2016年6月12日に行われたジネコ 妊活セミナーより
2016年6月12日(日)、神戸市内で「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、カウンセリングルームwith代表の堀田敬子さんに「妊活中の心の整え方」について、第2部では、徐クリニックARTセンター院長の徐東舜先生に「不妊治療の最前線 不妊治療の実際」についてお話いただきました。今回は、第2部の内容の一部をお届けします。
不妊治療の最前線 不妊治療の実際
卵巣は老化しても、子宮は老化しない!?
月経がある時期はすべて妊娠が可能と思われている方がいますが、一般的な最終出産は40歳前後。閉経する約10年前に妊娠・出産は終了します。もともと卵巣には、数百万個の卵子がありますが、年齢とともに急速に減少し、2000個程度で閉経するといわれています。年齢とともに妊娠しにくくなるのは、卵巣内の卵子が減少するだけでなく、妊娠可能な卵子の割合が低下することも大きな理由です。
たとえば、20歳代の卵巣には妊娠可能な卵子がたくさんあり、時に妊娠しにくい卵子が含まれます。30代半ばになると卵巣の卵子が減り、かわりに妊娠しにくい卵子が増えます。40歳代では妊娠しない卵子がほとんどで、まれに妊娠可能な卵子があることが一般的です。
ただ、卵巣の老化はあっても子宮自体は老化しません。仮にドナー卵子(若い女性から提供される卵子)を使って体外受精を行うと、50代、60代でも妊娠は可能です。
【年齢とともに変化する卵巣内の卵子】
提供 徐クリニックARTセンター
【自己卵子及びドナー卵子使用での年齢別妊娠率(移植あたり)】
提供 徐クリニックARTセンター
排卵日前のタイミングを増やして妊娠率UP
病院で排卵日を確認し、排卵日の近くでのみ性交渉する方がいらっしゃいます。このようなケースでは、せっかくの性交渉のチャンスが減ってしまいます。月経周期が一定している方の場合、月経の2週間前が排卵日の目安。排卵日を0日とすると、排卵の2日前が妊娠のピークになります。このピークの前後をあわせた約6日間が妊娠可能な時期です。この期間に集中的に性交渉することをおすすめします。
排卵日を1日でも過ぎると妊娠率は0になるため、排卵日前にできるだけ多く性交渉するのがポイントです。性交回数が多いと妊娠しにくくなると心配される方もいますが、1回よりは2回、2回よりは3回と、とにかく妊娠可能な時期にたくさん性交渉すること。当院では、とくに自然妊娠の場合、最低2~3回行うのがよいと考えています。
ちなみにアメリカ産婦人科学会では、35歳以上で6カ月経っても妊娠しない方、さらに40歳以上の方は、すみやかに検査や治療の開始をすすめています。
【妊娠可能期間(排卵日を含め手前6日間)の性交回数と妊娠率】
提供 徐クリニックARTセンター
※妊娠可能期間である6日間の間に2~3回以上のタイミングをもつと妊娠しやすい
体外受精は30代後半〜40代にも有効な治療
不妊の原因はさまざまですが、年齢とともに不妊率は確実に上がっていきます。とくに30代後半の3人に1人は、実際に不妊という報告があります。
一般不妊治療による妊娠率は、30代後半から急速に低下し、排卵誘発剤を使用した場合でも10%以下になっています。人工授精での妊娠を期待される方もいますが、この治療回数の目安は約4回。出生率は35歳未満で30%、40歳以上では10%未満と、累積しても30代後半~40代に有効な治療とはいえません。
一方で体外受精は、人工授精にくらべて30代後半~40代には有効な治療です。当院では、調節卵巣刺激→採卵→受精(体外受精・顕微受精)→ホルモン補充の流れで体外受精を行っています。ただし、有効な治療とはいえ、成功のためには(1)年齢(2)受精卵の質(3)採卵数の3つがポイントになります。少しでも若い年齢で体外受精を行えば、出生率は高くなります。当院では、40歳未満でAMHが高い場合、1回でたくさんの卵子を採卵し、胚凍結して、1周期休憩。翌月に凍結融解胚移植という方針をとっています。多数個採卵では、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を心配する声もありますが、GnRHアゴニストを使用することでリスクを抑制することができます。移植ごとの流産リスク、質の高い卵子を効率的に採卵するといった観点からみると、多数個採卵による凍結融解胚移植が有効です。
日本は海外に比べて、妊娠・出産に対する知識が低く、不妊治療の開始時期が非常に遅いことも問題です。治療時期は早ければ早いほど、ご希望に添える結果が得られると思います。
徐クリニック ARTセンター 徐 東舜先生
大阪大学医学部卒業。大阪大学病院、愛染橋病院、大阪府立成人病センター、西宮市立中央病院(医長)勤務を経て、平成12年2月に西宮甲東園で徐クリニック開業。