排卵しなくなったのは、採卵したせい?
コラム 不妊治療
排卵しなくなったのは、採卵したせい?
柏崎 祐士 先生(かしわざき産婦人科)
相談者:chocoさん(36歳)
採卵後の排卵、胚移植のホルモン補充
特に体外受精でないと妊娠できないことはないのですが、人工授精を5回程度しても妊娠せず、体外受精にステップアップしました。アンタゴニスト法で16個採卵、10個受精、9個凍結しています。採卵前までは生理も30日周期でほとんどズレもなく排卵していましたが、採卵後1、2周期は排卵していないようです。採卵すると、排卵しづらくなったりするのでしょうか。また、胚移植を自然周期で戻すつもりでしたが、排卵しないのでホルモン補充も考えています。胚を戻す際、自然周期とホルモン補充周期では、何か違いはありますか。また、ホルモン補充した場合の副作用についても教えてください。
採卵前までは生理も順調で排卵もしていたそうですが、採卵後は排卵しなくなったとのこと。採卵が原因で排卵しづらくなるというケースはあり得るのでしょうか。
「針を刺す」といった採卵行為そのもので生理周期が乱れることや、排卵しなくなるということは理論上はあり得ません。ただ、アンタゴニスト法で16個も採卵できたとのことですから、排卵誘発剤が強すぎたのかもしれませんね。刺激が強すぎると、残存卵胞というものが次の排卵の邪魔をしてしまうことがあり、1、2周期は採卵しにくくなることは大いに考えられます。それでも、一時的にホルモンバランスを崩しているだけのことで、しばらくすれば元に戻りますから、心配には及びません。16個も採卵できて、10個受精、9個凍結しているとのこと、次の採卵を焦る必要もないでしょうから、安心してホルモンバランスの回復を待ちましょう。
自然周期で戻すか、ホルモン補充周期で戻すかでも迷われています。また、ホルモン補充した場合の副作用も気にされています。
排卵していても、自然周期ではなくホルモン補充で戻すケースは多いですよ。メリットとしては日程が組みやすいことと、ホルモンの状態がコントロールしやすいことにあります。自然周期だと排卵時期をエコーや採血できちんと確認する必要があるので、どうしても通院回数が増えますし、その分患者さんのご負担も大きくなります。極端な場合は、数日間毎日通院し、採血しなければなりません。自然周期も、ホルモン補充も、妊娠率は変わらないので、どちらが良いかともいえません。どちらを選ぶかは患者さんのご要望次第ですので、担当医とよく話し合って決めましょう。ホルモン補充の副作用についても、使用期間が短いので、心配はまずないといっていいでしょう。低用量ピルを使用するよりも安全性は高いと思います。
「特に体外受精でないと妊娠できないことはない」という一文に、体外受精への戸惑いも垣間見られます。
人工授精での妊娠率は全体の1割前後といわれていますし、その場合もほとんどが5回以内には妊娠しています。ですから、chocoさんが体外受精にステップアップされるのは、治療としてはスタンダードです。経済的な理由などで体外受精に進めない場合以外は、これ以上人工授精を続けても難しいと、担当医が判断したのでしょう。
総合的には、質問者さんの体にも治療法にも、何ら問題点はありません。不妊治療中は思い悩むことも多いでしょうけれど、ストレスは不妊の大敵。上手に発散してください。
また、不妊治療中であっても夫婦仲良くあってほしいですね。日頃のコミュニケーションも大切にしてください。不妊治療そのものがストレスになっているなら、お休みすることも考えてみては? お休み中に自然妊娠した、というケースもまれにあります。
柏崎先生より まとめ
●誘発剤の刺激の強さによっては次周期に排卵しづらくなることも
●ホルモン補充法は副作用もなく、スケジュール管理もしやすい
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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