【企業の取り組み】働く女性が不妊治療を受けやすい環境へ
コラム 不妊治療
※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。
- 企業の取り組み
- 「不妊治療休職制度」導入により
妊活への社内の理解が深まりつつあります
治療と仕事が両立できずキャリア世代が退職していた
私ども日本航空(JAL)では、2016年4月より「不妊治療休職制度」を導入しています。この制度は、体外受精と顕微授精などの高度な不妊治療を受ける社員が対象で、最大1年間、在職期間中1回を限度としています。申請には医師の診断書が必要で、休職期間中は無給となりますが、1年間仕事を離れて治療に専念することができます。利用者は、フライトなどで急な通院がむずかしい客室乗務職が中心で、現在は毎月30名ほどです。復職先は、原則として、休職取得前の職場です。
こうした制度ができたきっかけは、女性社員の一定数が不妊治療を理由に退職していたことからでした。特に30~40代という、経験豊富でそろそろ管理職が見えてくる、まさにこれから活躍が期待できる社員の退職が多かったのです。
弊社は約半数が女性ですが、女性管理職の割合が16 %とまだ少なく、ダイバーシティ(多様性)推進の一つとして女性活躍にも力を入れて取り組んでいます。女性社員にキャリアを継続して長く働き続けてもらうために、ライフイベントとキャリアを両立できる環境づくりが更に必要ということになり、不妊治療への支援がスタートしました。貴重な人財の流失を防ぐために必要な制度を整えて、困っている社員が仕事と両立できるように対応を進めてきました。
1年間治療に専念しつつ、戻れる場所がある安心感を
制度がスタートして3年足らずで、利用者のなかには現在、無事に出産され育児休職中という人もいれば、残念ながらお子さんを授からず仕事に戻った社員もいます。復職した人のなかには、その後も働きながらできる範囲で不妊治療を続ける人、1年間専念したのだからと納得して、きっぱりと治療をやめる人などさまざまです。
結果にかかわらず、利用した社員からは「仕事との両立が苦しいなかで、いったん仕事を離れて不妊治療に専念することができてよかった」「仕事を忘れて不妊治療に集中できるありがたい制度だった」という声があがっています。
また、周囲の社員からも「困っている社員がいたら、こういう制度があると言ってあげられるようになった」という報告もあり、職場全体で不妊治療をする人を支える意識が、少しずつですが芽生えてきたように感じています。
今後は、特にお子さんを授からず復職した社員について、会社としてメンタル面でフォローをするほか、引き続き制度面や環境を整えていきたいと考えています。キャリア継続のための制度として、社員の声を聞きながら、より利用しやすいものにしていきたいです。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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