糖尿病の持病があっても不妊治療はできますか?
コラム 不妊治療
糖尿病の持病があっても不妊治療はできますか?
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※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。
- あいたんさん(37歳)からの相談
▶AMH0.11、糖尿病あり。不妊治療をどうする? - 2型糖尿病と双極性障害があります。夫がEDと腟内射精障害で不妊外来を受診。重度の精索静脈瘤があったものの精子は正常。私はAMHが0.11ng/mlで驚きました。ここ1年、28周期だった生理が21~32日内で変動していて、若年性更年期障害や閉経の可能性があるのかと不安に思っていました。夫は「子どもはいらない」と言いますが、私はまだ諦めきれません。ただやるなら人工授精までかなと考えていて、心身ともにつらい体外受精までやる勇気はでません。不妊治療による持病の悪化の可能性もあり、不妊治療自体が厳しいのでしょうか? ハイリスクのため大学病院を紹介されました。後悔はしたくありません。この状態だと体外受精がスタートになりますか?
- まとめ
- ●糖尿病の人が妊娠を望まれる場合は、内科医に「妊娠の許可」を得ることが大前提。
●ご夫婦ともに「子どもが欲しい」という気持ちで、不妊治療に進まれるのが理想です。
糖尿病と妊娠の関係について教えてください。
糖尿病はすい臓から出るインスリンが十分働かないために、血液中を流れる血糖が増える病気です。血糖値が高い状態のまま放置してしまうと、網膜症や腎症といった糖尿病の慢性合併症につながることがあります。また、血糖値が高くならないと症状が出ないことが多く、糖尿病になっていることに気づかない方もいらっしゃいます。
糖尿病のある方が妊娠されると、糖尿病の慢性合併症の悪化や流産、早産、巨大児の出産など、母体と赤ちゃんにさまざまな影響が出ることが知られています。糖尿病のある方が妊娠・出産を望まれる場合は、まずは内科の先生のもとで、糖尿病の合併症や血糖値の状態を確認して、「妊娠しても大丈夫ですよ」という妊娠の許可をもらうことが大前提になります。
妊娠の許可が出れば不妊治療をスタートできますが、その方の糖尿病の状態によっては不妊治療中も血糖値のコントロールが欠かせません。常に内科の先生との連携が必要になります。
あいたんさんは2型糖尿病と双極性障害の持病があり、AMHの値も0・11とのことです。不妊治療は可能でしょうか?
妊娠・出産には母体の健康が何よりも大事です。そのために内科医、生殖医、産科医が連携できる大学病院を紹介されたのでしょう。先ほどお話ししたように、糖尿病のある方が妊娠・出産を望まれる場合、母体と赤ちゃんに大きなリスクをともないます。内科の先生が「妊娠、出産、育児をしても大丈夫」と判断された後に不妊治療を進めていくべきです。
それともう一つ、ご主人が「子どもはいらない」とおっしゃっているのが気になります。不妊治療はご夫婦で一緒に取り組むことが前提です。ご相談者とご主人が「子どもが欲しい」という同じ気持ちで歩んでいかれることが望ましいと思います。ご夫婦でしっかりお話し合いをされることをおすすめします。
そのうえで不妊治療が可能になった場合ですが、AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣の予備能)が低い方が、必ずしも体外受精からスタートするわけではありません。ご主人の精子の状態は正常とありますので、人工授精でお子さんを授かる可能性はあると思います。まずは人工授精を試してみて、その間に体外受精について考えてみたり、しばらく様子を見ていくのもいいでしょう。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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