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排卵誘発法の選び方に「正解!!」はありますか?

コラム 不妊治療

排卵誘発法の選び方に「正解!!」はありますか?

「今回は4つしか採卵できていないのでリセットしてやり直すほうがいいのでしょうか。採卵は1回しかできないので迷っています。アドバイスをお願いします。」

2017.11.15

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排卵誘発法の選び方に「正解!!」はありますか?


田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院)







相談者:ミッフィーさん(36歳)からの投稿


「HMG注射が効きにくい」
顕微授精に向けて排卵誘発中です。今のところ私には不妊原因はありませんが、主人の精子が極度に少ないので顕微授精になりました。私は正常に排卵していますが、人工授精の時は妊娠率を上げるためにクロミッド®で誘発していました。クロミッド®で毎回3つ卵胞ができ、30㎜くらいになってお腹もパンパンだったので、自分は卵子ができやすい体質なのだと思い、HMG製剤では過剰に効きすぎてしまうのではと心配していました。しかし、連日注射してもまったくお腹が張らないし、卵胞ができている感じがまったくありませんでした。注射7日目にして初エコーがあり、左右2個ずつ、一番大きい卵胞で14㎜という結果でした。先生も「7日目で4つだとちょっと少ない」とおっしゃり、HMG150から300単位に増やしました。10カ月前にAMH値を測ったら卵巣年齢は30歳くらいだったので安心していたのですが、注射の反応が悪いということは急激に卵巣年齢が上がったのでしょうか。すごく不安です。今回は4つしか採卵できていないのでリセットしてやり直すほうがいいのでしょうか。採卵は1回しかできないので迷っています。アドバイスをお願いします。



 



女性機能はストレスが大敵。無理のない治療スケジュールを


クロミッド®で排卵誘発した際に卵胞が3個でき、お腹が張るということですが、そもそも20〜30個というレベルでなければお腹は張りません。可能性として、ミッフィーさんは便秘など別の問題があると考えられるでしょう。

卵胞ができやすい体質なら、HMGで卵胞ができないということはまずありえません。卵巣が腫れやすいことを考慮して、主治医がHMGを処方する前に何らかのホルモン剤などを処方したのかもしれませんね。月経周期が不規則な人には時折見られる症状ですが、ミッフィーさんは年齢的にもまだ36歳で月経周期が正常ということですし、基礎体温も問題なさそうなので、HMGを使えば20個以上の卵胞ができるはずです。今回の相談内容はあまり一般的な例ではなく、考えられるのは、その周期にたまたま調子が良くなかったということ。卵巣年齢に関しても、前回の検査から10カ月の間に特別なハプニングがなければ急激に変化しません。心配せず次回の周期に再チャレンジし、その際の注射の量を増やす必要もないでしょう。

女性の卵巣の機能は、周期によって状態がまったく違うことがあります。とても反応が良い周期もあれば、悪い周期もあります。ミッフィーさんもたまたま卵巣機能が低調だったと考えられ、このような時には無理をせずキャンセルして、卵巣を休ませてあげることが大切です。

補足的な事例として、全胚凍結自然周期胚移植についてお話ししましょう。顕微授精、体外受精、凍結胚移植の治療周期数は1:1:1と同レベルです。しかし、出産率は凍結胚移植が圧倒的に高い。その理由は明らかで、アンタゴニストやアゴニストなど作用の強い薬は黄体機能を障害し、着床しづらくします。良質の卵子の数を増やすために排卵誘発剤を用いますが、やはり子宮や卵巣には大きな負担がかかってしまいます。そのため、全胚凍結して薬の影響がなくなった周期に移植するのです。それだけ、女性の機能はストレスによって大きく左右されます。基本的な検査で数値が良好だと言われれば、常に状態が良いと思ってしまいがちですが、35歳を過ぎれば助成金が使える回数も限られるということを考慮し、無理をせず、状態の良い時だけチャレンジする、そのような切り替えも大切ではないでしょうか。


