心の玉手箱 Vol.30 「妻の初めての治療を前に自分に何かできることは? 夫に望むことは何??」
コラム 不妊治療
妻の初めての治療を前に自分に何かできることは?夫に望むことは何??
今回は妻の治療に寄り添う男性の立場からの質問に、秀子先生がお答えします。
相談者
こけしの夫さん(運送業•35歳)
妻が初めて体外受精を行います。自分は今まで仕事を優先してきたせいでほとんど何も協力できなかったので、恥ずかしながら何をしてあげればいいのか、まだよくわかりません。妻に聞くのが一番なのでしょうが……。妻は毎日5時過ぎに起きてお弁当を作ってくれます。ストレスはよくないと聞いたので中止したほうがよいですか? それと一番やってほしい家事は何ですか? その他、かけてほしい言葉や、逆に言ってほしくないことなど、とにかく何でもよいので、体外受精期間中、妻が夫に望むことを教えてください!
してほしいことは人それぞれまず話を聞いてみて
ご自分で「妻に聞くのが一番なのでしょうが……」と、おっしゃっていますが、はい、そうです(笑)。
初めての体外受精というのは、ものすごく不安ですから、ご主人も一緒に話を聞きに行ってあげると喜ばれると思います。ただ「別に来なくていい」と言われたら、行かなくてもいいのです。ご主人に一緒にいてほしいという方もいらっしゃれば、隣で話を聞かれるのは嫌という方もいらっしゃいますし、治療が終わったら迎えにだけ来てほしいという方もおられます。体外受精をしなければならない理由も人によってさまざまだから、まず奥様が何を望んでいるのか知ることが大切だと思います。
「主人がわざわざ休みを取って、ついてきてくれたんです」と、嬉しそうに話してくださる方は多いですよ。「ついて行こうか? いつがいい?」と細かく聞いて、したいようにやってあげるということを、態度で示してあげればいいと思います。
アドバイスは無用不安を受け止めてあげましょう
ご主人は体外受精に限らず、普段からぜひとも奥様の気分的な“波”のようなものを感じ取ってあげるようにしてください。排卵後のPMS(月経前症候群)の時期は、いわばちょっとした嵐みたいなものですから、些細なことが気に障ったりして特にイライラ、カリカリする時期です。そんな時は刺激せず、優しく話を聞いてあげながら、嵐が過ぎ去るのをひたすら待つこと。決して何か解決策を提示しようとしたり、いいアドバイスをしようなどとは考えてはいけません。何だかよくわからないなぁと思っても、「ふーん、そうなんだ」「へぇ〜、そうかぁ」と聞いてあげましょう。
初めての体外受精の場合、おそらく奥様はイライラするというよりも、最初は大きな不安から緊張されていることが多いと思います。だからいろんな場面で言いたいことや聞きたいことを我慢したりして、それがストレスになり、とんでもないところで爆発することも。そんな時、たとえ「どうしてそんなことで怒っているの?」と思っても、それをグッと飲み込んで、じっくり受け止めてあげてください。
気を使いすぎると今度はかえってプレッシャーになる
とはいえ「ずっと寝ていたらいいよ」なんて過保護はかえって逆効果。奥様はそれだけ結果を期待されているんだなと感じてプレッシャーになります。「大事な時やから」は絶対に禁句。それは妊娠してから言う言葉で、特に妊娠の可能性がある時、体外受精の胚移植の後は絶対に言ってはいけません。
夫に手伝ってほしい家事といっても、仕事や生活スタイルによってさまざまだと思います。もし奥様が洗い物を始めたら、「今日は僕がやるよ!」とニッコリ笑顔で。「いつまで続くかわからない」なんて嫌みを言われても気にしない。「今だけかもしれないけど、とりあえず今日はやってあげる」でいいんです。ご飯を作るのが大変そうなら、代わりに作ってあげられなくても、外食や店屋物にしようと提案してあげたりね。
できることってそんなにないかもしれないし、たとえ今だけだって、女性はその気持ちがありがたいわけです。だからご主人は奥様の様子をよく観察して、「今日は大変だったね」と、しんどそうなところは率先してやってあげる。それでいいんじゃないでしょうか?
<秀子の格言>
「体外受精だから……ではなく、大変だったから優しくしてあげる。そんな気持ちが大切なんです」
田村秀子婦人科医院 田村 秀子先生
京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。
≫ 田村秀子婦人科医院
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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