凍結胚盤胞移植に失敗。 原因は受精卵の問題? それともストレス?
コラム 不妊治療
凍結胚盤胞移植に失敗。 原因は受精卵の問題? それともストレス?
「私が移植前に焦っていらだったり、落ち込んだりしたからうまく着床できなかったのでしょうか。「大切な命を守れなかった」と今、とても悔やんでいます。」
凍結胚盤胞移植に失敗。 原因は受精卵の問題? それともストレス?
相談者:ねこねこさん(38歳)
着床しなかった原因を教えてください
先日、グレードが4CBの凍結胚盤胞を移植しましたが、陰性に終わりました。移植当日は仕事があったため、病院までかなり急ぎながら運転しましたが10分ほど遅刻。また、これまで移植当日に落ち込むことがあり、移植後には浮かない気持ちで過ごすこともありました。病院のデータでは4CBだと着床率は40%、出産率は20%だとか。先生からは「PGSをしていないので確定的ではないが、受精卵の問題が原因だと思う」と詳しく説明していただきました。ただ、ネットで調べると「精神的なストレスが着床に関連している」などの情報も。私が移植前に焦っていらだったり、落ち込んだりしたからうまく着床できなかったのでしょうか。「大切な命を守れなかった」と今、とても悔やんでいます。
今回陰性の結果になったことと、移植当日やその前後に受けたストレスと何か関連はあるのでしょうか。
大島先生:移植して9日目の判定でhCGの値が1・36mIU/mlあったということですから、少なくとも着床はしていたはずです。着床はしたけれど、その先に進むか進まないかは受精卵の問題だと思いますから、担当の先生が説明された通りととらえてもいいのではないでしょうか。
ストレスが着床に大きな影響があるかどうかは何ともいえません。科学的根拠のあるデータはあまり見たことがありませんね。ストレスがあると血管が縮んで血流が悪くなるといわれていますが、骨盤内はもともと血流が良くないところですから、それが移植の当日や移植前後の数日で急に悪くなるというのは考えにくいと思います。
ねこねこさんは6年前に人工授精で一人目、2年前に5CCの凍結胚盤胞で二人目のお子さんを妊娠・出産されています。今回も着床はしていますから、着床する・しないではなく、そこから先がうまくいかなくて陰性という結果になったのでは。となると、やはり受精卵自体の問題ということになってくるでしょう。
移植した胚盤胞の質があまり良くなかったということですか?
大島先生:治療を受けていらっしゃる病院のデータでは、4CBの着床率が40%、妊娠率が20%ということ。かなり高い数字なので驚きました。以前見たアメリカの統計だと、4CBの着床率や妊娠率はほぼゼロでした。CCに関しても同様です。ただし、これはあくまでも見た目の評価。BやCというのは細胞の量で判定しており、働きがいいかどうかはわかりません。当院でも、7日目の4CBの胚盤胞で妊娠・出産したケースがあったので確率はゼロとはいえませんが、低いことは間違いないでしょう。
また、38歳頃になると良好な胚盤胞でも7割程度に染色体異常がみられますから、今回のねこねこさんのように着床しても妊娠を継続できないケースはよくあることだと思います。
ただ、30代後半の方でも卵子が15個程度採れれば、出産まで至る確率は25%くらいまでいくのでは。40歳以上になるとそれが15%まで下がってしまうので、気持ちを切り替えて、早めに次の採卵にチャレンジしていただきたいですね。
ストレスが直接、妊娠に影響することはないと思いますが、うまく解消できればそれに越したことはありません。通院先の施設がカウンセリングを設けているようであれば、一度相談されてみては? つらい時は看護師さんなどにちょっと話を聞いてもらうだけでも、だいぶ楽になると思います。
また、ご主人にも治療のことを相談できるといいですね。1人で悩みを抱え込んでしまうと治療を途中で挫折してしまうケースも多いようなので、やはり不妊治療にとってストレス解消や気持ちの切り替えは大切になってくると思います。
大島クリニック 大島 隆史 先生
自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与される。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を
経て、1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。
≫ 大島クリニック
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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