卵管に問題があり卵巣年齢も高め。体外受精はできる?
コラム 不妊治療
卵管に問題があり卵巣年齢も高め。体外受精はできる?
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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
- 葉月さん(36歳)からの相談
▶骨盤腹膜炎と癒着と体外受精 - 卵管造影検査後に高熱と激しい腹痛が起こり、病院へ行ったら骨盤腹膜炎と診断され、通院で点滴治療をすることになったのですが、その日の夜も高熱が出て、翌日大学病院を受診。検査をしたら炎症の数値が少し下がり、熱も37度台まで下がったので、ミノマイシンⓇ錠をもらって帰宅し、今は自宅で安静にしています。5歳の時に盲腸、25歳の時に腸閉塞になり、今もひどい便秘。卵管造影の結果は左卵管閉塞、右卵管水腫ということで、MRIの検査をし、腹腔鏡手術をするということです。腹腔鏡で中がどうなっているか、処置ができるかによるらしいですが、こんな状況で体外受精はできそうですか? AMH値が0.24ng/mlと卵巣年齢が高いので、採卵も困難になるのでしょうか。
- まとめ
- ●AMHが極端に低いので、早めに採卵をすることが一番のポイント。
●水腫は着床の環境を悪くするので、体外受精前に腹腔鏡手術で処置を。
子宮卵管造影検査後に骨盤腹膜炎を起こされたそうですが、これはよくあることなのでしょうか。
体内に異物を挿入する検査なので、体の抵抗力が弱っている時は感染やアレルギーのリスクがゼロとはいえません。しかし頻度は低く、もし炎症を起こしたとしても葉月さんのように抗菌薬を服用すればじきに治まってくるでしょう。検査で右卵管に水腫が認められたとのこと。もともと炎症があり、これにより腹膜炎を引き起こしやすい状態になっていた可能性もありますね。
炎症が落ち着いたら、腹腔鏡手術を受ける予定とのことですが、手術ではどのような処置をするのですか。
右卵管水腫は卵管が分泌液などで塞がってソーセージ状になっていると考えられるので、腹腔鏡下で卵管采の先を広げて卵管が通るような施術をすると思います。
左卵管の閉塞については腹腔鏡下での手術より、カテーテルを腟から子宮内を通して治療するFT(卵管鏡下卵管形成術)のほうが適しているのでは。左右違う方法で治療しなければなりませんが、経過を見て卵管の通りがよくなれば一般不妊治療で妊娠する可能性も。腹腔鏡手術後、1、2周期ほど間を置けば不妊治療を開始することができます。
葉月さんにとって、一番重要な不妊治療のポイントは?
ホルモン数値について、FSHは8.91mIU/mlと高めですが、まだ2桁にはなっていません。問題なのはAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値で、0.24ng/mlとかなり低めです。通常、年齢による平均値は40歳で1ng/ml、45歳で0.5ng/ml程度ですから、葉月さんの値は50歳近い。閉経前くらいの数値といえます。残っている卵子の数が少ないということなので、とにかく早めに体外受精に臨んで卵子をある程度確保しておくことが一番重要なポイントですね。
多めに採れれば受精卵を凍結しておく。AMH値は卵子の質を表しているわけではないので、良い卵子が採れれば妊娠の可能性は十分あると思います。
体外受精で臨むのなら、卵管の治療はしなくてもいいのでしょうか。
確かに体外受精では卵管を使いませんが、卵管水腫があると細菌や毒素、サイトカインなども含まれる内容液が子宮まで流れてきて、その影響で着床環境が悪くなってしまいます。
体外受精に進むとしても、その前に腹腔鏡手術で溜まった液体を排出して中をきれいにする処置を行うか、不妊治療を体外受精に絞るということなら卵管を切除してしまうという選択もあるでしょう。いずれにせよ、まずは腹腔鏡手術を受けて、中の状態を一度確認しておくことをおすすめします。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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