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移植後の内服薬の説明書に疑問。薬は飲み続けるべき?

コラム 不妊治療

移植後の内服薬の説明書に疑問。薬は飲み続けるべき?

「先日、移植後の内服薬の説明書を確認したところ、「自分で判断せず、薬は使い続けてください。自然妊娠と異なり、薬をやめてしまうと妊娠していてもすぐに流産してしまいます」と記載がありました。」

2017.8.18

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移植後の内服薬の説明書に疑問。薬は飲み続けるべき?


蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)







さやかさん(35歳)


移植後の投薬指示について


今回初めての体外受精です。現在、アンタゴニスト法での採卵周期が終わり、移植期に入りました。今のところ男性不妊が原因とされています。先日、移植後の内服薬の説明書を確認したところ、「自分で判断せず、薬は使い続けてください。自然妊娠と異なり、薬をやめてしまうと妊娠していてもすぐに流産してしまいます」と記載がありました。今まで基礎体温やホルモン値、子宮内膜の厚さなど、さまざまな検査で数値の異常を指摘されたことはありません。自然周期との違いは採卵までだと認識していたので、説明書を読み驚きました。自然妊娠との仕組みがどう異なるかを教えていただきたいです。



 



これまでホルモン値に異常はなくても、内服薬は飲み続けたほうがいいのでしょうか。


アンタゴニスト法で卵巣刺激を行い採卵・体外受精、そのまま胚移植(新鮮胚移植)をされたのでしょうか。それとも、いったん胚凍結を行い、別周期にホルモン(エストロゲン)を補充して子宮内膜を調整し、内膜が厚くなったところで黄体ホルモン剤の内服薬を投与して胚移植(凍結融解胚移植)されたのでしょうか。ご質問を読む限りでは前者(新鮮胚移植)と推測しますが、結論から言えば、どちらもホルモン剤の投与が必要です。

新鮮胚移植周期では、アンタゴニスト法を用いて卵巣刺激を行い複数の卵子を採取した場合、その後、内服薬を投与しなければ黄体機能不全になりやすくなります。

卵胞は、成熟してエストロゲンが増えることにより、脳の下垂体からLHが分泌されるLHサージという現象によって排卵を起こします。体外受精の際、GnRHアゴニストというスプレーや注射を使うと、LHサージを起こさせ採卵することが可能で、卵巣が腫れるなどの採卵時の卵巣過剰刺激症候群の重症化を防ぐことはできるのですが、LHサージが短期間なので、黄体機能不全を起こす可能性が高まります。
 卵子がたくさんできると採卵後に多くの黄体ができるため黄体ホルモンが分泌されます。この時、一時的に黄体ホルモン値は上がりますが、ネガティブフィードバックという現象で、自身によってLHの分泌を抑制してしまうことがあります。このネガティブフィードバックによっても黄体機能不全を引き起こすことがあります。

またもう一つ、採卵時には卵胞を吸引することで、黄体となる卵胞内の顆粒膜細胞が多く剝がされてしまいます。プロゲステロンは主に顆粒膜細胞から分泌されるため、黄体機能不全になりやすいのです。


自然周期や自然妊娠でない場合、やはり黄体ホルモン剤は必要ということですね。


アンタゴニスト法では、採卵後、下垂体からのLHの分泌が低下することでも黄体機能不全になりやすく、このため、自然妊娠や自然周期採卵と異なり、ホルモン剤の投与(プロゲステロン、場合によってはエストロゲンも追加投与)が必要となります。

凍結胚を融解し胚移植される周期では、一般にホルモン剤(エストロゲン)を投与して子宮内膜を厚くさせ、子宮内膜が7ー8㎜以上となれば黄体ホルモン剤(経腟剤または経口剤)を投与して子宮内膜を着床しやすいように変化させてから胚移植します。通常、この方法では排卵しないため、卵巣内で黄体がつくられません。自然妊娠した場合、初期の妊娠を維持するために妊娠黄体が必要となり、ここからプロゲステロンとエストロゲンが産生されます。ホルモン補充による子宮内膜を調整する場合は妊娠黄体がないので、胎盤からエストロゲン、プロゲステロンが分泌されてくる妊娠8〜9週頃まではエストロゲン製剤と黄体ホルモン剤の投与を続けたほうがよいでしょう。途中で投与を中断すれば、妊娠を維持するためのプロゲステロン、エストロゲンがなくなり、流産する場合もあります。




蔵本先生より まとめ


●ホルモン補充周期で凍結胚移植を行う場合は、黄体機能不全になりやすい。
●妊娠の途中(妊娠8〜9週頃)までは投与を続けたほうがよいでしょう。



 



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お話を伺った先生のご紹介





蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)


山口県柳井市出身。1979年久留米大学医学部卒業。1985年山口大学大学院修了。医学博士。1995年6月蔵本ウイメンズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。山口大学非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授。今年6月、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の理事長に就任。「これからの生殖医療においてますます必要とされる機関だと思うので、皆さんの協力をいただきながら、取り組んでいきたいですね」と蔵本先生。


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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn
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