良質の卵子10個を目標に排卵をコントロールする


体外受精や顕微授精をする女性の年齢が35歳以上で、不妊の原因が特に見当たらない場合、クロミッド®などを用いる低刺激はお勧めしません。日本産科婦人科学会のデータでも35歳以上は低刺激の妊娠率が調節刺激の半分以下とはっきり示されているからです。ただし、卵胞の数が多くなりすぎてはいけません。理想は10個、多くても15個まで。卵子自体の質も落ち、卵巣が腫れるという副作用があります。

排卵誘発剤は大きく分けて注射と飲み薬があり、注射はHMGとFSH。FSHは自己注射ができて150単位までは保険適用となり、男性不妊にも使えることが大きなメリットです。卵胞を刺激するLHが少ないので卵巣が腫れやすいタイプの人に向いているとも考えられます。別の観点では、HMGは閉経した経産婦の尿から製造しているため不純物を含み感染症のリスクが言われています。特に欧米では敬遠され、遺伝子組み換えのFSH製剤(リコンビナントFSH製剤)が主流になっています。しかし、FSHの金額はHMGの約3倍。OHSSのリスクなど特殊なケースの場合にFSHとHMGを使い分ける意味合いはありますが、一般的な体外受精や顕微授精での臨床的な差はほとんどありません。高額なのに結果が変わらないというのは患者さんにとって大きなデメリットになるでしょうから、どちらを選ぶのかを主治医としっかりと話し合って決めましょう。

排卵誘発法の一例として挙げられるアンタゴニスト法は、FSHもしくはHMGを使い、卵胞の大きさが16〜18mmほどになったらアンタゴニスト、続いてアゴニストを投与。これで卵胞の数を増やし、10個程度は採卵できるようにします。ミッフィーさんの場合も、この排卵誘発法が合っているような印象です。


卵巣は生き物だから、排卵誘発はオーダーメイドで


排卵誘発をもう少し掘り下げてお話しすると、そのチョイスに画一的な答えはありません。ARTの成功率は卵子で決まるといっても過言ではありません。ですから、大事なのはその時々の卵巣機能に一番適した排卵誘発を見つけること。月経3日目までに左右卵巣の胞状卵胞の大きさと数を超音波で調べ、E2、LH、FSHの3つのホルモンを測定。その結果から総合判断して、もっともふさわしい排卵誘発法を選ぶことが大切であり、最初からこれと決めてはいけません。子宮や卵巣の状態も周期ごとに差があります。何回でできなければこれに変える、半年経ったから違う方法に変える、というのではなく、毎回その都度ベストな排卵誘発法を選択しなければなりません。卵巣は生き物だからこそ、排卵誘発法はオーダーメイドで。ぜひ覚えておいてください。




排卵誘発法のファーストチョイスは?!


排卵誘発は常に同じ方法で良いというものではなく、毎回、月経3日目までの胞状卵胞の大きさと数、E2、LH、FSHの値を調べ、その都度のベストを選択。数値の結果は何パターンもの組み合わせがありますが、35歳以上なら基本的にはアンタゴニスト法かロング法、ショート法の3つから選びます。大切なのは、その周期の卵巣の状態にもっとも適した方法が選べているのか。医師のスキルに大きく左右されますから、病院選びも重要です。


 


 








排卵誘発薬HMG製剤とは?!


●どの誘発方法で使われるの?
人工授精やARTの際に行う排卵誘発(アンタゴニスト法やロング法など)で使用される製剤。卵巣を直接刺激して卵胞を複数個育てる。

●副作用はあるの?
強い排卵誘発作用による多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重篤化、感染症のリスク(閉経した女性の尿成分から抽出しているため)など。


 





 





田中先生より まとめ


卵巣の状態を毎周期調べて、ベストな排卵誘発法を選びましょう



 



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お話を伺った先生のご紹介





田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院)


順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985 年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990 年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。癌治療によって子どもを諦めざるを得なかった女性を救いたいと、オンコファーティリティという分野で卵巣凍結の研究を始めた田中先生。「とても難しいが、若い女性の無限の夢のために腰を据えて取り組みたい」と語ってくださいました。

セントマザー産婦人科医院


 


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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