「受精ゼロ」は多嚢胞性卵巣が原因?それとも…?
専門医Q&A 不妊治療
「受精ゼロ」は多嚢胞性卵巣が原因?それとも…?
2017/4/25 石川 聖子先生(銀座レディースクリニック院長)
相談者:夏恋さん(29歳)
多嚢胞性卵巣です(AMH値は4)。28歳の時に自然妊娠し、5週くらいで流産。その後、1年間タイミングをとり続けてもまったく妊娠できず。卵管はきれいに通っており、主人の精子も元気いっぱい。それでも妊娠しないので、思いきって体外受精にトライして、ロング法で採卵しました。12個の卵が採れましたが、6個未熟卵で、6個が成熟卵。医師からは「未熟卵が多い」といわれ、結果、受精はゼロですごくショックです。
自然妊娠の経験があって、精子の数字がすごく良くても受精障害ということはあり得ますか? それとも卵側に何か問題がある? 多嚢胞性卵巣が関係していることも考えられますか?
なかなか受精しないのは多嚢胞性卵巣が原因でしょうか?
まず、多嚢胞性卵巣のせいではないかという点ですが、このかたの経緯を見ると、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)だとしても、それほど重症ではないと思われます。
通常、PCOSだと排卵誘発法なしでは自然妊娠しづらいのですが、タイミング法を1年間続けていらっしゃいます。また、PCOSのかたはAMH値が高い傾向がありますが、4ng/mlという数値はそれほど高くなく、29歳なら平均値くらいです。
排卵誘発法については、PCOSのかたの場合、この年齢でロング法だと卵子が20〜40個採れてしまうことがありますが、夏恋さんは12個なので、そこから考えてもPCOSは軽度と推測できます。
採卵の結果、未熟卵の数が多かったのはなぜですか?
あくまでも推測ですが、採れた卵子に未熟卵が多いというのは、誘発の過程でOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を避けるために、早めの判断でトリガーであるHCGの注射を打ってしまったことも要因として考えられます。多くの卵胞が成熟しきっていない内に採卵を迎えてしまったということですね。
どのような対策が考えられますか?
PCOS女性がロング法で排卵誘発を行うと、OHSSの原因となるHCG注射を用いなければなりませんので、ロング法ではなくGnRHアンタゴニスト法で排卵誘発を行うことでHCG注射を用いることなく、結果的に成熟卵の割合をふやすことも可能だと思われます。しかし、採取したうち半分は成熟卵で、その成熟した卵子を使っても受精しなかったということは、もしかしたら受精障害があるのかもしれません。精子の状態が良ければ、卵子側に問題がある可能性もゼロではないでしょう。
受精障害を疑う場合の対策として、次回は体外受精と顕微授精を半々ずつ、スプリットという形で試してみてはいかがでしょうか。顕微授精は成熟卵でしかできないので、成熟卵の割合をもっと増やすために排卵誘発法を変えて採卵するのも1つの方法だと思います。