<妊活知識>高齢不妊ってどんな状態? 原因と治療を知りたい!
まとめ 不妊治療
<妊活知識>高齢不妊ってどんな状態? 原因と治療を知りたい!
不妊治療の成功率が下がる「高齢不妊」とは何を指すのか、そして不妊治療に臨むためのポイントについての知識をまとめました。
高齢出産という言葉はよく聞くけれど、「高齢不妊」は不妊でクリニックを受診してはじめて知ったという人も多いようです。妊活をスタートすると、現代の日本社会での「高齢」と、産婦人科での「高齢」との意味の違いにびっくりすることも珍しくはありません。
高齢不妊とはどんな状態なのか、なぜ起こるのか、そしてどんな治療の選択肢があるのかを知っておくことで、より積極的な姿勢で不妊治療に取り組めるよう準備しませんか?
気づけば対象? 高齢不妊はいつからで、どう違う?
不妊の原因には病気や体質などがあるといわれています。クリニックで検査を受けることで、どの要因が不妊を引き起こしているのかを知ることができます。
そのなかで、高齢不妊と診断された場合には、体にどんなことが起こっているのでしょうか。
卵巣年齢や卵子の質を表す指標とは
次に、高齢不妊を客観的に知るための指標について知識をつけておきたいですね。
“先日から病院で検査を受けていますが、生理6日目の採血で卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が11.2と、年齢の割に高すぎると言われ、その治療法がないとのこと。さらに、血中エストラジオール(E2)値が132と低く、排卵はしているが卵子の質はよくないと言われました。”
“FSH値が高い(卵巣の老化)ことと、E2値が低い(卵子の質の低下)ことに相関関係はありますか。
奥先生:FSHが高いから、もしくはAMH値が低値だからといって、卵子の質が悪くなることはありません。
そもそも卵子の老化とは、卵子の染色体異常の割合を指します。AMH値は、体外受精の時の採卵数や閉経年齢などを知るための指標です。AMH値が極端に低くても、自然妊娠する方はたくさんいます。FSHが高いから、AMH値が低いから、タイミング療法や人工授精の妊娠率が下がるというわけではありません。 ちなみに染色体異常は、20歳代で約40%、30歳代で約50?60%、35歳で約70%、40歳代で約80%以上の確率といわれ、年齢に比例して増加します。27歳のこの方は、仮に受精卵に染色体異常があったとしても約40%ですので、AMHが低い場合は体外受精の場合の確率は通常の20代の50%から25%と低くなるかもしれませんが、基本的に良好な受精卵が1個あればいいので、それなりの成績は出ます。もちろん、自然妊娠したとしても不思議ではありません。
ただ問題なのは、卵巣年齢が高い方は、卵巣の老化が加速度的に進むということです。そうすると、治療する期間が限られてきますので、まさに時間との戦いになります。通常、27歳の方なら、少なくとも10年くらいは治療期間があると考えられますが、卵巣年齢が高いと、その期間は短くなります。ですから、少しでも妊娠の確率が高いうちに、ステップアップを検討するなど、治療スピードの考慮が重要になります。”
“卵巣の老化に対する治療は難しく、前述のステップアップを検討します。通常、20代の方では、タイミング療法を半年してみてだめなら、人工授精を半年行うといった方法が一般的ですが、卵巣年齢が高い方は、程度に応じて、タイミング療法の期間を短くして人工授精に進んだり、もしくはタイミング療法はせずに、人工授精から始める場合もあります。さらに、患者さんの年齢が高い場合は、最初から体外受精に進むこともあります。”
"卵巣年齢をより正確に知るためには、抗ミュラー管ホルモン(AMH)と月経中の超音波の検査で、胞状卵胞の数を測るのが一番だと思います。FSHだけではわかりにくい体外受精時の採卵数や閉経年齢など、卵巣年齢が手にとるようにわかりますから。"
卵巣老化と卵子の質の低下で治療法がない それでも妊娠できますか?
「卵子の老化」で具体的にはどうなるの?
最初の段落では、『健全な卵子の消費期限が近づいている』という表現で高齢不妊の内容をご紹介しました。卵巣の老化や卵子数減少と同時に気になるのは、卵子の老化ですね。
これについてわかりやすく解説しているコラムを見てみましょう。
“年齢からくる卵子の老化ということですが、老化するとどのような状態になってしまうのでしょうか。
京野先生:本来卵子が持つべき働きやシステムが低下していきます。たとえば、細胞の中にある細胞小器官の一種であるミトコンドリア。これは生命活動に必要なエネルギーを取り出す役目を担っており、受精卵のミトコンドリアは卵子のものだけが受け継がれます。高齢になると、このミトコンドリアが均等に分散せず、局所的に集まってしまうという異常を起こすようになるんですね。また、正常な状態なら、卵子と精子が受精するとカルシウムが頻繁に放出されるのですが、その振幅も小さくなり、ポツンポツンとしか出てこなくなってしまう。染色体が分かれるシステムもうまくいかなくなり、「染色体の不分離」といって、染色体が均等に分離しなくなってきます。受精をして見た目には非常にきれいな受精卵ができたとしても、それが質のいいものだとは断定できません。受精したかどうかが重要ではなくて、その後の胚発生の状態が大事。目に見えないところ、つまり染色体などに異常があれば胚は正常に成長していきませんし、子宮に戻したとしても流産になってしまうことが多いんですね。”
年齢が上がると高度不妊治療でも成功率が下がるのには、こうした理由があったのですね。
“ということは、高齢になると残っている卵子すべてが老化してて、妊娠につながる質のいい卵子はないということになりますか?
京野先生:すべてとは言いきれません。まれなケースですが、45歳以上でも妊娠・出産される方もいるので、その時はたまたま質のいい卵子が出てきたということですね。個人差はありますが、なかには45歳でも卵子が10個以上採れる人もいます。しかし、いい卵子が出てくる確率が加齢とともにどんどん低くなっていくということは事実です。 通常、卵胞の数は50歳で0、45歳だと1000個くらい残っているといわれています。1回の排卵で500個くらいなくなることもあるので、チャンスはかなり少ないといえるでしょう。アメリカの大学での研究によると、「45歳以上で妊娠した人は、卵子が5個以上採れた人に限られる」というデータが出ています。高齢の方でもある程度卵子の数が採れれば、その中に質のいいものがある可能性を望めるかもしれません。”
"ゼロではありませんが、治療をしても妊娠する可能性は極めて低い。その現実を踏まえたうえで、治療を続けるか、やめるか、もしくは卵子提供という形を選択するか、ご夫婦でよく相談してお決めいただきたいと思います。"
高齢不妊と向き合い、治療を受けるためには
"どこまでいっても可能性は0とはいい切れません。確率は低いですね、難しいですねという話はしますが、確率が0でない限り は、なんとか頑張ってみたいという患者さんの気持ちに寄り添って、当院でもできる限りのことはしたいと思っています。"
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いかがでしたか? 年齢によっては、まずは少しでも早くクリニックで相談することが妊娠につながりやすいということですね。