妊婦さんの多くが吐き気・嘔吐・頭痛や食欲不振・嗜好の変化などのつわり症状を経験しますがその原因はまだわかっていません。症状や期間などは個人差があり、症状が重くなってくると「妊娠悪阻」という病気になります。今回は「妊娠悪阻」の症状と治療法についてお話したいと思います。
「妊娠悪阻」ってどういう症状?
妊娠悪阻はつわりと違い病気と診断されます。主な症状として、水分をまったく受け付けなくなる、体重が5kg以上(体重の10%以上)減ったり、尿にケトン体が出るようになったり、1日5回以上嘔吐するなどの症状があります。また症状によって第1期から第3期に分けられます。
・第1期の症状はなんども嘔吐し、体重が減少し始めます。嘔吐がひどいため脱水症状を起こしてのどの渇きを訴え、だるさやめまい、便秘などが起こりやすくなります。また尿にたんぱく質がでることがあります。
・第2期は第1期の症状が悪化しケトン体や尿のたんぱくで陽性がでてしまいます。脈拍や血圧が下がってしまい、代謝の異常が原因で中毒症状を起こしてしまい治療のため入院が必要となることがあります。
・第3期はめまいや幻聴、幻覚など脳神経症状が現れます。妊娠状態の継続が難しくなり、お母さんの命を守るため中絶をしなければならないこともあります。
入院し治療しなければならないほど重症な状態を「重症妊娠悪阻」といい、妊婦さんの約0.1~1%の方に起こるといわれています。
妊娠悪阻の治療方法はどんなものがあるの?
妊娠悪阻と診断されても軽度のつわり程度であれば経過観察で治療というほどのものはありません。重症妊娠悪阻で入院した場合、基本的な治療は安静にします。吐き気や嘔吐がひどく水分が摂れない場合には点滴で栄養と水分を補給し脱水症状を防ぎます。様子をみながら少しずつ食事をし、身体を慣らしていきます。 つわりを治療する薬はないので、安静にして食事や点滴で症状が落ち着くのを待つしかありません。 症状や程度は個人差があるので入院期間も軽度なら数日、重症になると数カ月という場合があります。 妊娠悪阻は病気として認定されているので入院治療の場合は保険が適用されます。
赤ちゃんへ影響はある?
つわりの症状がひどくなり妊娠悪阻になってしまうと食事をとることが難しくなります。そのため赤ちゃんに栄養がいかなくなるので心配されると思いますが、お母さんの体は優先的に赤ちゃんに栄養を送るようになっているため、赤ちゃんへの影響はあまりないといわれています。体重が2~3kg減少してもその程度なら赤ちゃんのへの影響を心配することはありません。ただし、重症な場合は赤ちゃんが低体重になっていることもありますので注意する必要があります。
赤ちゃんの影響で特に気をつけなければならないのは脱水症状です。一日に何度も嘔吐するため水分もとれなかったり、トイレの回数が減る、急に体重が減ったなどの症状が出たときはすぐに病院を受診する必要があります。脱水症状を起こしている場合はお母さんと赤ちゃんそれぞれの命が危険にさらされている可能性があるためです。
つわりは多くの妊婦さんが悩む症状です。周囲の人にはつわりや妊婦さんに対して偏見を持っている人も多く、どんなにつらくても我慢してしまう人も多いようですが、症状が悪化し重症妊娠悪阻になってしまうと危険な状態になりかねない「病気」になってしまいます。
周囲の言葉に惑わされず、つわりがひどくなってきたら早めに病院で適切な治療をうけるようにしましょう。
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