妊娠中の食事と栄養(2) ~バランスのよい食事を摂る方法は?~
妊娠中の食事は、トラブルなく出産する体をつくるために、そしておなかにいる赤ちゃんの体をつくるためにとても大切。食材や栄養、食べ方など、気をつけるポイントを日々、妊産婦さんのための食事を作っている管理栄養士・国際薬膳師の岡本正子さんにお聞きしました。
一汁三菜と五味五色でバランスのいい食事を
バランスよく栄養を摂るには、「一汁三菜」の食事を心がけましょう。ご飯が中心にあり、汁物がついて、主菜と副菜が2つ。エネルギーの50%は主食であるご飯から摂ります。肉や魚で作られた主菜からたんぱく質を摂り、野菜や海藻、芋などのおかずである副菜からはビタミン、ミネラルを摂ります。一汁三菜が揃うと、あまり栄養素のことを考えなくても、自然とバランスがとれるのです。いきなり一汁三菜を揃えるのが難しいという人は、ご飯と汁物から始めてみるのもおすすめです。
それから「五味五色」で考えるという方法もあります。「五味」とは、いろいろな味つけをすること。調理方法だったら炒め物ばかりではなく、蒸したり煮たりと変えてみます。そうすると、おのずと油ものに偏らなくなります。味つけも辛いものばかりとか、甘いものばかりにならないようにして、いろいろな味にします。
「五色」は、さまざまな色の食材を取り入れて、彩りをよくするということです。肉や魚など動物性のものに偏ると、茶色っぽくなりますが、緑、黄色、赤い野菜や豆、芋類が入っていると栄養バランスが整います。
食事を作ったり食べたりする時に、あまり難しく考えすぎるのは、体によくありません。自分の感覚を大事にしながら、「一汁三菜」「五味五色」でバランスがとれるようになると、すごく楽になると思います。
外食をする時も単品ではなく定食を
外食をする時も、栄養バランスには気をつけたいですね。女性が好きな、パスタ類にスープがついたくらいのランチ。これは脂肪と炭水化物しか摂れず、バランスにはよくありません。やはり定食ものがおすすめです。ご飯があって、おかずがあって、汁物があって、サラダか煮物がついているもの。ちょっと気をつけてメニューを選ぶだけで、すごくよくなります。
外食をするにしても、家で食べるにしても、「一汁三菜になるとバランスがいい」ということをいつも頭の中においておくといいですね。もしすぐにその通りにできなくても、あまり気にしなくて大丈夫。心がけていれば、だんだんとできるようになっていくと思います。
今お母さんが食べている食事は、子どもへと受け継がれていくのです。自分の食事のあり方が、子どもの健康、将来の健康づくりにまで関わっていくということを常に考えて、食生活を整えていけるといいですね。
妊娠 初期
この時期は栄養を摂ろうと思わないで、「乗り切る」ということを第一に。その時に食べられるものを食べるという気持ちで大丈夫。おなかがすくと気持ち悪くなることが多いので、少量ずつ分けて食べるといいですね。酸味を上手に使うと、さっぱり食べられると思います。あっさりした麺類や果物もおすすめです。
妊娠 中期
つわりが終わって、食欲が戻る中期は食べ過ぎに注意。よく咀嚼するようなものを食事に取り入れましょう。おやつも甘いものはエネルギーだけで、ほとんど栄養がない場合も。干し芋やフルーツチップスは体にいいし、噛みごたえがあるので食べ過ぎを防げます。和菓子もおすすめ。小豆はむくみの改善にも役立ちます。
妊娠 後期
後期は出産時のリスクを減らすために、貧血を改善することが大切。バランスのいい食事を摂りましょう。あとは残りのマタニティライフを楽しんで。歩くのもおすすめ。中国では「気血同行」といって、気と血の流れは一緒にあるとされています。歩いて血行がよくなると、気の巡りもよくなり気持ちがすっきりします。
妊婦におすすめの献立
岡本先生が助産院で妊産婦さんのために作る「一汁三菜」ごはんをご紹介します。彩りがきれいで、食欲をそそりますね。もちろん栄養バランスは完璧!どれも簡単にできるものばかりなので、早速作ってみては?
春のちらし寿司
● 五目ちらし寿司
● わかめスープ
● オーブン焼き大根の甘辛煮
さいころ形の大根、にんじんを高温のオーブンで焼いた献立です。煮きりみりんと減塩しょうゆのたれに焼き大根をからめるので、内部まで塩分が浸透せず、減塩できます。
● 高野豆腐の白和え
鉄分たっぷり!
● 清見オレンジ
うどんの御膳
● とろろうどん
だしにすりおろした長芋を加えて、コトコト煮こんだおつゆ。加熱することで一層、体にやさしくなります。温かくしても冷やしても。うどんの御膳
● 焼きおにぎり
おかかふりかけを混ぜ込んだおにぎりにしてフライパンで焼きます。
● 車麩の治部煮風
車麩をさっと下煮して、汁気を絞って小麦粉をつけて焼きました。
● 安納芋のサラダ
玉ねぎと小松菜入り。
● 切り干し、ひじきのごまあえ
これも鉄の豊富なメニュー。
● ぽんかん
彩りごはん
小松菜は、根も捨てずに使いました。だしに使った昆布も圧力鍋でさっとやわらかく煮ました。食べものの全部をいただく献立。
● ドライトマトにんにくご飯
塩味をつけない炊き込みご飯。ごま塩をふってメリハリをつけて減塩。
● 豆腐コーンスープ
昆布だしで和風味。脂肪や乳製品を使わない、赤ちゃんにあげられるメニューです。
● 高野豆腐の信田煮
油揚げに高野豆腐を入れて、コトコト煮ました。小松菜を添えて。
● 蒸しにんじんの生姜あえ
● 小松菜の根のきんぴら
● だし昆布の梅干し煮
● ココナッツミルク入りスイートポテト
岡本 正子先生
管理栄養士、国際薬膳師。3人の子どもを育てながら40歳で栄養士の資格を取得。矢島助産院、さかもと助産所にて講習会や食事作りの仕事に携わるかたわら、地域で母と子に向けた講演や講習会活動を行う。著書に『自然なお産献立ブック』『妊娠&授乳中のごはん150』などがある。