質のよい卵子の採取がうまくいかず分割も進まず、今後が見えない
コラム 不妊治療
質のよい卵子の採取がうまくいかず分割も進まず、今後が見えない
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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
- 豆子さん(35歳)からの相談
▶もう質のよい卵子はないのでしょうか? - 不妊治療を始めて3年、顕微授精へとステップアップし、低刺激で9回、高刺激で1度採卵しました。低刺激では未受精、分割停止、空胞、未成熟卵などもあり、グレード3を3回しか戻せず、着床に至りませんでした。高刺激では5個採れ、4個受精しましたが、4日めで3個分割停止、残る1個も可能性はかなり低いとのことでした。このまま何度採卵を繰り返しても、私には質のよい卵子は残っていないのでしょうか。刺激法、薬剤、採卵のタイミングなどを変えれば質のよい卵子が採れる可能性はあるのでしょうか。私はタバコやお酒を飲まず、睡眠は良好で、食事も3食食べています。ただしストレスはためやすいので、長年のストレスが胚の質を低下させたのでしょうか。
- まとめ
- ●卵巣刺激で疲れた卵巣を少し休ませ、さらに採取する卵子の数を増やす方向を。
●培養液、培養器、ひいては治療を受けている施設の変更を考えてみるのも。
これまで10回採卵されており、卵子や、胚の質の低下にお悩みです。
まず低刺激とはいえ、頻回に刺激を与え続けると卵巣の反応は必ず低下してきます。また、ゴナールエフⓇ150単位の連続投与は欧米では低刺激にあたります。通常は7~8個採れるかどうかという平均値のなか、それで5個採卵できているということは豆子さんの卵巣の反応は悪くないと思います。決して悲観することはありません。しかし4日目で分割が止まるのはいい傾向ではありません。治療を続けて少し疲弊している卵巣のためにも、卵巣刺激に関しては少し休みをとられて採卵数を8個以上、可能なら10個程度採る方法を考えられてもいいのではないでしょうか。お休み期間の目安は1~2カ月ほどでよいかと思います。
採取した卵子には一定数の染色体異常のある卵子が含まれ、これらは着床しないか流産に終わります。採卵数が増えれば当然正常染色体の胚が採れる可能性が高くなります。ゴナールエフⓇ225単位またはミックス法といわれるもので、FSH+HMGでLH(黄体形成ホルモン)またはhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を少し混ぜる方法なのですが、たとえばゴナールエフⓇ150単位+HMG製剤75単位または150単位を4~5日間連日注射をし、血中E2(卵胞ホルモン)値や卵胞発育の状況に応じて注射量を変えていきます。こうすることでゴナールエフⓇ150単位単独よりも、1回の刺激で多くの卵子が採取できると思います。また、顕微授精もされているようですが、体外受精で正常受精するのであれば豆子さんに顕微授精は必要ないと考えます。
現在の治療法では限界を感じておられますが、考えられる打開策は。
もしアンタゴニスト法で進歩を感じないようならロング法を試してみるのもいいかもしれません。注射ではなく点鼻で行うのですが多くの卵子を得られる可能性がある採取法で、全胚凍結ができれば体の負担も減るでしょう。35歳はまだ可能性があります。8個以上、できれば10個以上の卵子を採れるような治療法を模索していきましょう。
また、使用する培養液、培養器についても施設側と検討したほうがいいかもしれません。何種類も準備している施設と、そうでない施設では可能性も大きく変わってきます。不安があるようでしたら、思い切って施設を変えるのもいいのではないでしょうか。また、細胞分裂が遅いようなら、ミトコンドリアのエネルギー代謝に必要なLーカルニチンなどが含まれるサプリメントを使ってみてもいいかと思います。
また長年積み重なったストレスは活性酸素を増やし、妊娠にいい影響は与えません。まずは心も体も少し休んでリフレッシュし、なにか打ち込める趣味を楽しみながら、ご主人と改めて相談する時間を作ることも妊娠への近道なのかもしれませんよ。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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