってきます。排卵は瞬間的ではなく、徐々に卵胞が破れて卵が出てくるので、そういう状態の時は0.5~1.0ng/mlまでの中間の値を示すことがあります。エコーによって排卵済みの診断があるならば、それは確実に排卵していると考えられますが、排卵直後だったためにP4の数値が上がっていなかったのかもしれません。どうしてもP4の数値が不安であれば、たとえば10日目だけでなく、その2日前ぐらいから超音波と採血をして、連日3日ぐらい病院に通い、数値をみてもらってはいかがでしょう。
移植は1日ずれるだけで着床の確率は変わりますか。
私の経験上ですが、受精卵の能力で半日ぐらいの時間差はカバーできると思います。患者さんによっては仕事の都合で午前中や夕方での指定がありますが、これまでは着床率に差がないように思われます。その日の朝から夕方までの半日であれば許容範囲だと思いますが、24時間ずれるとなると5日目の受精卵を6日目に戻すことになるので、受精卵の状態を考えるとあまりおすすめはできません。
先生は排卵のタイミングをどのように決めていますか。
卵胞はだいたい18mm以降になると自然周期で排卵すると予想されるので、当院では予測した前日か前々日ぐらいから自宅で採尿していただきます。朝、午後3時、就寝前、翌朝の4回ほどこまめに採尿していただき、排卵を引き起こす黄体形成ホルモンが放出されるLHサージがどの段階でプラスになっているかを確認します。たとえば朝7時の尿にプラスが出ていれば、そこから24時間から36時間には排卵しているだろうということで、その日を排卵日と決めています。
子宮内膜が着床できる期間「着床の窓」は特定できないのでしょうか。
現在ではERAⓇ(子宮内膜着床能)検査というのがあり、子宮内膜を採取して遺伝子レベルで「着床の窓」を調べる方法があります。費用がやや高額ですが、着床の不成功が反復するようであれば、選択肢の一つとして考えてみてもよいかもしれません。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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