生理不順で、LHが20超え。 クロミッドⓇの処方はいつに?
コラム 不妊治療
生理不順で、LHが20超え。 クロミッドⓇの処方はいつに?
「排卵前の正常数値は? 2~3カ月生理がないことがよくある生理不順の不妊治療では、プラノバール®でLHを下げてからが最善ですか?」
相談者:ayaさん(26歳)からの相談
▶クロミッド®は、高いLHを下げてから?
3カ月ほど生理がなかったため、クロミッド®での治療を希望して先日産婦人科に行きました。生理不順は初潮からです。今回エコー検査の結果、卵胞は20㎜以上ありましたが、血液検査の結果LHが20mIU/mlを超えていました。医師からは、とりあえずプラノバール®を服用してLHを下げた後、クロミッド®を考えましょうと言われました。そこで質問ですが、低温期が3カ月以上続いている状態だとプラノバール®を服用しないと今ある卵胞は排卵しませんか? LHが20mIU/ml(エストロゲンは50pg/ml)以上ですが、排卵前の正常数値は? 2~3カ月生理がないことがよくある生理不順の不妊治療では、プラノバール®でLHを下げてからが最善ですか?
2、3カ月生理がないことがよくあるような生理不順の場合、クロミッドⓇを投与する前に、プラノバールⓇで治療してから、というのはスタンダードですか。
プラノバール®はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が配合された中用量ピルで、一時的に生理を起こさせる働きがあります。質問者のayaさんの現在は、卵胞径が20㎜ということですから発育はしているのですが、低体温とのことで排卵はしておらず、無排卵の状態です。卵胞発育が正常なら、エストロゲン値が200pg/ml以上となって排卵するのですが、ayaさんは50 pg/mlと値が低いので、卵胞の発育がうまくいっていないと考えられます。排卵させる働きのあるLHが20 mIU/mlと高めになっているのも、ちゃんとした卵胞発育であれば排卵しているはずの数値。十分に発育できなかった卵子を一度外に出して、リセットするという意味でも、プラノバール®で生理を起こさせるという治療法はファーストチョイスとして適切だと思います。
プラノバールⓇを服用しなかった場合、今ある卵胞は排卵しませんか。
エストロゲンの数値が上がるのを待てば、もしかしたら排卵することもあるかもしれません。しかし、その卵子はすでに古くなっているので、残念ですが妊娠には向かないということです。卵子は母体の加齢だけでなく、排卵までに時間がかかって停滞することでも質が低下します。プラノバール®の投与は、LH値を下げるのが目的ではなく、排卵周期をいったん正常に戻すことにあります。生理不順を改善したいのではなく、妊娠が目的なのであれば、できるだけ発育の期待できる新しい卵子にリセットして排卵を促すのがベターです。
LHを下げる治療法は、ほかにも選択肢がありますか。
年齢が高かったり、卵巣機能が落ちていたりと、慢性的にLHが高い場合は、定期的に女性ホルモンを補うカウフマン療法などが施されることもありますが、ayaさんはまだ26歳と若く、不妊治療も始めたばかりですから、「少し様子を見よう」という状況なのではないでしょうか。ayaさんのケースであれば、とりあえずプラノバール®で一度生理を起こして、リセットしたほうがいいと考えます。
「最善か」のご質問は、不妊治療はお一人おひとり状況が違うので、正解がないのが現状です。でも医師は、できるだけ患者さんのお体に負担がないようにと考えて治療に当たっています。年齢も考慮し、「この方なら、まずはここから始めてみよう」と段階を踏むのはよくあることで、いきなり「クロミッド®を処方して!」と言われても、ご要望に応じられないこともあると、どうかご理解ください。
Doctor’s advice
●古い卵子との入れ替えを促すためにも、プラノバール®を服用して生理をリセット。
●一人ひとりの状況を考慮するため、「最善の治療」はそれぞれ異なります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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