漢方と生活養生で改善できる黄体機能不全
黄体機能不全の人は基礎体温が2層になっていても、高温期が10日以内と短いのが特徴です。黄体からの黄体ホルモン(プロゲステロン)分泌が不十分なため、ふかふかの子宮内膜ができにくく、受精卵が着床しにくいことが不妊の原因となっています。
生理があるといっても、生理(となる子宮内膜)の質がよくなければ不妊の可能性は高くなるのです。同時に黄体機能不全の方は「卵子の質の低下」や「卵子の成熟が悪い」可能性もあります。
黄体機能不全の原因は「加齢による卵巣機能の低下」が大きいのですが、「ストレス」や「疲労」「冷え」も黄体機能不全の原因となります。
現代の女性は男性と同じようにハードな仕事をこなし、強いストレスを抱えている人が少なくありません。ストレスや疲労からホルモンバランスを崩し黄体機能不全になるケースがあります。また、冷えによる血流の滞りから黄体機能不全になる人もいます。
このような症状を改善するには、日常の養生が要となります。
例えば、生理痛がひどいからと鎮痛剤を飲むことは痛みを取り除くだけで、根本的な治療にはなっていません。生理痛の原因を突き止めて、それを改善しなければ生理痛は消えませんから。このように、症状の緩和ではなく根本的な改善から症状をでなくするのが中医学の漢方薬や生活養生なんです。
食事は和食を心がけてください。玄米、味噌汁、煮物、魚……。和食は自然と体を温める食材、調理方法となりますが、洋食は体を冷やすものが多いです。朝食がパンの方も多いと思いますが、小麦は冷やす食材です。ごはん、とくに玄米は体を温める食材であるとともに消化に時間がかかるため腹持ちがいいのです。消化に時間がかかれば、内臓をよく動かすので腹部の冷えが解消します。
また、女性ホルモンは午後10時から午前2時の間が最も盛んに分泌されますので、遅くても12時までには寝てほしいですね。夜、早く寝るだけでホルモンバランスがよくなる女性が多いんですよ。
ウォーキングや、スクワット、背伸びをして一気に脱力するなど、下半身を動かす運動をすると、全身の血流がよくなります。また、骨盤がずれている人が多いので、腰回りを柔らかくするストレッチをして、骨盤内の血流もよくしましょう。骨盤内の血流が悪いと、子宮や卵巣の血流も悪くなるからです。
晩婚化が進む現代、不妊症は増えているのが現状です。30代後半になると中医学でいうところの生殖機能を司る「腎(じん)」が弱ってきます。そうなると卵巣の働きが弱り、卵胞の成長が悪くなり、良い黄体ができづらくなります。良い黄体ができないことには子宮内膜が薄くなってしまう。こうした流れにならないために、腎、そして卵巣を元気にする漢方の「補腎薬」があります。この補腎薬を30代後半で結婚したなら、すぐに服用して腎を強くしておくことをおすすめします。子どもがほしいと思ってからでは、手遅れではなくても、改善に時間がかるケースがほとんどだからです。
中医学の治療は1か月で効果がでるようなものではありません。3~6か月かけて、じっくり体質を作っていきます。また、病院の不妊治療をやめて漢方を服用したことで自然妊娠するケースも少なくないのです。「急がば回れ」とは漢方のことですね。
≫ 福井薬局 福井牧子さん