妊娠中のリスク(2) ~婦人科系疾患を抱えた妊娠~
コラム 妊娠・出産
妊娠中のリスク(2)~婦人科系疾患を抱えた妊娠~
妊娠期間をトラブルなく過ごし安全な出産をするためには、健康な体でいることが大切。気になる症状や病気などは早めに対処して、リスクを管理していくようにしましょう。
子宮筋腫
Q:子宮筋腫があります。出産にどんな影響があるのでしょうか?(ポコさん・31歳)
筋腫の場所や大きさによって、治療や分娩の方針を決めていきます。
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、成人女性の30%に子宮筋腫があるといわれるほど、もっとも多い婦人科系疾患です。30~40代に多く、35歳を過ぎると発症率が高くなります。筋腫が小さいうちは自覚症状がないため、妊娠の検査ではじめて発見されることも多い病気です。
妊娠・出産への影響は、筋腫の場所と大きさによって違います。筋腫が大きくて胎児の発育が阻害されたり、周囲の臓器を圧迫すると腹痛などの原因になります。また筋腫が痛むと子宮収縮を促すことになり、流産や早産の原因になります。現在では妊娠中に手術を行うことは少なく、感染予防に注意しながら経過を観察します。
出産は、筋腫が産道をふさいでいなければ、経腟分娩が可能です。しかし微弱陣痛や分娩が長引くことが多くなり、帝王切開になる場合もあります。
卵巣腫瘍
9割が心配ない良性の卵巣のう腫
卵巣にできる腫瘍のうち、9割が良性の卵巣のう腫です。のう腫とは、液状の成分がたまって、こぶのように大きく腫れたものです。また妊娠初期に腫れが発見された場合、ルテインのう胞の可能性もあります。この場合は12週以降小さくなり、20週頃になくなります。
卵巣のう腫はほとんどの場合、妊娠、出産に影響がないので、経過観察になります。しかし、大きくなると卵巣を子宮や骨盤とつなぐ組織がねじれて茎捻転をおこし、激痛が襲います。そのため直径7cm以上の大きさのものは、手術をすることもあります。
腫瘍が良性か悪性かを判定するのは、妊娠中は困難です。MRI検査で悪性が強く疑われる場合、がんの進行や転移が懸念され、除去手術が検討されることもあります。
子宮内膜症
妊娠により症状が改善する病気
子宮内膜症とは、子宮内膜または子宮内膜に似た組織が子宮内腔以外の卵巣や卵管、腹膜などに発生してしまう病気です。毎月月経期になると、子宮内膜症がある場所でも内膜の剥離・出血があり、それが痛みとなって現れます。また毎月出血を繰り返すことで、その部位に炎症や癒着を起こし、月経時以外でも下腹部痛を感じることになります。
このように月経と関連がある病気なので、月経がない妊娠中は症状が改善します。また内膜が子宮の筋層内に入り込んだものは子宮腺筋症と呼ばれ、子宮筋腫とよく似た症状が現れます。大きくなることも筋腫と共通しているので、治療は筋腫に準じて考えられることが多いようです。
子宮がん
初期の子宮頸がんなら患部を切除
子宮がんには、子宮頸部にできる頸がんと、子宮内にできる体がんがあります。近年子宮体がんが急増し、頸がんと体がんの比率は約半々となっています。
子宮頸がんの原因の多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染で、初交経験が早くパートナーの数が多いほど、また出産回数が多いほどかかりやすいとされています。妊娠中に診断される子宮頸がんの多くは上皮内がんです。治療はがんの進行度、妊娠週数によって異なりますが、初期の段階なら患部を切除することになります。
病気が発見された場合は、ご主人とよく話し合い、医師と相談をして、治療方針を決めましょう。ただし母体の命を守ることが最優先となります。
子宮奇形
流産・早産の原因になることも
子宮の内部が2つに分かれていたり、子宮の上部がくびれていたり、子宮が2つあったりと、さまざまな奇形パターンがあります。自覚症状はほとんどなく、日常生活にも支障はありません。しかし変形していることで子宮内の血流に障害が起こり、流産や早産になる心配があります。また子宮の形や胎盤の位置によっては、胎盤がはがれやすくなることもあります。出産時には難産になることもあり、帝王切開も検討されます。
乳がん
早期発見なら、妊娠も継続
乳がんは発見される時期と、進行度で治療方針が変わってきます。以前は妊娠の継続が母体に悪影響を及ぼすという理由で、赤ちゃんをあきらめなくてはなりませんでしたが、現在では腫瘍を切除し、妊娠を継続することが一般的です。
妊娠中は、胎児の発達に影響がない治療を行います。化学療法や放射線治療は行えないので、本格的な治療は出産後まで待つことになります。