人工授精へステップアップ。検査の費用に納得できません
コラム 不妊治療
人工授精へステップアップ。検査の費用に納得できません
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、
誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。
ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします。
※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。
- さおさん(36歳)からの相談
人工授精前の検査について - タイミング法を1年続けましたが妊娠せず、このたび人工授精にステップアップしようと夫婦で決めました。病院ではこれまでにひととおりの不妊検査は済ませたつもりなのですが、今回、人工授精をするにあたって、夫の感染症検査と、私の抗精子抗体検査を受けるようにとのお話がありました。夫の感染症検査は保険不適用なので1万円近くかかります。私の抗精子抗体検査も、以前に受けた不妊検査の中に含まれていたような気がします。できればお金をかけたくないので、不必要な検査は避けたいです。はたして夫の検査、私の再検査は必要でしょうか。
- まとめ
- ●ご主人の感染症検査は不妊治療に限らず必須。体液感染する病気がないか最新データが必要。
●データが多いほど治療方針は立てやすいが、受けたくない検査は拒否することも可能。
タイミング法から人工授精へのステップアップの際、病院側からご主人の感染症検査を求められました。この検査は必須ですか。
これまでどのような検査をご夫婦でされたのか、具体的に書かれていないので憶測になりますが、以前はタイミング法とのことですので、おそらくご主人の精子は検査されていなかったことと推察します。
しかし、人工授精では精子を取り扱うことになるので、感染症の検査は必須です。精子は体液であり、不妊治療に限らず、治療前にヒトに感染するかもしれない病原体の有無を確認するのは大切なことです。たとえ、半年前、1年前に検査をされていたとしても、その間に新たに感染症に罹った可能性も否めないので、最新のデータが必要となります。
これはパートナーの健康を守ると同時に、医療従事者の身を守るためでもあります。感染症の疑いがないと確認できなければ、安心して治療を行うこと、体液を扱うことができません。不妊治療では医療控除は受けられませんが、どうかご理解ください。
質問者のさおさんには、抗精子抗体の検査が求められています。どんな検査ですか。
免疫反応の一つで、精子を“異物”と判断し、受け入れないよう体が拒絶してしまうことがあります。さおさんの体が、ご主人の精子を抵抗なく受け入れられるかどうか判断するのが、抗精子抗体の検査です。
もしかしたら、1年前に受けたという不妊検査に含まれていたかもしれませんが、体調によって変動することも多くあるので、人工授精直前のタイミングで受けてみては? という病院側の要請は納得できるものです。
万一、抗体が強くて「精子を受け入れにくい」とわかれば、人工授精でも妊娠は難しくなります。さおさんは36歳ですから、早めに体外受精や顕微授精へとステップアップしたほうがベターではないでしょうか、というご提案の判断材料にもなると思います。
しかしながら、抗精子抗体の検査は必須ではありません。なぜなら、前述したとおり変動が激しいからです。タイミング法から、人工授精を2、3度して、それでも妊娠しなければ体外受精や顕微授精へというのは自然の流れで、ステップアップすれば抗精子抗体もさほどの障害にはならないと思います。
不妊治療で、ぜひとも必要な検査は?
ヒューナーテスト、抗ミュラー管ホルモン検査など、検査データが多いほど、医師にとっては治療方針を立てるにおいて参考材料が増えることになります。
でも、もしも「この検査はしたくない」というのであれば、おっしゃってください。必要性を納得いただけないとしたら無理強いはされないと思います。しかし、感染症検査などは受けていただかないと治療をお断りせざるをえないこともあります。治療方針を理解納得し、医師と患者さんが信頼関係を築けたうえでこそ、不妊治療は成り立つものと思います。。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
≫ 掲載記事一覧はこちら