不妊を乗り越え、子宝に恵まれたのは、食事を一から見直した体質改善のおかげ。いま悩んでいる人に「食」の大切さを伝えたい。
流産後に不妊治療 6年間子どもに恵まれず
「私の体験をジネコの読者にお伝えしたくて」と、ジネコに連絡をくださった讃岐理華さん(44歳)。お話をうかがってみると、すでに3人のお子さんのママであり、取材時翌月にはなんと4人目を出産予定とのこと。
もともと看護師をしていた理華さんがご主人と出会い、結婚したのは25歳の時。すぐに妊娠したものの、夜勤明けの検診で赤ちゃんの心拍がすでに止まっていることが発覚。気づかないうちに赤ちゃんの成長が止まる繋留流産でした。しかし、「結婚したら、子どもを」という思いが強かった理華さんは、失意のどん底でもあきらめませんでした。すぐに医療機関で治療を始めます。「ほんの少しでも妊娠を経験したことで、ますます赤ちゃんが欲しいと思うようになりました。焦る気持ちが強かったと思います」
さっそくタイミング、人工授精を試みますが妊娠の兆候はありません。実は、20代から下垂体腺腫による高プロラクチン血症があり、腺腫を切除した後も排卵障害が続いていました。そこで、片道2時間以上かかる不妊治療専門病院に転院し、体外受精にステップアップします。しかし、「当時は、一度に卵子3つまで戻すことができたのですが、1回に採卵できるのはよくてグレードの低い卵子1個。先生に卵子が3つできるまで待ちましょうと言われるものの、いい卵子は育ちませんでした」。治療をスタートして5年間、子宝に恵まれることはありませんでした。一人っ子の理華さんは「両親に孫を抱かせてあげたい」というプレッシャーも重なり、「治療中は子どもができないことにイライラし、とにかくマイナス志向でした。運転中に前列の車のガラスに貼られた『赤ちゃんが乗っています』のステッカーを目にするだけでも落ち込みました」と振り返ります。
自分が食べたもので 自分の身体はできている
つらい不妊治療から5年が経った頃、理華さんはあることに気づきます。「看護師として勉強してきた私にとって医学は絶対的でした。病院にかかれば、子どもは絶対に授かれると信じていたので、先生に言われるまま薬を飲み、注射を打ち、治療を行ってきました。それでも妊娠できないのはなぜなんだろう? そんなことを考えていたら、そもそも自分の身体は自分が食べたものできているんだって、気づいたんです。もしかしたら食べるものを変えることで、身体が変わるかもしれないと思いました」
こうして新たなチャレンジがはじまります。まずは、栄養学を独学で勉強し、食事の方法を一から見直すことにしました。仕事で疲れて食事をつくるのが面倒な日も、スーパーの便利なお惣菜に頼るのをやめ、できるだけ安心・安全な食材を選んですべて手づくり。さらに、それまでカレーやハンバーグなど洋食中心だったメニューを和食に変え、「まごわやさしい」品目を意識して摂り入れるようにしました。この食事を続けるうちに少しずつ気持ちが明るくなり、「私は妊娠できる」と前向きな気持ちになれたといいます。すると1年後にまさかの自然妊娠。2年後に2人目、3人目をさらに3年後に授かり、30代で3人のお子さんに恵まれました。
「離婚」と「再婚」 そして44歳で妊娠
その後、理華さんはご主人と離婚。3人のお子さんを引き取り、シングルマザーとして再出発します。もともと夫婦で経営していた鍼灸院のオーナーとして一家を支えながらの子育て…。そんな多忙な毎日でも、会社の業績を上げてきた理華さん。新たに鍼灸院を立ち上げるため、打ち合わせに出かけた会社で今のご主人に出会います。「ふたりとも同い歳でバツイチ。すぐに意気投合しました(笑)」。子どもが好きなご主人に、理華さんの3人のお子さんも自然になつき、昨年5月にめでたく再婚します。
3人のお孫さんを気づかう理華さんのご両親の強い希望もあり、今のご主人との子どもは考えないつもりでしたが、「彼には子どもがいないし、お義母様にも孫がいないので、できることなら彼の子どもを産んであげたいと密かに思っていました」。ずっと続けてきた体質改善で3人の子どもを自然妊娠した自負はあるものの、確実に妊娠率が低下していく40代…。まずは、独身生活で外食が多かったご主人の食事を見直すことからはじめ、理華さんも体を温める食品選びや代謝を上げる水分摂取、入浴など、これまでの習慣をより丁寧におこないました。すると44歳で自然妊娠! 「食事で体質が変化してくるのは、およそ3カ月後といわれています。夫の体質が変わり始めた、まさにそのタイミングでした」。ただ、彼女のご両親には妊娠4カ月まで打ち明けられず…。「両親との約束を破ってしまったうえに、これ以上心配をかけたくなかったので、羊水検査をして赤ちゃんの健康を確認してからきちんと報告しました。いまは3人の子どもと一緒に、赤ちゃんの誕生を楽しみにしてくれています」
自分の経験を伝え 妊活中の人に勇気を
「戸籍上は44歳。でも心と体は20代」と、ほがらかに笑う理華さん。44歳の妊娠を機に、彼女の鍼灸院を訪れる不妊で悩む患者さんに大きな勇気を与えています。自身の経験と食事による体質改善を患者さんに伝えることで、「44歳でも自然妊娠できたのだから、きっと私も妊娠できると前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいですね」
理華さんが妊活中のジネコ読者に伝えたいこと。それは「自分の身体は自分が食べたものでできているということです。すごく当たり前のことなんですが、実際に体づくりにふさわしい食事ができている人は少ない気がします。最近は共働きのご家庭も多いので、便利な食品に頼りたくなる気持ちはとてもよくわかります。でも、食材選びから見直して、一から食事を手作りすることで、妊娠できる身体に変われることを知ってほしい」。仕事と子育てに忙しい理華さん自身も、たとえ就寝が遅くても必ず朝5時に起床し、5つのお弁当を手作りしているそう。「体は急に変わらないので、小さなことをひとつずつ継続することが体づくりにつながると思っています」
これからも「自分が体験してきたことを、たくさんの人に伝えたい」という理華さん。先日、無事に自然分娩で元気な赤ちゃんを出産されたとの報告がありました!
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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