不正出血は黄体機能不全?排卵しているか、不安に
北村 誠司 先生(荻窪病院 虹クリニック)
相談者:コッシーさん(34歳)
人工授精のタイミングと精子の寿命について
数年前から生理の1週間ほど前よりダラダラと少量の出血があり、その後通常の生理が5日ほど続く状態に。昨年婦人科を受診したところ、骨盤子宮内膜症、両側チョコレート嚢胞が見つかり、腹腔鏡下にて両側嚢胞切除と骨盤内癒着剥離をしました。以前にも子宮内膜ポリープの掻把手術を受けましたが、手術時の確認で再発はありませんでした。術後にタイミング療法を開始しようとしたところ、エコーでは卵胞の成長が確認できませんでした。基礎体温は不安定ですが二相性なので、担当医には「排卵はしている」と言われましたが不安です。また、黄体機能不全による不正出血ならば基礎体温が低い時に起こると思うのですが、高温期で不正出血があるのはおかしいですか。
基礎体温は二相性ですが、高温期中に不正出血があります。その原因は? また、このような状態でも排卵はしていますか?
高温期に不正出血があるという患者さんは、珍しくありません。やはり、原因としては黄体機能不全を疑うべきでしょう。子宮内膜症、チョコレート嚢胞、子宮内膜ポリープなどの病歴があるとのことで、これらも不正出血の原因にはなりますが、出血が高温期だけとのことですから、病歴の影響とは思えません。
周期にやや乱れはあるようですが、基礎体温が二相性になっているとのことですから、卵胞は育っていると考えていいでしょう。実際に排卵しているかどうかはエコーなどで確認しないとわかりませんし、もしかしたらLUF(黄体化未破裂卵胞)も含まれている可能性がありますが、担当医のおっしゃるとおり排卵はしていると思われます。
黄体機能不全の治療法は?
黄体機能不全の対策としては、クロミッド®を服用したり、排卵誘発の注射を取り入れたりで黄体機能を促す、また排卵を迎える時点でエストロゲンを増やすといった処方がスタンダードです。コッシーさんはすでにクロミッド®、HCGを使用されているとのことですので、適正な治療が行われていると考えてよいでしょう。当院では、デュファストン®といった薬を用いる場合もあります。ルトラール®を用いるクリニックもあるかもしれません。どちらも黄体ホルモン製剤で、月経周期が異常な場合などに用いられます。
黄体ホルモン(プロゲステロン)を調べる検査としては、最近では黄体期での血液検査が一般的ですが、子宮内膜日付診(ひづけしん)という古くからの検査方法もあります。あまり行われなくなりましたが、高温期の中間あたりに子宮内膜の一部を採取して、細胞の育ち具合を顕微鏡で観る検査です。細い耳かきのような器具を直接子宮に挿入して内膜の組織を採ります。現在通っていらっしゃるクリニックで行えるかは確認が必要ですが、こういった検査も目安になることと思います。
今後はどうすべきですか?
もうすでに検査を済ませていることとは思いますが、高温期の子宮内膜の厚み、黄体ホルモンの数値などは、こまめにチェックして経過を見たほうがいいかもしれません。また、念のため子宮体がんの検査も受けておくと安心です。
出血が続くのはさぞかしご不安でしょうし、大変なことと思います。また、妊娠しにくい状況になるのも確かです。
しかし、治療年数もまだ1年ですし、ご主人の精子にも異常がないようですので、今の段階ではまだタイミング療法でも問題ないと思います。残念ながら黄体機能不全には「こうすればすぐに治る」という治療法はありません。ひと口に黄体機能不全といっても症状には個人差が大きく、ケースバイケースでの処置になりますので、担当医とよく相談して治療を続けてください。
北村先生より まとめ
●周期に乱れがあっても、基礎体温が二相性なら排卵している可能性は高い
●黄体機能不全では、高温期に不正出血があるケースも珍しくない
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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