高プロラクチンなのに 治療ペースが遅くて不安です
コラム 不妊治療
高プロラクチンなのに 治療ペースが遅くて不安です
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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。
- ポメラニオさん(35歳)からの相談
治療のペースに疑問 - 産婦人科の不妊外来を受診して3周期目になりますが、すべての卵胞チェックで卵胞が確認できませんでした。排卵障害を疑い、3周期目にしてホルモン検査をしましたが、結果はプロラクチンが負荷前40ng/mlくらい、負荷後230ng/mlくらいと高かったので、すぐにカバサール®なりが処方されるものと思っていました。しかし、「次回は次の生理後13日あたりに来てください。また卵胞が確認できなければ、薬を使いましょう」と言われました。プロラクチンが高いのは明らかなのに、治療の歩みが遅いのではないか< /strong>と感じています。高プロラクチンに限らず、排卵誘発剤などのお薬は必要でしょうか。治療方針に疑問を感じて転院を考えていますが、どう思われますか?
- まとめ
- ●高プロラクチン血症の各原因に合わせた治療をするだけで卵胞が育つことも。
●不妊専門の施設では、経験豊富な先生のもとで適切な時期に診察・治療が可能。
治療ペースや治療方針についてどう思われますか。一般的な産婦人科と不妊専門の施設に違いはあるでしょうか?
この方はもともと排卵不順、月経不順がおありだったのではないかと思います。初診の時点でこのような訴えがある場合、当院では卵胞チェックと並行して、原因を調べる検査も行っています。
一般的な産婦人科の不妊外来は、妊婦さんや婦人科の患者さんと同じ環境や診察ペースで行われることが多く、頻回のチェックが必要な卵胞の発育をみる場合でも、次の診察日までの間隔が長くなることがあります。また、不妊治療のお薬も保険内の限られたものだけを扱っている施設がほとんどです。一方、不妊専門の施設は、不妊に特化しているため治療スピードが速く、海外ではスタンダードに使われている保険外のお薬なども扱っていますので、多くの選択肢のなかで最適な治療を選べる利点があります。
この方は高プロラクチン血症でしょうか。また、排卵誘発剤は必要ですか?
プロラクチンというホルモンは、食事の前後や日によっても変動しやすく、1回の検査で判断するのはむずかしいのですが、明らかに数値が高いので、おそらく高プロラクチン血症だと思います。
その原因には、①明らかな原因が見つからない潜在性 ②甲状腺機能の異常 ③降圧剤、抗うつ剤、胃薬などによる薬剤性
④脳の下垂体、視床下部の異常などがあります。なかでも多いのは潜在性のもので、この場合はカバサール®を週1回から処方して様子をみます。また、潜在性のなかには甲状腺機能の異常が隠れていることがありますので、甲状腺機能も検査しておく必要があります。
明らかな原因が見つかった場合は、それぞれの原因を治療するだけでも卵胞がスムーズに発育する可能性があります。それでも発育しない場合、原因として多いのが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。もしもPCOSが疑われるようでしたら、高プロラクチン血症を改善するお薬と並行して、排卵誘発剤を使ってみるのも一つの方法です。
転院も検討されているようです。病院を選ぶポイントなど教えてください。
不妊専門の施設は、治療スピードはもちろんのこと、不妊治療の経験豊富な専門の先生が多くおられますので、妊娠の近道になると思います。また、一般の不妊治療で卵胞が育たない方には、体外受精へのシフトを適切なタイミングでご提案できます。ご年齢的にも大切な時期だと思いますので、転院はともかく早期の治療が大切です。
施設を選ぶ時は、まず各施設のサイトなどで治療実績を確認してください。そのうえで、治療は医師と患者さんの人間的なお付き合いですから、その先生を信用できるかどうかを見極めましょう。当院のように複数の医師が在籍する施設であれば、患者さんが主体で希望の診察日や先生を選べますので、ご自分に合う先生を見つけやすいと思います。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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