AMH4.28で卵巣が腫れやすい? 低刺激で頑張るしかない?
コラム 不妊治療
AMH4.28で卵巣が腫れやすい? 低刺激で頑張るしかない?
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、
誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。
ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします
※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。
- さちさん(33歳)からの相談
高AMHの卵巣刺激 - 今月初めて採卵しました。AMH4.28pg/mlと比較的高く、月経時に小さい原卵胞がたくさん見えていることや排卵後もE2が1400pg/ml近くあることなどから、クロミフェン9日間服用、ゴナールエフ®150を隔日で3日自己注射しました。8つあった卵胞のうち4つ採卵、2つは未熟卵で、残り2つは受精しました。1つは3日目に6分割で期待できず、もう1つはOHSSを懸念して今周期の移植を見送り、フラグメントはあるものの8分割で凍結。先生いわく、私は卵巣が腫れやすいので強い刺激はおすすめしない、次回も2~3個狙いがいいとのこと。私としては多少リスクが増えても強い刺激をやりたいのですが、私のような場合、やはり低刺激が一般的なのでしょうか?
- まとめ
- ●HCGの切り替えを工夫して成熟卵を6〜7個は採りましょう。
●レトロゾールなどアロマターゼ阻害薬を使ってみるのもおすすめ。
さちさんは卵巣が腫れやすいとのことですが、多囊胞性卵巣症候群なのでしょうか?
確かにこの程度の刺激で8つの卵胞が膨らんだのは、反応性は高いほうだと思いますが、多囊胞性卵巣症候群や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を心配するほどの反応ではないと思います。それよりも、クロミフェンの服用は通常5日間程度ですが、それを9日間も飲んでいるのが気になります。排卵刺激を抑えようとしてのことだと考えますが、逆にそのせいで子宮内膜への悪影響を考えて、その周期に戻せなかったのではないでしょうか。
また、4個しか採卵できず、2つは未熟卵というのは、切り替えたHCGがあまり効いてない状態なのだとも思われます。卵巣が腫れるのを避けるために、注射の代わりにGnRHアゴニストの鼻スプレーをもしも使っていたとしたら、それは問題です。
なぜなら、鼻スプレーは自然な排卵の刺激を引き起こすのですが、鼻からの吸収率の問題などもあり、きれいに排卵しない、採卵できない確率がどうしても高くなります。卵巣が本当に腫れてしまいそうな時に使うことはありますが、8つ程度ならばあまりこだわる意味はありません。それよりもたとえば注射で、5千単位で難しければ8千、1万と投与量を上げたり、注射後採卵までの時間を長くするなどといった、採卵の確率や卵子の成熟度を高くする工夫をしたほうがいいと思います。
つまり、刺激の内容が不十分だった?
そうですね。HCGを注射すると、卵子の入っている殻が割れる準備が始まるのと同時に、卵子の周りを取り囲んでいる顆粒膜細胞がヒアルロン酸をつくって細胞間が開いてきて壁から卵子が剥がれてきます。この現象がきちんと起こらないと、卵胞に針を刺しても卵子を回収できません。8個中4つしか採れないというと、その可能性がありますね。
また、注射によって、卵子の染色体の減数分裂が促され、受精のための準備ができるのですが、それができていない未熟卵が2つあったということは、卵子の準備も遅れていて卵巣に対する刺激も不十分だったといえるでしょう。
もっと強い刺激のほうがいいのでしょうか?
さちさんの反応性がいいので、強い刺激をすすめないというのはわかりますが、2~3個狙いというのはもったいないかなと思います。年齢的に卵子の異常の頻度はそれほど多くないと思いますので、今回のように受精する率や受精してもきれいに育っていく率が低かったことを考えると、もう少し採卵できる卵子の数が多くなるようにしたほうがいいと思います。HCGの切り替えを工夫することで6~7個は採れるようにしたいですね。
もし本当に多囊胞性卵巣症候群ならば、マイルドな刺激のレトロゾールなどアロマターゼ阻害薬を使ってみるのもいいかもしれません。まだ33歳ですから、成熟卵がきちんと採れれば妊娠の可能性は高いと思いますよ。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
≫ 掲載記事一覧はこちら