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妊活と運動で体と心が前を向く 注目の統合医療、最前線の現場から

コラム 不妊治療

妊活と運動で体と心が前を向く 注目の統合医療、最前線の現場から

「不妊治療というのは、どうしてもストレスを避けられない面があります。そのストレスを緩和することで、患者さん自身の妊活力をもっと高めることができると考えています。」

2018.2.20

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不妊治療に取り組む患者さんにとって最も大切なのは、心と体のバランス。


ヨガやエクササイズなどを導入した「統合医療」も、その考えによるものです。


運動と妊活との関係性について、「統合医療」の最前線で日々患者さんたちと向き合っている、


仙台ARTクリニックの先生方にお話を伺いました。


ヨガやエクササイズなどの運動を、統合医療の一環として導入した理由は?


不妊治療というのは、どうしてもストレスを避けられない面があります。そのストレスを緩和することで、患者さん自身の妊活力をもっと高めることができると考えています。健康や体のためにも良く、ストレスを解放できる一石二鳥の最たるもの=運動として、最初に妊活ヨガを取り入れたのは8年ほど前です。もちろん患者さんの選択肢はいろいろあったほうがいい。運動が苦手という方には鍼灸やアロマ、レーザー治療といった療法も提供しています。そのように、西洋医学では及ばない分野のさまざまな療法を、最先端の専門医療と組み合わせたのが「統合医療」という新しい試みです。毎年、患者の皆さんを対象に、クリニックに関する、医師・スタッフ・設備・治療法などすべての項目について、細かいアンケートを実施しているのですが、そのなかでものすごく好評なのが、ヨガ、エクササイズといった、運動療法なのです。当院でのエクササイズは「リラティス」と名付け、「リラックス」と「ピラティス」の要素を取り入れたオリジナルのクラスになっています。皆さんにとても喜んでいただいているのを実感しています。


ヨガやリラティスでは実際どんなことをするのでしょうか?


ヨガのクラスでは、一般的なヨガも同じですが、とにかく全身の血流を良くすることが一番の目的です。当院のヨガでは、特に骨盤まわりを丁寧に動かすことを意識していただき、骨盤まわりを整えることに注力しています。ヨガを通じて自分の体の状態に気づいていただき、ご自宅でも骨盤の調整や体のケアを自分で行えるようにと、宿題のようなものを出して、レッスンに来た時だけでなく、日常的に継続していただけるようにしています。


 


リラティスでは、特に体のコアの部分、体幹を意識したプログラムを行っています。レッスンを受けに来てくださる方は、妊娠されることが目的ですが、その後の妊娠中や出産、産後の育児の際にも重要とされる、自分の体を支える筋肉(表側の筋肉ではなく、背骨や骨盤を支えるインナーマッスル)を整えていこうという内容です。といっても激しい運動ではなく、からだスキャンセルフマッサージ(ポールの上に体を乗せて全身をほぐす内容)、ピラティスやバレトン(バレエの要素を取り入れ体の筋肉を整えるエクササイズ)を応用した簡単な動きがメインです。行ったエクササイズを自宅でも気軽に再現できるような内容にしています。


運動をすることにより、妊活にどのような効果があるのでしょうか?


その話で言うと、この運動をやったから妊娠しやすくなるとか、このヨガのポーズが効く、というようなことはありません。ただ、とにかく言えるのは、頭の先から足の先まで全身の血の流れを良くすることが、不妊治療を進めるうえで、とても大切なことなのです。そういった意味では、治療に臨む体を準備するという点で、適度な運動はとても大事です。それと肥満予防という面もあります。肥満は全身の血流を悪くしてしまうので、妊娠しにくくなる要因の一つとされています。
あとは冒頭にもお話しした、ストレス解消という点でも、運動の効果はたいへん大きいと思います。そして、クリニックでクラスを始めたことで、さらに良いことがありました。レッスンを通じて妊活仲間の友人ができ、情報交換できたり、気持ちを共有したり励まし合ったりできるようになったこと。同じ目的をもった患者さん同士の結びつきというのは、不妊治療に取り組んでいくにあたって、大きな心の支えになりますし、とても大切です。


 


共に体を動かしているうちに、自然とコミュニティができ、終わってから一緒にご飯を食べに行ったり、交流を楽しんでいるようです。実は私は別のところでマタニティヨガのクラスも受け持っているのですが、妊活ヨガに来てくださっていた方々が卒業して、同じくらいの時期に妊娠されてまた一緒にレッスンを受けていただいている方もいらっしゃいます。赤ちゃんが生まれた後もお付き合いがあるようで。やっぱり不妊治療の過程で、誰にも言えないことをパッと言える場、友達がいるっていうのは一番大きい、と皆さんおっしゃっています。多分運動すると、自然と心が開いて、いろいろと話しやすくなるのでしょうね。


 


私はレッスンを受けに来てくださる方御自身に、レッスン前後のモニタリングをして体の変化を見ていただいています。レッスン前は体も縮こまり、呼吸も浅く、表情も固く感じられた方も、レッスン後には心も体もスッキリし、表情も柔らかくなって帰られる姿が素敵だなと感じます。


 


不妊治療には、気持ちの浮き沈みがどうしてもあると思うのですが、運動することでメンタル的にもストレスを発散して、癒しにもなりますし、心が柔らかくなるんですね。そうすると気分も変わって、気持ちも前向きになっていきますしね。ぜひ、明るく楽しんで妊活に取り組んでいただくためにも、日常的に運動を取り入れていただきたいと思っています。


 


不妊治療は自分の体とじっくり向き合うチャンスです。自分の体を大事にするためにも、なんでもいいので、ちょっと体を動かしてみてください。


 


運動経験がない方ほどおすすめしたいです。少し歩いてみるとか、体を動かしてみて、自分が気持ちいいなぁと思うことを探していただきたいです。





先生から


運動することで、体だけでなく
「こころ」が柔らかくなるのです



 


 


 


お話を伺った先生のご紹介

吉田 仁秋 先生(仙台ARTクリニック理事長)


獨協医科大学を1980年に卒業後、東北大学医学部産婦人科教室の不妊・体外受精チーム研究室へ。1983年、同チームが日本初の体外受精児の誕生を成功させる。1998年、吉田レディースクリニック開設。東北大学医学部産婦人科臨床教授を兼ねつつ、2016年、「統合医療」実現のための最先端技術と設備を備えた、仙台ARTクリニックを開設。ARTの聖地で、統合医療という新しい不妊治療を提供し、その試みは国内外からたいへん注目されている。

≫仙台ARTクリニック

お話を伺った方のご紹介

木村 絵美子 先生(フィットネスインストラクター)


フィールドホッケー女子元日本代表の経歴をもつアスリート。幼少の頃からスポーツに携わってきたため、体幹理論や筋肉に関しての造詣も深く、参加者からの信頼も厚い。ピラティスやバレトンを応用し、それを生かした妊活向けのオリジナルプログラムが好評。

お話を伺った方のご紹介

二木 ひろえ 先生(ヨガセラピスト)


OL時代、自身の体調不良を改善するためヨガのレッスンに通う。その効果とヨガの奥深さに感銘し、自分で知識や技術をもっと習得したいとインストラクターの道へ。自身も3人のお子さんのママで、その経験も生かし、妊活ヨガやマタニティヨガなど、女性のライフステージに合わせたヨガのクラスを多く担当している。

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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