子宮内膜症があっても自然妊娠できる?
2017/5/22 中村 嘉宏(なかむらレディースクリニック 院長)
相談者:たぬぽんさん(主婦 / ?歳)
3年前に子宮内膜症(チョコレート嚢胞6cm)と診断され、ずーっと頑張っていますが、その兆候なし…。同じ病院で3回も担当医が変わり、今回引っ越しで転院するので4人目となりますが、3人目の先生に「あなたの場合、体外受精が手っ取り早いでしょう」と言われ、かなりショックを受けました。
調べてみると30代前半なら受精率も高いようですが、35歳以降になるとかなり妊娠の確率が落ちてくるんですよね?夫からは「(自然妊娠の)可能性があるならそっちがいい」と言われるけど、年齢的にあんまりリミットないような…。体外受精はお金もかかるし、可能性があるのなら自然妊娠がいいなぁとも思うし、でもこのまま妊娠できなかったら…と思うと焦ってしまいます。
妊娠しやすい食べ物や飲み物を試したり、ジンクスの物を部屋に置いたりしましたが、有名なKクリニックの先生の著書の中には、妊娠しやすい食べ物や運動療法はあてにならない。ただ精子と卵子が出会わないだけ…と書かれていました。
とにかく…生理が来るたび落ち込んでいます。だから、子宮内膜症で自然妊娠した方から、励ましてもらえたら、また前向きに頑張れるかな?/div>
子宮内膜症があっても自然妊娠は可能でしょうか?
この方はショックを受けられたようですが、3人目の先生がおっしゃる通り、体外受精が一番いいと思います。30代半ばの方と推察しますが、この年齢で6cmの嚢胞の手術をすれば卵巣機能はかなり低下します。痛みなどの症状がきつい場合や、悪性が疑われる場合でなければ、手術より体外受精を優先します。
自然妊娠をご希望とのことですが、自然妊娠の可能性は低いと思います。チョコレート嚢腫が6cmくらいあれば、卵管が癒着し、卵子をピックアップできない可能性が高いと思います。3年前から一般不妊治療をして妊娠しないのはそのためです。まして30代半ばになれば、年々妊娠率は低下しますし、内膜症も進行します。厳しいようですが手段を選んでいる場合ではないと思います。たしかに体外受精は費用がかかるイメージがありますが、助成制度を活用すれば、それほどの負担にならずにすみます。
自然妊娠への思いが強い方のようです。
この方も認識されている通り、35歳以降の妊娠率はどんどん低下する一方です。また、
Kクリニックの先生がおっしゃる「妊娠しやすい食べ物や運動療法はあてにならない」というのも本当だと思います。例えばザクロを食べても食べなくても、子宝の湯に浸かっても浸からなくても、精子と卵子がただ出会って受精し着床すれば妊娠は成立する。とてもシンプルなお話です。
また、自然妊娠の可能性が低いのに、同じような境遇で妊娠できた人に励ましてもらい前向きになれたとしても、それでこの方が自然妊娠できるわけではありません。人の身体には個人差があり、また、子宮内膜症の程度も人それぞれです。
相談内容を拝見すると、この方がショックを受けた最大の原因は、体外受精に対する心理的な抵抗でしょう。この抵抗を克服して、一刻も早く体外受精に進んでいただきたいと思います。きっと道はひらけます。
中村先生より まとめ
チョコレート嚢胞は、進行すれば癒着や破裂、卵巣がんの可能性があり、30代半ばの手術では卵巣機能の低下も。
さらに35歳以降は妊娠率も低下する一方ですから、早めの体外受精をおすすめします。助成金制度も上手に活用しましょう。