PCOSで着床にも問題が。子宮内膜も厚くなりません
コラム 不妊治療
PCOSで着床にも問題が。子宮内膜も厚くなりません
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※2019年5月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer」の記事です。
- ちび太さん(37歳)からの相談
4回陰性、今後が不安です - 2017年の12月に初採卵し、32個中18個受精(PCOS)。顕微授精で10個すべて胚盤胞になりました。ここまでは順調だと思ったのですが、4回の2個移植で一度だけ化学流産、あとは陰性に終わりました。4回目の前からは着床障害の病院へも通い、チラーヂンSⓇを約3カ月飲んでいます。子宮内膜が7~8mmにしかなりません。内膜を厚くするためにはどうすればいいのでしょうか? 原因がわからないので教えてください。ちなみに月経周期は60日で、期間は5日ありますが、しっかり赤い血が出るのは1、2日程度。AMHの値は8.33ng/mlです。
- まとめ
- ●メトホルミンなどの服用で卵子や受精卵の質を改善できます。
●貼り薬に加え、飲み薬や注射でホルモンを補充して子宮内膜に厚みを。
なかなか妊娠まで至らないのは、PCOS(多囊胞性卵巣症候群)の影響が大きいのでしょうか。
そうですね。ちび太さんは月経周期が60日。ほとんど排卵していないのでは。生理が起こらなければ、子宮内膜も厚くなりません。また、卵子の数はたくさん採れていますが、卵としては未熟なものが多く、1個1個のクオリティはあまりよくないことが考えられます。まず、PCOSの状態を改善し、それから体外受精に臨んだほうがいいのではないでしょうか。
どのような改善法がありますか。
PCOSの根本治療の1つに腹腔鏡下のドリリングという方法があります。これは卵巣の表面に細かい穴を開け、排卵しやすくしたり、卵胞の発育をよくする手術です。ある程度効果はありますが、手術になるのでハードルは少し高いかもしれません。
ちび太さんはAMH値が10 ng / ml 以下なので、PCOSのなかでもそれほど重症なケースではないと思います。手軽にできる治療としては飲み薬を試してみてもいいでしょう。インスリン抵抗性が高い方はメトホルミン(グリコランⓇ等)というお薬が有効です。また、正常な排卵をうながす作用があるということで、ミオイノシトールというお薬もおすすめします。海外においては以前からPCOSの方によく使われてきたお薬ですが、最近、日本人のPCOS患者にも有効性が認められたという論文が報告されました。
これらのお薬を1~2カ月間服用してから体外受精を実施すると、卵子がしっかり成熟し、受精卵の発育や質もよくなるようです。
子宮内膜はどのようにすれば厚くなるのでしょうか。
おそらく、エストロゲンのテープなどを貼ってホルモンを補充し、子宮内膜に厚みを出すようにしていると思いますが、それだけでは足らないのでは。プレマリンⓇやプラギノーバⓇ(国内未承認)など経口の卵胞ホルモン剤や注射を併用していったほうがいいと思いますね。
移植するのに望ましい子宮内膜の厚みは、当院の基準では8mm以上。ホルモン剤を併用していけば10mm以上の厚みになっていくと思いますよ。
PCOS以外で着床を妨げている原因も考えられますか。
チラーヂンSⓇを飲まれているということは甲状腺のホルモンがあまり出ていない状態なのでは。甲状腺機能の異常は着床障害と関連するといわれているので、このまま服用を続け、3カ月に1回程度、機能が保たれているかどうか甲状腺検査で確認する必要があるでしょう。
もし着床に問題があるようでしたら、ほかに着床の窓が合っているかどうかを調べるERAⓇ検査や、子宮内の炎症や乳酸菌環境を調べる検査もありますので、心配でしたら主治医の先生にご相談し、受診されてはどうでしょうか。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer
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