卵胞があまり育ちません。どんな刺激法がいいの?
コラム 不妊治療
卵胞があまり育ちません。どんな刺激法がいいの?
「初の体外受精で卵胞があまり育ちませんでした。気になったのがD3のホルモン検査でFSHが17.7mlU/mlだったこと。」
卵胞があまり育ちません。どんな刺激法がいいの?
石原 尚徳 先生(久保みずきレディースクリニック)
相談者:ソラマメさん(38歳)
刺激周期の採卵数について
初の体外受精で卵胞があまり育ちませんでした。気になったのがD3のホルモン検査でFSHが17.7mlU/mlだったこと。先生から「少し数値が高いから注射を強めにしておくね」と言われました。4カ月前の検査では10を切っていました。ピルは3カ月前から高温期に服用しています。今回はアンタゴニスト法で、HMGフェリング®150単位とゴナールエフ®150単位を3日目から自己注射。結果、卵胞4個で採れた卵子は1個。その1個は受精せず移植キャンセル。次はロング法でと言われています。また卵子が採れないのではないかと不安です。①ピルの副作用で卵胞の成長に影響はありますか? ②次はロング法ですが、高齢かつ前回の卵胞が4個の私に合うのでしょうか? ③D7の検査でも卵胞は3個しか確認できませんでした。この時点で刺激法を変更することはできなかったのでしょうか?
ソラマメさんはピルの副作用を気にされています。ピルについて教えてください。
ピルにはエストロゲンとプロゲステロンが含まれています。2つの女性ホルモンにはそれぞれ役割があり、たとえば、エストロゲンは視床下部に卵胞が発育していることを伝え、プロゲステロンは子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすくなるように作用します。当院では人工授精の場合、黄体ホルモンが少ない方や内膜が薄い方には、排卵期以降にピルを使用することがあります。
また、ピルには排卵を抑える働きがあり、体外受精では一時的に排卵を抑え、卵巣の状態を安定させるために使用することがあります。こうすることで排卵誘発剤を使用する周期に卵胞が育ちやすくなります。ピルが卵胞の発育に影響することは基本的にないと思います。
このような方にはどのような刺激周期法がよいのでしょうか。
刺激周期法には代表的な方法が3つあり、月経3日目から排卵誘発注射剤+アンタゴニスト製剤を使用する「アンタゴニスト法」、月経の約1週間前から点鼻薬+注射剤を使用する「ロング法」、月経開始1日目から点鼻薬+注射剤を使用する「ショート法」があります。どの方法を選択するかは年齢とAMHの値によって判断します。この方の場合はAMHが2.5 ng/mlとそこそこにありますから、ロング法で卵胞が育つ可能性があると判断されたのでしょう。この選択も決して悪くはありません。
当院であれば、ショート法もしくは、再度アンタゴニスト法をおすすめします。ショート法はロング法にくらべて卵胞を発育させる力が強いことから、卵巣の予備機能が低く、強い卵巣刺激が必要な方に適しています。一方、アンタゴニスト法はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)やOHSS(卵巣過剰刺激症候群)など、いわゆる卵巣が過剰に反応し、卵胞が育ちすぎる方に適しています。AMHの値にかかわらず、どのタイプの方にも使いやすいというメリットがあります。
検査時点で刺激周期法を変更することはできますか?
この方はHMG製剤のフェリング®とFSH製剤のゴナールエフ®を使用されています。刺激周期法を変えるという意味で、当院ではこのHMGやFSHの投与量を増やすことはよくあります。ソラマメさんの場合も投与量を増やしてもよかったのかもしれません。粘り強く増やしていくと「今回は採卵をキャンセルするかもしれません」と言っていた方でも、しっかり採卵できることがあります。ただし、もともと卵巣の予備機能が低い方には効果が現れにくく、時間と費用だけかかってしまうこともあります。初めての体外受精でたまたま卵胞が4つだったのでがっかりされているのかもしれませんが、周期によって発育卵胞数は変わりますから、次回はたくさん採れる可能性もあります。
石原先生より まとめ
●年齢やAMHの値を考慮するとショート法や再度アンタゴニスト法もおすすめです。
●卵胞チェックの時点で自己注射の増量が可能。採卵数が増えるケースもあります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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