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2度の初期流産。 このまま胚移植を続けるか、 若いうちに採卵するべき?

コラム 不妊治療

2度の初期流産。 このまま胚移植を続けるか、 若いうちに採卵するべき?

2018.2.26

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ちゅらさん(40歳)からの相談


相談内容


2月に採卵した凍結胚が8個あります。3日目胚2個、5日目胚盤胞2個、6日目胚盤胞4個、すべて顕微授精です。4月の二段階胚移植では、胎嚢を確認できず初期流産。6月の胚盤胞移植(2個)では8週で心拍が停止し、掻爬手術をしました(不育症検査で第12因子、プロテインS低下のためヘパリンを使用しています)。まだ凍結胚が4個残っていますが、残りの凍結胚も染色体異常の可能性は高いでしょうか。担当医は「凍結胚を使いきりましょう」とおっしゃっていましたが、もうつらい思いをしたくありません。少しでも若いうちに採卵をしたほうがよいのか迷っています。

 


これまでの治療データ


●検査・治療歴
不妊治療歴5年。体外受精、顕微授精、不育症検査にて血液凝固系異常あり

●不妊の原因となる病名
卵管水腫、腹膜炎による卵管癒着全

●精子データ
異常なし

●漢方・サプリメントの使用
なし



ちゅらさんは2回流産を繰り返しています。先生のご意見をお聞かせください。


お気持ちとしてはつらいと思います。流産の原因は染色体異常がある場合が60~70%、そのほかの原因がある場合が30~40%とされています。とくに染色体異常の確率は母体の年齢とともに上がり、40歳以上では80%以上になります。ちゅらさんも染色体異常が2回続いている可能性は否定できないですね。また、染色体異常と不育症が重なっていることも考えられます。このような方に対して、当院では絨毛染色体検査をおすすめしています。この検査では流死産後に得られる検体から胎盤絨毛組織や胎盤組織を採取・培養し、染色体の数や構造の異常がないかを調べて、染色体異常か不育症かを判別することができます。流産を2回以上繰り返していても絨毛染色体検査で染色体異常が見つかれば、たまたま染色体異常の受精卵が着床しただけで、次に染色体異常でない受精卵に出会えれば妊娠が継続できる可能性はあります。一方で染色体が正常であれば、不育症が原因ということになり、それに適した治療が必要になります。
ちゅらさんの場合は染色体異常か不育症かどちらかわかりませんが、不育症検査で第12因子とプロテインSが低下していますので、今後、胚移植をされる場合は、血液の循環を良くするアスピリンとヘパリンで同時に治療する必要があります。現在はヘパリン単独で治療をされているようですが、アスピリンとヘパリンそれぞれ単独で使用するよりも、それらを同時に併用するほうがより有効とされています。
また、2回連続で流産をしていても卵子は個々に違います。同じ周期に採卵した受精卵が連続して染色体異常だったとしても、ほかの受精卵もすべて染色体異常かどうかはわかりませんし、染色体異常の確率が高くなるということもありません。


このまま胚移植を続けるか? または、先に採卵しておいたほうがよいのでしょうか?


40歳以上の方については、意見が分かれるところだと思います。治療の基本原則は、患者様の体の負担が少ない方法を選択するということです。残りの受精卵が1〜2個しかないということであれば話は別ですが、この方は4つ残っています。胚移植は凍結融解胚移植でも、自然周期移植でも子宮内膜を着床しやすい環境に整えるだけですので、胚移植を続けるほうが体への負担は少ないでしょう。ただ、どのようなグレードの凍結胚が残っているのかがわかりません。基本的に胚移植を続ける場合は、受精卵のグレードが良いことが前提になります。たとえば、6日目の胚盤胞の妊娠率は25〜30%で、5日目の胚盤胞に比べると妊娠率は約半分になります。もしもグレードが良い5日目の胚盤胞などが残っていれば、胚移植を続けられるといいと思います。
一方で、6日目の胚盤胞で、しかもグレードが良くないということであれば、この方もおっしゃるように、年齢が少しでも若いうちにグレードの良い卵子を採卵するという選択もあると思います。しかし、排卵誘発剤による体への負担をはじめ、採卵時の出血や細菌感染のリスクもありますのでケースバイケースです。


40歳以上の方には、胚盤胞移植と分割胚移植どちらがいいのでしょうか?


良い受精卵を選定するという意味では、体外環境で受精卵の成長スピードが早く、高い着床率が期待できる胚盤胞のほうがいいのですが、40歳以上の方の受精卵は体外環境でのストレスに弱く体外での長期培養に適していないという説があり、初期胚で早く体内に戻すほうがよいとされています。分割胚から胚盤胞の成長過程で理想的なのは、1番が卵管内の自然環境で、2番目が体外環境です。
ちゅらさんはおそらく二段階胚移植をされているのだと思います。二段階胚移植は、同じ周期に2〜3日目の初期胚と5〜6日目の胚盤胞を二段階のタイミングに分けて移植する方法ですが、2つメリットがあります。1つ目は、初期胚と胚盤胞の2つの培養環境が異なる胚移植を同時に試せることです。先ほどお話ししたように、分割胚から胚盤胞まで卵管の中で育つのが一番良いとされていますので、グレードの低い受精卵が体外よりもいい環境で胚盤胞まで育ち、卵管から子宮に戻って着床することがあるかもしれません。2つ目は胚盤胞の着床率を上げる可能性です。1回目に移植した初期胚が子宮内膜を刺激することによって、次の胚盤胞が着床しやすくなる効果もあるといわれています。この方法は着床障害がある40代の方にも適しており、ちゅらさんのような方に合っていると思います。





Doctor’s advice


●残りの受精卵も染色体異常とは限りません。
●体の負担を考えると胚移植の継続がベター。
●二段階胚移植は着床障害の40代にもおすすめ。



 





先生から


移植を続けるか、採卵するかは40代では意見が分かれるところ。
体への負担などを考慮して検討を



 


 


お話を伺った先生のご紹介

奥 裕嗣 先生(レディースクリニック北浜)


1992 年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメリカに留学。Diamond Institute for Infertility and Menopause にて体外受精、顕微授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、IVF 大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、2010 年レディースクリニック北浜を開院。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。先生が通勤リュックに入れて、いつも持ち歩いているのは趣味のカメラ。かつては、この季節になると京都の醍醐寺や原谷苑のしだれ桜の撮影に行かれたそう。「祗園新橋の夜桜もおすすめ。近くにある割烹『さか本』からの眺めも最高ですよ」。

≫ レディースクリニック北浜

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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